三流

風馬

第1話

「俺の人生、三流だったよなぁ。」


そう、思った瞬間私は人生を走馬燈の様に振り返ってみた。


 


私は中学校を平均的な成績で卒業をして、伝統のある高校へ入学した。


我ながら思うが、強運だったのだろう。よくあの高校へ入学できたものだ。


努力などと言う言葉を知らない私は、当然ビリで学校を卒業し三流電気メーカーへ就職した。


ここで、何も無ければ普通の人生なのだが、私は転職をしてプログラマーになった。


転職先の会社は当時の三流ソフト会社。そこを辞めなければ良いのだが、どこをどう間違ったか自分から一流への道を閉ざしてしまう。


そう、そのソフト会社を辞めたのだ。その後そのソフト会社は一流のソフト会社になってしまった。


いつの間にか、転職癖でもついてしまったのだろうか。私は会社を転々として最後の会社に落ち着いた。


数えて5社目の会社だった。


 


その会社は普通のソフト会社。しかし、三流であることが一つ。


何が三流か。察しの通り私の腕が三流だ。当然作り出されるソフトは三流品ばかり。


しょうがないでしょう。そこが三流プログラマーの泣き所なのですから。


 


私はどうにか定年までその会社を勤めて、普通の老後の生活を送った。


そしてついこの間、こちらの世界へ呼び出され、神様から天使になるように言われたのだ。


天使の役目は、まだ生まれていない子供へ乗り移ること。


天使の間は、前の人生の記憶は残ったまま。早く乗り移ってもよし、ゆっくり考えてから乗り移るもよし。


私は、少し考えてから乗り移ることにした。


天使には、不思議な能力がある。他の天使が既に乗り移っているかどうかを見分けることができる。


だから、一人の子供に複数の天使が宿ることはあまりない。早いもの勝ちなのだ。


ただ、極まれに同時に乗り移ってしまうことがある。


でも、乗り移ってしまうと2度と出ることが出来ない。


そのときは、双子が生まれる。


 


私はふらふらとさまよい、とある病院で落ち着いた。


中をみてみると、誰も乗り移っていない子供ばかりだ。


そういえば、私はふらふらして良いことがなかったことを思いだした。


あまり選り好みするのもよくないだろう。


意を決して、近くにいる子供に乗り移った。


 


私の記憶も大分薄れてきた。記憶が無くなるのも時間の問題だな。


しかし、なぜここには天使がいなかったのだろう。


さてはここの病院は、三流病院か。

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三流 風馬 @pervect0731

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