異世界婚約破棄RTA!〜別れて世界を救うはずが、巻き込まれすぎて何故か聖女と呼ばれています〜

みすてりぃ(さみぃ)

1章 悲恋の少女は異世界へ

転生しても、あたしでした。

2024年 12月24日。


恋人たちのクリスマスとはよく言ったもので、恋人のいないあたしは全力でバイトに勤しんでいた。


ホットスナックの売上が普段の倍近くある。


あー、めちゃくちゃ忙しい。


本来、今日は休みの予定だったのに.....。


別に予定があった訳じゃなかったから、彼から予定を聞かれた時に食い気味に暇です!なんて言っちゃったのが運の尽き。


みんな、予想が着いたよね。

そう、シフトを変わったってわけですよ。


それも、片思いの相手が他の誰かとデートするために。


惨めすぎるあたしに誰かプレゼントくらいちょうだいよ。


なんて思いながらバイトを終えたあたしの腕の中には売れ残ったチキンレッグが握られていた。


いや、好きだけど.....チキンレッグ。


昔からあたしの恋愛ってこんな感じ。


好きになった人に、即座に別の好きな人が出来ちゃうの。


あんまりにもそれが続くものだから、今やあたしのあだ名は「振られ屋」。


不名誉極まりないけれど、事実だから仕方がない。


まぁ、好きな人が出来て即座にだから毎度傷は浅くてすんでいる。


何だか視界が揺れてる気はするけど、きっと気のせいね。


あーあ、運命の出会いが転がってこないかな。


例えばそこの曲がり角とかからー


そう思った刹那、エンジン音が響く。


眩し.....


眼前に、軽トラックが見えた。


えぇ...嘘でしょ。


あたしまだやりたいこといっぱい.....!!


凄まじい轟音とともに、あたしの意識はここでぷっつりと途切れた。


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ん、あれ。


目が覚めると、あたしは真っ白な部屋の真ん中に横たわっていた。


本当に真っ白で何も無い。


どこまで続いてるのかも、分からない。


あたし、バイト帰りにトラックに...


意識がはっきりとしていくにつれて、身体が冷えていく。


頬をつたう雫が止まらない。



その文字が、頭をぐるぐると回って冷静に考えることが出来ない。


ただひたすらに垂れる雫を拭いながら、その場に座り込んだ。


どのくらい時間が経ったのか。


そういえば、この真っ白な部屋はどこなんだろう。


そう考えるくらいに若干落ち着きを取り戻し始めた頃。


「めぐみ...聞こえますか...めぐみ。」


誰かが呼んでいる。


当たりを見回してみるが、特に何もないし、人影などは見つからない。


誰ですか?


そう呟くと、目の前に光が集まり、その中から女性が現れた。


薄い羽衣、色素の薄い髪と大きな瞳。

背中には純白の羽根を携えている。


あまりに浮世離れした姿は、つい昨日スマートフォンの広告で見たような.....。


女神.....さん.....?


「めぐみよ。落ち着いて聞くのです。あなたはまだ、厳密には死んだ訳ではありません。ですが、このままでは確実に死が訪れます。」


突然現れて死の宣告。

もしかして女神じゃなくて死神か?


「いいえ、女神であっていますよ、めぐみ。そういえば女神とめぐみってちょっと似てますよね。」


うわぁ.....こんなに神々しいのに威厳ねぇー。

っていうかあたしの考えってもしかして筒抜け?


「威厳がなくて申し訳ありませんね。

ですが、少しは落ち着いたようですね。」


あ、筒抜けだわこれ。


「落ち着いたなら聞きなさい、めぐみ。

貴女に、ある使命を持って転生して欲しいのです。」


転生.....?って最近よく聞く異世界に生まれ変わる、みたいな?


「はい、そのようなものです。貴女には地球とは違う、ある世界に転生してもらい、その世界を救って欲しいのです。それが貴女の使命です。」


一応聞くけど、もし嫌って言ったら.....?


「はい、今めぐみの時間は止まっている状態です。貴女の記憶に残っているその場所で。その時が、自然に動き出すでしょう。」


なるほどね。

選択肢はないってわけだ。


よし、切り替えていこう!


「ありがとうございます、めぐみ。

では、早速転生の準備に取り掛かります。」


そう言うと、女神様はあたしには分からない言葉でなにかをつぶやいた。


すると、地面に魔法陣が浮かび上がった。


「ここに入ると、めぐみは転生します。

心の準備が整ったら、こちらへ。」


なんだか現実感ないなぁ...。


そういえば。


ねぇ、女神様。


あたしは転生するけどさ、そうして何をすればいいの?世界を救うって言ったって、私は単なる大学生だよ。


「いいえ、めぐみ。あなたは唯一無二です。

貴女以外には、世界は救えません。その、原初オリジンスキルでしか。」


原初オリジンスキル


「そうです。めぐみ、貴女の原初オリジンスキルビターわぬ純愛スウィートでしか、世界は救えないのです。」


ビターわぬ純愛スウィート

いやちょっと待ってなに、それ。


思わず一歩、踏み出したその足は魔法陣の縁を踏んでいた。


強い光に体が包まれていく。


「頼みましたよ、めぐみ。絶対に恋愛が叶わない、という強大な原初オリジンスキルを持つものよ。」


「その力で、必ず破局するのです。

確実に婚約破棄されるのですよ!!」


いや、なんじゃそれー!!!


と叫ぶが、声は届いていなかったようだ。


暖かい光に包まれて、あたしの身体は白い部屋から飛び出した。


っていうか、あたしがモテなかったのってさっき言ってた原初オリジンスキルとやらのせいなの?


しかも、せっかく転生するのにこれからもモテないわけ!?


ちくしょー!グレてやるー!


こうなったら、めちゃくちゃ早くフラれてやるかんな!


婚約破棄RTAやってやるかんな!


次第に薄れていく意識の中、あたしは強く心に誓った。

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