見た目が不良である俺にクラスの美少女が付き纏うようになった。

独楽晴

第1話 榊葉誠司

 快晴、あたりを見渡す限り雲ひとつ見当たらないほどに空は見事な快晴である。

 そして俺、榊葉誠司さかきばせいじは現在、その見事な快晴から放たれる日差しを受けて、まだ学校に着いたばかりだというのに机に突っ伏して今にも寝てしまいそうであった。


 時期は5月と春ももう終わる時期になったのだがそれでもまだ健全である春の陽光はやはり他の季節の陽光とはレベルが3段階ぐらい異なり、より強烈な眠気を誘ってくる。

 加えて俺の席は窓側の前から2番目、こんなんもう神が寝ろと告げてるようなものだろう。

 仕方ない、そういうことなら少し寝させていただこうかな…。

 

「あ、あの榊葉、くん…」

「ん?」


 俺は身体を丸めて本格的に寝る準備に入ると横のほうから俺を呼びかける女子の声が聞こえた。

 俺はその状態のまま顔を声が聞こえた方向へと向けると、そこには黒髪ショートの女子が1人立っており、そのバックには付き添いかと思われる女子2人が見守っていた。

 その3人のことは一応クラスメイトのため認識はしている、まぁ名前までは覚えてないがな。


「そ、その、伊勢先生が委員会の用で手伝ってほしい、と…」

「伊勢先生?」


 すると、目の前のショート女子はどことなくビクビクした様子で俺を呼びかけた要件を口にした。

 伊勢先生かぁ……あの人の頼み事って基本的にめんどくさいんだよなぁ…。


 伊勢先生とは体育科目担当の先生でありながら、何故か俺が所属する環境委員会に配属されている運動大好きマッチョで、生徒から結構な人気を得ている。

 だがそんな伊勢先生は脳筋バカなのかあろうことか環境委員会の仕事のみならず他方の委員会の仕事の一部まで受け持ち、目をつけた生徒、つまり俺にも手伝わせるというなんとも意味不明すぎる行動をしている。

 容疑者は「環境委員会の仕事は力仕事が少なすぎる」などと供述しており、はよ体育委員会に行けと言う生徒は俺だけではないだろう。


 なので正直なところ断るか無視するかの2択で迷っているのだがそうするとめんどくさい事にあの人ショートホームルームが終わり次第俺のとこに来て引きずってでも俺を連れていくからな…。

 ちなみに俺はそれを先々週あたりにされた、まじでこの上ない羞恥を感じた…あのクソマッチョ絶対に許さねえ。

 

 まあそれはそうとあんな羞恥、2度と感じたくないしな…仕方ない行くしかないか。


「分かった、あり…」

「じゃあ、私はこれで……!」


 俺は結局渋々伊勢先生のとこに行くことにし、伝えてくれた女子に言葉を返す。

 しかし、感謝の言葉を言い切る前にショート女子はビュンっと効果音が出そうな感じの速さでバックの女子たちを連れて俺の目の前から去って行った。

 それを見た俺は彼女らが見えなくなったところでひとつ「はぁ…」とため息をこぼした。

 というのも彼女らが何故あのように終始落ち着きがない様子だったのか、俺はその理由を分かっていた。


 彼女らがあんな様子だった理由、それは俺の見た目が原因であった。

 身長190センチ前後、体格は自分で言うのもあれだが意外と筋肉質であり、加えて生まれつき目つきが結構悪い、といった具合になんとも不良やらヤンキーやらと言われるような見た目である。

 そんなこともあって俺は小学校の頃から今に近いような接し方をされてきた。

 当時の同級生の話によると「同級生とは思えない…」とか「なんか雰囲気が怖い」などなど別に今と変わらずといった答えであった。


 そしてそんな評価を受けている当事者の俺、その心境はと言うと……今となっては対して何も感じてはいなかった。

 別に俺の人心が消え去ったってことではないぞ?、確かに小学校の頃は友達が1人も出来ないものだから寂しく1人もしくは家族で遊んでたよ。

 でもそんなことが10年近く続くとなると話が変わってくるじゃないか、流石の俺でも痺れを切らして諦めモードに突入する。

 

 そういうことで現在の俺は別に周囲がそんな感じでも気にしないようにしてるし、俺自身も怖がられることは理解してるので関わらないようにしている。

 伝言を伝えたりする時は不便で仕方ないがな。


 さて、もうマッチョのとこに行くことは決まったのだ、もう何の気兼ねもなく寝させてもらおう。

 俺は再び顔を伏せて、さっきと同じようにあとは寝るのみの準備段階に入った俺はそのまま夢の中へと…。


キーンコーンカーンコーン

「お前ら席に座れー、朝のショートホームルーム始めんぞぉ」


 行くことはなく、スピーカーからチャイムが鳴ると同時にうちの担任の松谷まつたに先生が入室してきた。

 あの松谷先生とかいうやつは基本的に生徒に優しいのだが、何故か授業中に寝るとかに関しては絶対許さない、今の俺にとってはこの上ない天敵なのである。


 嘘だ…、やだ、今寝ないと授業中に寝てまう!頼む寝させてくれー!

 俺は心の中で必死に松谷先生に抗議するがそんな口にすら出してない願いなど届くわけもなくそのままショートホームルームが始まってしまったのであった。

 いやだーーーー!!

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見た目が不良である俺にクラスの美少女が付き纏うようになった。 独楽晴 @komaharu737

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