2,序章3

 リビングに入った僕は、まるいテーブルのそばにある空いた席にすわった。丸いテーブルをかこむように、僕と舞、そして昴さんの3人が座っている感じだ。テーブルの上には3人分の朝食がならんでいる。今日の朝食はベーコンエッグトーストにサラダ、コーヒーの3種類セットだった。

 この家は当番制とうばんせいだ。今日の当番は昴さんだったはず、昴さんは趣味で料理をしているため、料理のうではかなり良い。それは、今並んでいる朝食にも表れている。

 カリカリにけたベーコンエッグトーストにちょこんとったバターがとろりと溶けてなかなかに食欲をそそる。新鮮しんせんなサラダにはゴマドレッシングがかかっていて、コーヒーからはとても良いにおいと、そしてわずかな湯気が立っている。

 うん、思わず僕と舞の口元からわずかなよだれが。

 そんな僕たちを見て、昴さんは苦笑を浮かべた。

「あはは、ではみんなそろったところでそろそろ朝食をはじめましょうか。いただきます」

「「いただきます!」」

 そうして、僕たちは3人揃ってベーコンエッグトーストにかじりついた。うん、かなり美味おいしい。カリッと焼けたベーコンエッグトーストに溶けたバターが良い味を出している。

 それは舞も同様なのか、とてもしあわせそうな笑顔で黙々もくもくと食事をしていた。かなり食事のペースがはやい。

「あはは、どうですか?美味おいしいですか?」

「はい、とても」

「おいひー‼」

 そんな僕たちの賛辞さんじに、満足そうにうなずいた昴さん。しかし、次の瞬間表情を変えて話題わだいを変えてきた。

 かなり真面目まじめそうな表情だ。自然、僕と舞も真面目な表情になる。

「そうですか、ところで二人とも。最近この近所きんじょの空き家に引っ越してきた人がいるのを知っていますか?」

「?いえ、りませんね」

「私も知らないよ?」

 僕たちは2人揃って首をかしげる。なかなかのシンクロっぷりに、はたから見たら実の兄妹に見えなくもないだろう。そう、こっそりと思った。

 そんな僕たちを見て、昴さんは苦笑気味に笑う。

「はは、いえまあ、最近この近所に女の子が一人ひとりで引っ越してきたそうです」

「女の子が?一人で?それは、少しばかりみょうですね」

「…………」

 なぜだろう?すこしだけ、舞が怪訝けげんな表情をしている気がする。いや、怪訝な表情をしているだけならいいんだけど、なぜか妙な引っ掛かりを舞の表情に感じるような気がする。

 そんな舞をよそに、昴さんが頷いて話をつづける。

「ええ、たしかに。ですが、その女の子にもいろいろと深い事情じじょうがあるようでしてね。晴斗くんも舞も、その女の子がなにかこまるようなことがあれば手助けくらいはしてあげてくださいね?」

 そう言って、話をめくくった昴さん。僕と舞の返事へんじは、当然決まっていた。

「「もちろん!」」

 僕たちの返事に、昴さんは非常に満足そうにうなずいた。

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