第2話
暗い部屋
一人の女性が端末にむかっていた。
端末に映るのは一人の中年男性。
その男性はかなり狼狽えてる様に見える。
「失敗した様ね。この損失どうするのかしら?」
『も、申し訳ありません。まさか奴らがこんなに早く嗅ぎつけて来るとは、・・・想定外でした。』
「あの男に渡した装置、ハートホルダーにステルススーツ、アイソレーター、シグナルアジェスター、ブレインライティングもバカにならないのよ・・・。あの娘が後に引き起こす事故で幼児の魂の根源が百体以上も手に入ったのに。」
『申し訳ありません。次こそは・・・・』
「次はあるのかしらね・・・。」
『次こそはッ!』
「あら、時間切れみたいね。もう行かないと」
『な、何を、』
画面に映っていた男が何の脈絡もなく突然姿を消した。
女はそれを見てある装置を起動する。女もその部屋から消えてしまった。
空間がゆがむ。
消えた女の部屋に一人の男と人形の様な少女が姿を現す。
「逃げられたか・・・。追跡できるか?」
男は少女に話しかけるが、少女は装置らしき物を操作しているだけで返答はしなかった。そしてしばらくたって横に首を振った。
「今回もか・・・。仕方ない。帰投する」
少女は頷くと装置を操作した。
二人もその部屋から消えてしまった。
追跡を終えて、一人の男と少女がある建物の中に現れる。
そこは地球とは遥に文明が進み、時空を超越した世界。時元監査官と呼ばれる機関の一室だ。そこには何人もの人間があらゆる仕事をしていた。
「お疲れさん。どうだった?」
一人の男が前の世界で巣家人と呼ばれていた男に話しかける。
同僚で仲のいいヤツだ。
「後少しの所で逃げられた。」
「それは残念だったな・・・。」
「今から報告をまとめるよ」
「まあ、根詰めるなよ。お前真面目だし」
「解ってる。お前の方は?」
「俺は俺神詐欺の後始末だよ。なんで引っ掛かるかな~?。絶対知能レベル低すぎだよ。またリバーシとかいうゲームで金稼いでんだぜ。後世の著作権侵害だって。あの世界の人間それしか無いのかね」
俺神詐欺とはこの世界の人間が文明レベルの低い世界で人間の魂の根源と記憶を抜き出し殺害して、他のもっと文明レベルの低い世界の人間に憑依させ金銭を稼がせ、その利益を得る行為だ。
よくあるパターンが初めは神と名乗り、異世界に転生させるとか言って騙し、そして憑依させた人物の取引先で最も益が出る人物になり替わって優雅にその世界を満喫する様な事をする。
本来輪廻転生とは自然の循環作用だ。人の魂は死亡した後何かに吸収される。大部分が液体に溶け込む事になる。
それを微生物が摂取し、食物連鎖をへてやがて人間に取り込まれる。それが遺伝子となり次の世に生まれてくる事をいう。
魂の根源は循環してるのだ。その周期は約四百年。
あの世界の娯楽に異世界に転生とか言って、冒険するような話がよくあるがあれは転生ではない。
しかも前世の記憶まで残してる話が多数ある。
記憶と魂は別物だ。記憶は物理媒体だ。人間でいえば脳、デバイスでいえばメモリーだ。
後、あの世界では文明が発達していない為誤解されてるが、魂とは固有の存在だ。宿るその肉体を動かす事のみ出存在する。考えずに体を動かす事をやっていると言えば解りやすいかもしれない。
魂とは神経に宿り、魂の根源からいち早く信号を受け取り、人の体を潤滑に動かす為に存在している。
個人差もあるが、考えて行動するよりも早く動ける。
その魂を支配しているのが魂の根源、人はそれを心と呼んでいる。
あの世界で幽霊とかいう現象は魂の陰が可視化できる状態になったものだ。あの世界でもそれをシャドウと呼ぶ事がある。
人が亡くなって魂が肉体より分離した状態なのだが、通常の環境だと見えているが認識する事は出来ない。
他の光が邪魔して影を認識できないためだ。
それが魂が吸収する光とそれを邪魔しない光だけの環境が整た時に見える事があるのだ。只、誰でも見える訳ではなく個人差が大きいのも事実だ。
あの世界では幽霊と呼ばれる存在は恐れられているが、この世界では当たり前のものになっている。まあ近い波長の魂は惹かれあう傾向にある。たまに近い波長の人の体を僅かに動かす事は出来るのだが特に人に危害を与えるモノではない。
あと転生で記憶の継承は絶対にありえない。
何故なら人の記憶は死によってそこで完全に消えてしまうのだから。
それを死んだ後に神様が不幸とか言って転生させるのだが、記憶は生きている内に何らかの処理をしないと引き継げないのだ。
つまり、この世界の犯罪者が狙って計画的に神とか言って騙し、利用するのだ。
大体あの世界にはもっと不幸な人間がいるだろう。なんで十年以上も生きた人間を神が優先するのかね?。戦火の中で生まれ、何も解らないうちに亡くなってしまう人もいる。道端で生まれ、道端で死んでいく人もいる。普通不幸とかいうならそっちの方を優先させるだろう。
あと、赤ん坊にその記憶と魂の根源を入れて第二の人生とか言って冒険させる話もあるが、アレはこの世界でも不可能だ。
人間の体は魂の根源によって支配されている。それは脳も同じだ。
魂は歴史によって成長し、衰退する。時間では無いのだ。
時間は可逆だ。魂の根源の無い物質はフォトン技術の進んだこの世界では巻き戻す事が出来る。まあ、それだけのエネルギーがあればだが。
しかし魂の根源は歴史によって年齢をとってしまうので巻き戻す事が出来ない。
巻き戻したとしても、巻き戻したという歴史を魂は刻んでしまう為元には戻らないのだ。
時間は可逆だが、歴史は不可逆なのだ。
つまり赤ん坊に年老いた魂の根源を入れるとどうなるか?答えはその魂の根源の年齢の赤ん坊になってしまうのだ。魂の根源が成長期をすぎてればもう成長しない赤ん坊になってしまうわけだ。
そして記憶だがこれは論外だ。成長していない赤ん坊に大人の記憶を入れようとすると、脳が当然許容を超えてしまう。ショック死してしまうだろう。移す器が違いすぎるのだ。
「またあの世界からの憑依か・・・。本人らは転生とか言ってるが、転生じゃ無いし。あの世界でも転生って言葉あったよな?。いい加減にしてほしいな。」
「まったくだ。じゃあな!瑠奈ちゃんもまたな!相変わらず可愛いな!」
そう言って同僚は手を振って行ってしまった。
隣にいる人形みたいな少女、瑠奈は同僚にお辞儀おする。この子は人工生命体、ホムンクルスだ。言葉はしゃべれない。時空移動装置のオペレーションをする為に作られた。
このホムンクルスだが生産量は限られている。作る為にはかなりの審査が必要なのだ。
なぜなら作り出すために魂の根源が必要だからだ。
一般人には所有権すら与えられない。
特別な理由、特別な仕事をするためにだけ生産許可が下りる。
この瑠奈と呼ばれた少女型のホムンクルスも特別な理由から作られている。
「今日は報告データーをまとめたら上がろう。久しぶりに我が家に帰ろう」
そう言って俺はそれから残務を済ませる事にした。
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