愚才な武人と天才少女たちの魂の伝承 十二章アメリカでの任務編

不自由な新自由主義の反乱児

愚才な武人と天才少女たちの魂の伝承 十二章 アメリカでの任務編

それから八月手前まで、娘たちと修行した後、アメリカで任務をすることに成った。7月末が迫る頃ある人物がヒロ達と合流した、フランス系カナダ人のジャンで有る。ヒロが用事で外に出ている時、ヒロを訪ねて来た。

ヒロが帰ると美樹が【なんか金髪ロン毛の外国人が先生を訪ねて来たヨ】と言う。

ヒロは【馬鹿でかい筋肉隆々の奴か】と聞くと

美樹が【太っては無いけど、プロレスラーくらい身長デカかった】と言う。

ヒロが【あいつは熊の遺伝子を持った人間なんだ】と言う。

当然嘘である、ジャンはミオスタチンと言うホルモンが少なく筋肉が少しの負荷で

どんどん肥大する体質で、身長も彼の体質で高い、190cmで110kgで体脂肪率は10%以下だ。

よく体脂肪5%だの3%だの言う人が居るが、それは実は正確ではない。

ハッキリ誇張だと言える、いくらアスリートでも、そんな体脂肪で普通に生活は

無理なのだ、リミット限界に脂肪を絞って恐らく5%ぐらいであろう。

それは異常な数値で、ボディービルダーの極限の状態、血管がお尻や下腹部に

浮き出て皮と筋肉だけの状態である。

アリサが【熊の遺伝子って本当ですか?】と聞くとヒロは【本当だ見たら解る】

と言う。

美樹が【顔はカッコいい感じだった】と言うと【カッコいいものか、お前熊が

好みだったのか】と言う。

そうしているとジャンが再度訪ねて来た。

美樹が玄関の門まで出て【先生、熊の人が来たよ】と声を出してヒロを呼ぶヒロが

そこまで出ると、ジャンが【熊って誰の事だと】英語で言う、すこし日本語が

解ったようだ。

ヒロは【気のせいだ日本語は難しいから間違えたんだ】と英語で返事をするが、   信用してないようだ。

任務の概要と現在まで状況やヒロが参加する任務のファイルを持って来て

口頭で伝えるべき部分を説明に来た。

ヒロは【わざわざ日本まで来なくても向こうで合流すれば良いのに】と言うと

【別件でマリアから呼ばれたんだ)と言う。

ヒロは【お前はマリアの式神か、使い魔、みたいな者だからな】と言うと

【何とでも言え、俺は彼女の親衛隊で騎士だと思っている】と答える。

ジャンはそのホルモンや遺伝により普通では長生き出来ないが、ユニオンの科学に

より命を助けられた一人なのだ。                        それを恩に感じマリアのために、エージェントとして世界中で、活動している。

何度もヒロとも同じ任務についた事が有るのだ。


今度の任務はアメリカで、賭博と麻薬に絡んでいる組織との接触だが、

本来ユニオンは、ただの賭博だの麻薬だのは、関心も無い。

しかし戦争や紛争に絡んでいると成れば話は別だ、チヅルが東側で絡んだ事件の

背後にも関係しているらしい。

世の中、敵と見方と入り乱れ、絡まった糸のように成っている。

構図としては西にも東にも争いが起これば、得をする連中は、東でも西でも

利益のため繋がり、お互いの共通の利益のため動いて、一緒に動いていると言う事だ。

ある意味、ユニオンの理想と同じ手法だがそのための手段で戦争が起こり多くの人が

死ぬのは許しては置けない。

己のイデオロギーや自分の保身のため、多くの人が死ぬことも良しとする連中も

この連中も両方、許す訳にいかない。

連中はニューヨークで、スポーツ賭博やカジノ賭博に携わっている組織らしい。

ニューヨークは現在ゲーム賭博が合法なのだが、その資金の流れを調査して

誰の懐に入り、それはどのように使われているのかを調査する。

ヒロはこのような調査は、本来自分のテリトリーでないと言い、引き受けない。

しかし、弟子のチヅルがからんでいる事と、マリが任務に着くため、その護衛だ。

アメリカ、ニューヨークで早速活動を始めた。

ニューヨークの都会の金融街のビル、隠し部屋の中にある会員制のカジノに

潜入するのだ。

このカジノは違法の無登録で有るが、裏では合法のカジノと繋がりが有ると

言う情報だ。

ユニオンの調査員の調査と人脈で、ようやくそのカジノと、繋がりを持てた。

その繋がりからの紹介で日本の資産家で、多くの資産を持つ令嬢と言う名目での

潜入である。

そのためユニオンの不動産の多くを一時的にマリの名目にしたり、アメリカ当局の

協力でパスポートとビザを取ったり、かなり危うい工作もした。

この任務には何よりも東洋人風のマリの容姿と、魔術の術式による知識や心理眼が

必要だったのだ。

マリとアリサとヒロはカジノの中に、美樹とエリカとジャンはなにかあった時のため外で待機している。

ボディーチェックが非常に厳しいことを予想して、超小型の虫型のドローンを

一つだけ中に入れ、見えない場所で待機させた。

勿論武器は持ち入る事は出来ない。

三人は中に入りマリの持つブラックカードで一番高額なチップを購入する。    やるのはテキサスホームデムと呼ばれる心理戦が大きく影響するゲームだ。

ルールは手持ち二枚と一ラウンドごと配られる五枚のテーブルカードで、

降りるか勝負するかで決します。

そしてベットして掛けるチップも大きく影響するのだ。

極端な話、高額にベットしてそれに付いていけなければ、降りるしかない。

勿論、何らかの担保でチップを借りて、勝負も出来るが、それで身の破滅を

招いた人間が数多くいるのが、賭博である。

そこでなんとマリは初日から、百五十億円も勝ってしまう。

そこで、顔を売って、そこのメンバーと繋がったり、組織の深部まで

探る作戦なのだ。

その日、泊まるのは最高級ホテル、ペニンシュラ・ニューヨークのスイート

一泊二百万以上の部屋である。

カジノで、ある人物に近付いて、その部屋に泊まっていることをあえて告げる。

一部屋240m以上で寝室も二つ有りゲストルームや中にダイニングキッチンまで有るのだ。

娘たちはベッドで、ヒロはソファーで寝るが、娘たちは大喜び。

ヒロは何故か不安がつのる。

1億ドルのチップは当然クラブに預けているが、こんな勝負をどこまで続けるのか

だいたいそれで関係者が釣れるのか、この一泊二百万に泊まり、

相手を釣る必要が有るのか。

ヒロはマリに【大丈夫か】と聞くが【たかがお金でしょ】と答える。

さすがマリアの跡継ぎ、肝の据わり方が違う、と感じると同時に本当に

俺の娘なのか?と不安がよぎる。

しかし、友歌の面影はそのまま残るこの娘を本当に愛している。

夕食は近くのスーパーでサンドイッチやチキン、サラダ、そしてサプリで済ますことにした。

ヒロはニューヨークの、そこが嫌なのだ、バカ高いお金を払って、外食する価値を

感じないしスーパーの食材も高い。

そしてやはり日本とは食材の種類が違い、ヒロが料理したい食材が無い。

そのためヒロはオートミールをスーパーで買った。

戦場のキャンプでも良く使う、プロテインとオートミールを一緒に加熱すれば

美味しいのだ。

プロテインが膨らみ、泡がこぼれるのには注意する必要があるが。

低脂肪で高たんぱく、良質の糖質も繊維質も取れる。

翌日の朝はペニンシュラのビュッフェで朝食を取った。

宿泊料金に含まれていたからで有る。



ヒロは意外に節約家で、良い物には金を出すが、価値を感じなければ一円も出したな無い人間なのだ。

朝食を取っている時、早速マリの電話に電話がかかって来た、名刺を交換した男が

カジノ以外で会いたいと打診してきたのだ。

早速部屋に仕込みをして、それらしく着替え、部屋で会う約束をしたヒロは

執事として仮装、アリサはマリの友人として、他の二人とジャンは

別の場所で待機している。

その男はイタリア系アメリカ人で名前をリカルドと言い不動産開発の会社の

経営者であった。

そして昨日行ったカジノの、オーナーの友人だ。

彼はマリとホテルで会うと、一緒にカジノを日本で経営しないか?と

誘って来たのだ。

マリは当然断りを入れる【日本でやるのはリスクが大きすぎるわ

アメリカのように日本の司法は寛容では無いのよ、そしてまだ貴方の事を

良く知らないわ】と言い、そしてこう切り出す。

【貴方はどのように日本でカジノを展開するつもり、またどのような客層を考えているのかしら、その計画書を見て協力するかどうか決める。ただし出資は50対50そして収益の見込みと出資規模も、どこかの政府のように甘い考えなら当然お断り】と言った。

その日も午後からそのカジノクラブに出かけた。

その日は、ほぼ勝ち負け無しにゲームを終え、その掛けかたはカジノで評判を取り

多くの人間が彼女と名刺を交換しようと近づいて来た。

そんな中リカルドと一緒に、ある投資銀行の営業マンがやって来てマリに計画書の

概要を見せた、ネットを利用した会員制のカジノと野球やサッカーを利用した

スポーツ賭博で、総出資額が10億ドルであった。1ドル百五十円として千五百億円を

五割ずつ出資すると言う。

計画はこうである、日本の中堅、ネット証券会社をまず買収して、その会社の傘下に入れる。

その顧客情報を元に、富裕層だけにアメリカの捌会社からDMを送る、

その投資銀行の金融商品を、そのネット証券を通じて売買したり、不動産物件の

投資ファンドを募ったりするのだと。

勿論投資商品は、正式に認可させ営業すると言うのだ。

日本で個人情報が云々と言うが、ネット上での個人情報など

全く管理されてないも同じ。

いつの間にか知らない会社からメールが来たり、ネット上に広告が

出てきたりしている。

なかなか狡猾な戦略と言える。


客層の選別もかなりクリアになる。

顧客により攻め方や勧める物もAIでの選別も簡単に出来る。

彼らはそのノウハウを持っていると言うのだ。

そこでマリは出資の件は承諾した、しかし自分を出資者として名前を出すのはリスクが有ると言うことで、とある人物の名前でその銀行に送金すると言う。

それは予め(あらかじめ)アメリカの捜査機関が、裏で用意した口座からの送金だ。

それを辿れば、関係先の口座の証拠が一気に入ってくる、またマリの交換した名刺は

指紋などの情報が多く含まれる。

当局はそれを元に深堀した捜査が出来るのだ。

マリが勝ち取った、カジノの金は、何処に行ったのか、ヒロには不明だ。

マリの懐には入ってないのは事実だ。

その任務が終わると、アメリカでの次の任務にそなえ、ユニオンが所有する

不動産会社のコンドミニアムに移動した。

ヒロは高級ホテルに泊まるなら、ニューヨークではなく海の綺麗なリゾートで

のんびり過ごしたい。

価格もグルメもロケーションも、そちらが価値が有るし、経済効果も貧困層に流れる効果が大きいと思っている。

ニューヨークに行って二週間、八月中旬に差し掛かった、ヒロと娘たちは

ニューヨークでも修行は欠かさず行っている。

武術の修行は暑さを避け早朝にセントラルパークで行い、

そしてフィジカルトレーニングは、平日の午後の空いている時間に

マンハッタンのGYMでダンベルやバーベルを使い行います。

ヒロ達にとっては負荷の重さが足らないのだが、種目を工夫して

負荷を高め、筋肉を追い込む。

例えば下半身の種目など片足に負荷が掛かる物にしたり、一回にかかる負荷時間を

長くとる。

スロートレーニングや、二種目三種目のトレーニング種目を連続して行う

スーパーセットやトライセット方式で追い込んだりして負荷を強くする。

負荷の種類を変えることで新たな刺激が加わり筋肉が進化するのです。

食べる食事は日本と違い、単調なメニューが増えるが、ちょうど良い蒸し焼き用の

鍋を人は見つけ、肉の種類をその日で変えたり、白身魚にしたりして野菜と一緒に

蒸し焼きにし、ソースを色々変えて食事する方法を見つけた。

自分で天才だと娘たちに自画自賛して自慢しているヒロだ。

そんな時、マリアから新たな任務の連絡が入ってきた。

ノースキャロライナに有る、軍施設に武術の指導に行って潜入し、武器の横流しの

調査をすると言うのだ。

ニューヨークもあと数日と言う時、娘たちに事件が起きる。

娘たちに休みを与え、ニューヨークの街の観光を許した時だ。

途中で、ふた手に別れ、マリとアリサは自由の女神、エリカと美樹は

タイムズスクエアーで色々買い物して居た時のことだ。

エリカも美樹もやたらと声を掛けられる、ナンパである、日本人はニューヨークで

良くナンパされるのだ、特にタイムズスクエアーは多い。

ヒロは仕事柄アメリカ人の知り合いも多くいる、彼らは日本で白人の男子は

特にクラブなどで、やたらとモテると言う、日本人女性から、良く声が掛かって

来るらしい、日本人女性は、ニューヨークでは大人しい上、金を持って居る、と勘違いされたりする。

そんな訳が無い、日本人は貧しいのだ、勿論、アメリカ旅行する層は少しは

豊な部類だが、日本人は今や先進国で有数の貧乏民族と言える。

また日本に旅行したことの有る、アメリカ人は夜の繁華街を見て、色々な意味で

日本人女性を勘違いしているのだ。

ヒロの知り合いなどは、ヒロに【日本人の女はエッチな女が多いのか】などとヒロに聞いてくる。

その理由を聞くとクラブなどで白人と言うだけで声をかけて自分からついて来る

と言うのだ。

ヒロは【その女達がそうだっただけだろ】と答えるが、強ち事実無根とも思えない

部分も有る。

美樹たちは全て無視し、大抵はそれで終わるのだが、エリカは一見非常に大人しい。美樹のように露骨に拒否感を出すタイプでは無い。

そこを勘違いされたのか、物凄く執拗について来るグループが居た。

美樹が少し前を歩いている時、エリカの腕を掴んで来た、エリカは振りほどくと

何か、差別的な言葉を発して言ってる、それが美樹に聞こえて美樹が振りむき

蹴りをボデイに入れた、軽く三日月蹴りを入れるとボディーを抑えうずくまる。

もう一人体のデカい男が、美樹に掴みかかる美樹が切れ、その左手の肘関節に手刀を入れ、ほぼ同時に喉に抜き手を入れ、金的に蹴りを入れ倒す。

一人がナイフを手にしようとしたのを、エリカが見て、ハンドバックを首の後ろに

ヒットさせると、その瞬間長い間合いから人中に、飛び込みの直突きをヒットさせた。中指を突起のようにした、中指一本拳と言う打撃法で軽くヒットさせただけだが、その痛みで、その男はしゃがみこんでしまった。

バックで後ろから、一本拳で前から、衝撃の挟み撃ちで下手をすれば、

卒倒してしまう急所だ。                           人々の注目の中、3人の男を打ちのめし、騒ぎに成った。

すぐに誰かが騒ぎを治めようと警察に電話をかけたようだ。

ちょうどその時、マリとアリサが待ち合わせの時間で、その場所にやって来た。

マリ達が騒ぎを聞きつけ、合流した時は人だかりに囲まれて、エリカがオロオロ

してた、そして美樹はエリカを庇って肩を抱いているようだ。

相手は腹を抑えしゃがんだり、金的を抑えて居たり、一人は倒れて起き上がれない。

アリサたちが合流すると同時に警察が到着して事情を聴く。

マリが美樹に話を聞いて警官に説明してアリサがヒロに電話をして大騒ぎだ。

ヒロがジャンとユニオンの専属弁護士に連絡を入れる、そしてジャンとヒロも

そこに急いで向かった。

電話を受けてヒロが到着するまで十五分くらい掛かったが、彼女たちはそこで

警官から話を聞かれていた。

マリが機転を利かせ病院に連絡してそこに三人をタクシーで運ぶ手配をした。

最初に美樹に蹴りを入れられた男は腹を抑えてはいるが骨は大丈夫そうだ。

体のデカい男は肘が動かないし、玉金が入ったままで苦しんでる。

最後のナイフの男はまだ意識が朦朧として起き上がれそうに無い。

ジャンが警官に身分証を示し警官と一緒に3人を病院に運んだ。

そこでユニオンの弁護士も病院に駆けつけ、マリと二人で警官に事情を

説明して逮捕を逃れた。

病院ではエリカが号泣して、美樹はエリカを慰めながら、マリは男たちが

回復するのを弁護士と待って、ジャンは関係各所に手を回し、ヒロは呆然とする。

ヒロにしたら戦場以上に地獄絵図に思えるシュチュエーションだ。

ヒロがエリカに【泣かなくて良いから、落ち着いて説明しろ、どうして

こんなことに成ったんだ】と聞く。

それを聞いて美樹が【あの金髪ロン毛が、ひつこくエリカちゃんに絡んで

ファッキン ボウリング. イエローととか言って、腕を掴んで来たの】と言う。

【美樹はその時どうしたんだ】と聞くと黙ってる。

エリカに【それでどうしたんだ】と聞くと黙って答えない。

するとその金髪が、検査から腹を抑え出て来て【こいつが俺を蹴りとばしたんだ】と叫ぶ。

ヒロは【大きな声を出さなくても聞こえる、話せるようになって良かったな】と

英語で話す。

【どこをやられた】と聞くと{腹をけられたんだ}と答える。

ヒロが【見せてみろ】とシャツをめくると、ほんのり赤く成ってるが

他に影響はなさそうだ。

【まあドクターの診断を待とう】とヒロが言うと、ロン毛が警官に【こいつを逮捕してくれよ】と美樹を指さす。

ヒロが【あくまでも提訴を望むなら、こちらも性的虐待と人種差別と性的差別で訴えるしかないな】と警官にも告げる

ユニオンの弁護士が名刺を渡しその男の身文書の提示を求めた。

美樹とエリカのパスポートを出させ、お互いの身分を、示す事にしようとすると

モジモジしている。

警官が不思議に思い、提示を求めるが今は持っていない、と言う。

腕が動かない男と、ナイフの男には、マリは治療費用をこちら持つことで

話を付けた様だ。

どうやら三人とも前科持ちで、執行猶予中であったようだ。

他の警官が観衆に目撃した様子を聞き連中が付け回したことが

証明され事なきを得た。

ジャンがニューヨーク警察に手を回したことも功を奏したようだ。

今回は事なきを得たが、今の世の中どっちが良い悪いでは無く、一つ間違えれば

誰もが、逮捕される危険が有る事は確かだ。

警察や検察や判事との巡り合わせが悪ければ、思いも寄らない目に合う

可能性は誰にでもある。

言い方を変えれば、正義など時の運で、コロコロ変わるのだ。

ヒロは宿舎に帰り美樹に【皆に言う事が有るんじゃないか】と言うと

また黙っている。

エリカはそれを聞いて【私が悪いんです、御免なさい】と謝る。

ヒロが美樹に【黙ってる人間が居るがどうしてだ】と言うと

ジャンが【まあ良いじゃ無いか、事なきを得たし、原因はあの男が悪い】と言う。

ジャンに【今は任務でこっちに来ているんだ、ユニオンの迷惑に成る行動を

取ったことは、謝る必要がある】とヒロが言うと

美樹はようやく、【御免なさい、エリカちゃんがバカにされて】と下を向く。

マリが【もう怪我をする程やってはダメよ、治療費が大変なんだから】と言う。

ヒロは【幾ら掛かりそうだ?】と気に成る事を聞いた。

マリは【判らないマリアママに聞いてみて】言う。

ヒロは今、一番電話したくない人物だ。

【マリアはこっちに回すとか言って居たか?】とヒロが聞くと

マリは【判らない、ママは困ったわねと言っていたわ】と言う。

ヒロが暗い気持ちになったところで、美樹が他人事のように【先生、気にしないで、それよりお腹すかない?】と言う。

ヒロが【美樹ちゃんこっちに来てご覧】と言うと【お腹空いた、ごはん

食べよう】と聞かない困ったちゃんであった。

ジャンがそこで【今日はヒロの奢りで、ニューヨークステーキでも食べに行こう】そう言うと美樹が【賛成】と言う、そして【エリカちゃんも食べたいよね】とエリカまで巻き込もうとする。

エリカはヒロやアリサの顔を見て、様子を伺い。

再度、美樹を見て【私は別になんでもいいけど】と小さな声で言う。

ヒロは【バカ高いステーキが、どれだけの物か、味を見てやるか、どうせアメリカ人は味音痴だから、期待はしてないが】と言う。

ジャンが早速、マンハッタンで古くから有る、有名なステーキ店に電話をかけて

予約が取れた。

この店ではなんと前金でカードで支払う必要が有る。

日本でも大問題に成っている、キャンセル問題対策だ。

ヒロ達はTボーンステーキとヒレステーキ、シーフード等を予約した。

ヒロからすればバカ高い値段だが、ニューヨークにすればこんなものだろう。

量や肉の種類で違うが、一品が、100ドル目安と言う所か。

ヒロとジャンはビールで娘たちはオレンジジュース。

そうアメリカはアルコールは二十一歳からである。

そして年齢チェックは必ずされる。

美樹はヒロにこの国は頭が変だと文句を言っているが、これがこの国の

ルールである。

ヒロはメニューが運ばれると【なんて粗雑な盛り方なんだ、アメリカ人は

美的感覚もバカなのか?】と日本語で人種差別発言をかます。

マリが【パパ冗談でもヘイトはダメよ、聞かれたら逮捕されちゃうわよ】と言う。

ヒロはアメリカ人が嫌いと言う訳では無い。

親しい知り合いも居る、ただこの皿の盛り方は気に食わないのだ。

まあアメリカ人を一括りにした時点で、人種差別で有ることは間違いない。

マリが【まあ頂いて見ましょう】と言って食べると【悪く無いお味よ)と言う。

ジャンも【流石だな、ここは政治家や有名人も来た、店らしいからな】と言う。

ヒロも食べてみると、味は悪く無い。

熟成肉と言うものを初めて食べたが、肉自体の差材は悪く無い。

ヒロは【味は悪く無いが、このデリカシーの無い盛り方は、何とかならない物かね】と言うと、マリが【パパ、それがアメリカの文化でしょ、パパはバーボンやロックや

ジャズは認めているじゃない】と言う。

ヒロは【そうだな、これがアメリカの田舎で、安い料金で出されていたら

ベタ褒めしていたかも知れない】と言う。

マリは【大きな声では言えないけど少しお高いお値段ね】と言う。

とても百五十憶円の博打をしたり、ペニンシュラのスイートで、ビジネスマンや銀行を騙した同一人物に見えない。

彼らは今は泳がされているが最終的に当局に法をこじつけられて訴訟されて

しまうだろう。

ユニオンの目的はその先に居る連中である、根源を潰さなければ悪い循環は

回り続ける、もしかするとそれは、人間自身の遺伝子の中に有る物かも知れない。

もしそうならば人間はいずれ、自分自身で滅びゆくのであろう。

宿舎に帰り、ヒロが久しぶりに買って来たバーボン、ブッカーズを飲んでいると

美樹が【先生、ステーキのお礼】と言ってタイムズスクエアーで買った

チョコレートを渡す。

ステーキのお礼にしたら、安上がりだがヒロは【ありがとう】と言って受取り

そのチョコをつまみに、グランドファンクレールロードのハードロックを聴きながら

バーボンを飲んでゆっくり過ごす。

明後日には準備して、ノースキャロライナに移動しなげればならない。

移動の日に成り、ヒロ達は空港に到着すると、軍の特別捜査官に案内され

基地に行く。

軍の武術指導で3か月滞在すると言う名目だ。

捜査官の名前はジャック、ジャンと知り合いの様だが、ヒロ達には余所余所しい。

ジャンがヒロを武術マスターのヒロと紹介すると、一応握手をするが、

何故か少しバカにした感をヒロは感じる。

美樹が小声で【なんかちょっと感じ悪いよね】とヒロに言うと

ヒロは【まあよくある事さ、信用してないんだろ】と言う。

アリサが【私達が居るから?】と聞くと【それより俺の事じゃないか?小柄な東洋人

だから、自分の体格と較べ、キッドとしか思えないんだろ】とヒロが言う。

美樹が【解って無いよね、あんな馬鹿知能、海蛇を使えばすぐ殺せる】と言う。

ウミヘビと言うのは水樹達の里で使う毒で手裏剣や武器に仕込んだりして使う。

ヒロが【お前、ウミヘビを持って来ているのか、どうやって持って来たんだ

今回は普通に税関通って来たのに】と言うと。

美樹は【全然簡単だよ、栄養ドリンクの瓶で判らないように偽装したから】と言う。

ヒロはあきれて物が言えない。

マリが美樹に【黙って持ってきちゃダメでしょ、皆に迷惑掛かるんだから

そおう言う時は、ちゃんと知らせて私が隠してあげるから】と恐ろしい事を言う。

ジャンが【何をこそこそ話しているんだ】と英語で聞く。

ヒロが【気にするな、内輪の話だ】と答えた。

基地に着き荷物を置いたら早速、格闘教官の責任者の所へ、ヒロ達は

皆で挨拶に行った。


ヒロが教官に挨拶すると、練習をしている皆を集めヒロを紹介して

ヒロにエキジビション試合して、実力を見せてくれと言う。

言葉は丁寧だが慇懃無礼な感じだ、ジャックはニヤニヤしてそれを眺めている。

ヒロは【嵌められたな】と日本語で呟くとアリサが【やっつけちゃったら】と言う。

ジャンがそこに制止に入る。

ジャンは教官に【失礼だぞ、やるなら俺が相手をしてやる】と言うと、

ジャックが【俺たちアメリカ人は、実際に見ないと信用しないんだ、お前の実力は

俺が知ってるが、そのマスターは知らない】と言う。

美樹が【何でも有なら私が相手にする】とヒロに言うと

ヒロが【アホ、殺したり大怪我させる訳に行かないの】と美樹に言う。

ヒロは【総合ルールで良いのか?】と司令官に聞くと、教官は【バーリトードで】と

承諾する。

バーリトードと言うのは、最小限のルールでと言う事で、目つき、金的、噛みつき

以外は認められ、相手がタゥプするかギブアップするまで行うルールだ。

ヒロがTシャツとハーフパンツに着替えると、足の筋肉が始めて露わになる。

スクワット、300キロ以上の負荷で追い込み作った足だ。

その足がストレッチする、とまるでタコのように、柔らかく曲がる。

ベンチプレスとて、百五十キロを挙げる。

ヒロは素手、相手は総合ルール用のグローブを付けてる。

身長190位で体重が85くらい、ボクサーの体つきの男がリングに上がる。

身体は細身だがスピードは有りそうだ。

男がアップライトに構え、距離を取って、フットワークを使い出した。

間違いなくスピードタイプでアウトボクシングであろう。

総合には向かない構えだが、余程フットワークとハンドスピードに

自信が有るのだろう。

ヒロは逆に腰を落とし、クラウチング気味に構える。

相手のウウォーミングアップを見て、フリッカーのような、下から入るジャブだと

読んだのだ、かなりのスピードで来た左ジャブに、右の肘を拳に合わせカウンターの

肘打ちを拳に入れ、相手の意識が拳に行気が上に行った所に

左ローで、脛を相手の脛に、ヒロの鍛えた脛を当てた。

ヒロがその後右斜めに距離を取り構えると。

相手は手を振りギブアップのジェスチャーをする。

脛が骨折しているか、ヒビが入って居るのだろう。

レフリーが直ぐに止めて、ヒロがジャンに救急車を呼ばせた。

彼の仲間が付き添い、救急車で病院に連れていった。

ヒロがジャックと教官に【どうする?お前も試して見るか?誰かやりたい奴がいたら

今日のうちだ、明日は帰るかも知れない、今日は誰でも相手をするぞ】と英語で

言う。

するとその中で一番でかい2メートルくらいに見える体重140位の男がヒロに

【俺がやると言う】大人と小学生くらいの体格差だがヒロは受ける。

その巨体がブンブンと太い腕でパンチを振り回してくる。

今度はヒロがアウトボクシングで相手の動きを見、距離を取りながら

相手の周りをまわる。

巨体の割にはスピードも有るが直線的な動きで、ヒロは左右構えを変え、相手の正面には立たないで、今度は膝上の膝と太ももの間に背側で、何発もローキックを

同じ場所に入れながら逃げ回る。

このくらい巨体を相手にする場合、頭突きや八極拳の頂心肘【肘打ち】が有効だが

捕まると厄介に思い、足を殺して様子を見ることに。

2分ほど立つと明らかに動きが鈍くなって居る。

相手の足がふらついた所、右回りと見せかけ八卦掌の歩法で、左の死角に入り

無拍子の左ハイキックを顎に入れる。

相手が崩れるとともに、渋川流柔術の鉈落とし(大外刈りで投げると同時に、

体重を乗せて一緒に倒れ、肘を相手に体重をごと叩き込む技)を掛ける。

決して良い子は、まねをしてはダメな技だが、相手が140kgのデカ物だから

死にはしないと思った、内臓を損傷したのか、もがき苦しんでいる。

これも直ぐに救急車をもう一台呼んで、基地内の病院に送った。

ヒロはジャックに‘【もう良いか?俺も移動で疲れている、やりたい奴が居るならやる怪我云々は責任持たない、自己責任だ】と言う。

美樹は見たことかと言う顔でジャックを見ている。

ジャンに【宿舎に帰るぞ】と言い宿舎に帰った。

美樹は宿舎で【流石先生、やったね】と言う。

ヒロはため息をついて【良い事有るものか、マリアから長々と文句を言われる、

俺も美樹に偉そうなことを言えないな】と言う。

マリが、にっこり笑ってヒロを見ている、アリサは心配そうにヒロを見て

【あの人たち大丈夫かな】と言うと【多分死にはしない、急所に入れた訳じゃない、

救急車も呼んだし、明日見舞いには行こう】と言う。

美樹が【先生お腹空いたね、動いたから何か食べないと】と言う。

ヒロが【お前は動いて無いやないか】と関西弁で突っ込むと

【めちゃ動いたわ、ウウォーミングアップやストレッチ

付き合ったやないかい】と関西弁で返してくる。                 美樹の性格が時々、ムードメイカーに成るのであった。

ヒロがジャンに電話して、食べる所を探してくれるようにと言うと基地内のカフェを教えてくれた、ジャンも心配して一緒に食べることに。

マリとエリカはサンドイッチとサラダ、他はハンバーグとバケット。

美樹はヒロの顔色を伺いながらビールを頼んでる、ヒロも憂鬱な気持ちのためビールを頼んだ、ヒロは自分のせいで、美樹がどんどん、やんちゃに成ったらと、

心配だった。

因みに基地内には、特別捜査官が用意した別のIDで、入って居るので、娘たちも

身分上は二十一歳以上だ。

ジャンはそんな美樹が見ていて楽しいようで、美樹はユニークで明るい

と褒めているか、貶しているか、判らないコメントをよくするのだ。

ヒロは、売店で置いてあったブラントン(バーボンウイスキー)とナッツを買い

一人で飲んで居ると、予想通りマリアから電話が入る。

マリアが【何をしているの】と聞くので【別に何もしていない】とヒロが言うと

【どうせ一人でお酒を飲んでいるのでしょ】と言う。

ヒロが黙っていると【一人でお酒を飲むのは良くないわよ、そう言う時はマリや

ジャン、仲間と一緒に過ごしたら】と言う。

ヒロが【そう言う時ってどんな時だ?】と言うと、【イライラしたり、

落ち込んでいる時よ】と言う。

ヒロは【別に落ち込んでは居ない】と言うと、マリが【ジャックは別にあなたを

嵌めようとしたんじゃ無いわ、彼は一緒に仕事するに当たり、貴方の実力を

見たかったのだと思うわ】と言う。

ヒロが【違うね‘、明らかに俺を見下しているのを最初から感じた、

それは勝手にすれば良い、だがそれなら自分で試せってんだ】と

イライラをぶつける。

マリアが【それで相手をケガまでさせたのね、困った子ね】と窘める。

ヒロが【余裕が無かったんだよ、見下される訳に行かない】と言う。

マリアが少し厳しい口調で【貴方なら引き分けで勝負無しや、優勢勝ちの

選択も出来たのでは?貴方のイライラがその余裕を無くさせた、

戦場なら誰か死んだかも知れない、それは貴方だったかも】と叱る。

ヒロは【解っている、どうせ俺はまだまだ弱い、ロンやジジイの様には

成れないさ、だからアメリカで仕事なんか嫌だったんだ】と答えると

【明日朝一番で、基地の司令官のサミエル大将に会いに行きなさい

仕事の依頼主の責任者よ、これも大切な仕事よ】と言って電話を切った。

ヒロは全く勝手なものだ、俺が嫌な仕事ばかり押し付けて、と思ったが

どうせ何を言っても、うまく言う通りに動かされると思い諦めるのだった。                  少し経つと娘たちが揃ってヒロの所に現れ、マリが【ママが明日、司令官に皆で挨拶に行くようにって】とヒロに言う。

アリサが【司令官って凄い偉い人なの?先生】と聞いてくる。

ヒロが【さあな、大統領よりは下だろ、俺はアメリカじゃないが、何人か大統領や

大臣に会ったこと有るが、皆同じ人間だった、神様みたいなのは居ない】と言うと

美樹が【どうせお爺さんだから、適当に褒め上げて持ち上げてれば良いのでしょ】

とヒロに言う。

エリカが【美樹ちゃんそれはダメなんじゃない。きっとバカにしているのが

バレるわよ】と言う。

美樹が【ふーん、でも良いじゃん、私偉い人なんかどうでも良いし】と正直に言う。

この師匠にこの弟子有りだ。

翌日、ヒロ達は全員で司令官質に挨拶に行くと。

サミエルが出迎え【貴方がマスターヒロですね】と丁寧に出迎える。

ヒロが【ユニオンから派遣されたヒロと言います】と頭を下げると

彼が【お会い出来て光栄です】と握手を求める。

ヒロが両手を差し出し【よろしくお願いします】と握手をして頭を再び下げると

ソファーと椅子に皆を座らせた。

早速任務の話かと思えば指令は【昨日はご活躍だったそうですね】とヒロに言う。

ヒロが【お恥ずかしい話でご迷惑をお掛けして申し訳ございません】と詫びる。

指令が【凄い武術だったとお聞きしています】と再度ヒロに言うと

ヒロは【勘弁して下さい、未熟な者で本当にご迷惑をお掛けして申し訳ございません お許し下さい】と立って深々と詫びた。

再びヒロに座るように言うと【貴方はマスター源三のお孫さんと聞きましたが

本当でしょうか】と言う。

ヒロは驚いて【祖父をご存じなのですか?】と聞き返すと指令は

【マスター源三は、私の命の恩人でヒーローなのです】と言う。

ヒロは【私は源三の孫ですが、祖父は二十年以上前に亡くなりました】と伝える。

ヒロは源三の話を聞くのが好きでは無い、自分は源三とは違うと言う思いが

強いのだ。

しかし、こんな所でも源三の縁が有るとは、ヒロはびっくりする。

源三の話を切り上げたいヒロは、早速、任務の話を切り出す。

それぞれの共有している情報と、作戦の大筋を擦り合わせるためである。

武器の横流しは、射撃訓練の武器管理者と経理部の人間が関わっている

その後の経路や、後ろで動いてる人間を探り、証拠を見つけて欲しい

との事である。

打ち合わせが終わるとサミエルはヒロに【彼女達も武術をするのですか?】と

聞くと、【彼女たちも、それぞれ武術を身に付け、優秀な技術を持つユニオンの

エージェントです】とヒロは、娘たちを紹介する。

彼は【時代は変わったのですね】とヒロに言うと。

ヒロは【指令は二つ勘違いをなさっています、一つは武術は本来弱者が

権力や力の強い者に抗う為に発展した技術です、そして女性は男性以上の可能性を

秘めた能力が多く備わっています、女性と言うだけで侮ればその時点で

アドバンテージは女性に有るのです、貴方方はベトナムや中東で苦い思いをされたことをお忘れですか】と言う。

指令は大きく頷き【其の通りです、私達は勝てると思い戦いを始めましたが、

その代償は大きな物に成りました】と答える。

それを聞いていた美樹が手を挙げて【どうして勝てると思っただけで

戦いを始めたんですか?】と聞く。

マリが【美樹ちゃん戦争が非常にお金に成る人が居るの、銃一つで鉄屑が百万円の

価値に成るの、それが何万丁も作られる、ミサイルに至っては一つ壱億円もする物も

有る、戦争が始まれば、大きな利益や権力が手に入る人たちが、議論を

そう持ってくる、自分たちは危険な戦場に行きもしないのにね、またその議論に

乗せられ勇ましい事を言う人も居るし、逆にそれに反対して票を集める人も多くいる、複雑に絡み合い争い会うことで、更に糸が絡まって、また争いや分裂が起こる、悲しいい事ね】と言い、美樹は【なんか気の毒、税金を使って自分の仲間も犠牲に

成るなんて】と言う。

ヒロが【そんなことに成らないため、俺たちエージェントが動くんだ、一度、争いが

始まると、大きな損失や犠牲が生まれる、そして争いを止めるのは、防ぐより大きな力を必要とするのは、アフリカで知っているだろ】と言うと

美樹は【それじゃお手当をたんまり貰わないとね、先生】と

オネダリ少女に変身するのであった。

ヒロはその後、予定通り怪我をさせた兵士の見舞いに行く事をジャンに伝えた、

マリ達には一旦宿舎で待機するように指示すると

美樹がエリカと基地内を探索したいと言う。

ジャンと一緒ならばとヒロは許可を出し、病院に出かけた。

美樹の長所の一つは物怖じをしない行動力と、人を何故か引き付け、親しくなる性格である、これが基地内の調査に非常に役立つと、ヒロは思ったのだ。

第一段階として、基地の中に親しい人間を多く作る事を、前もって

指示をしていた。美樹は早速調査&探検と娯楽を始める。

美樹自身は趣味と実益を兼ねた任務で、大喜びだがヒロには心配でもある。

エリカとジャンと同行させることで、リスクを減らすようにヒロはした。

一方ヒロは病院に見舞いに行くと、最初の相手であったボクサースタイルの兵士を

見舞った、名前をレイと言う彼は、元全米ボクシング、ライトヘビー級のランキングにも入ったことが有る選手らしい。

ヒロは看護師に病室を聞くと、彼の部屋をノックして、入って行き彼に怪我をさせたことを謝罪した。

すると彼は【これは自己責任だ、格闘技でケガをするのは、自分が弱いからだ】

と言う。

ヒロは【レイ、君は決して弱い訳じゃ無い、ルールや状況が違えば、君と俺の立場は逆転していた、君と俺があのルールで戦うのはフェアーでは無いんだ】と言う。

レイは【マスターは謙虚なんだな、正直俺はマスターの体格を見て勝てると思って

いた、それなりに自身も有ったんだ、でもそれは勘違いだったようだ】と言う。

ヒロは【それは君の誤解なんだよ、俺が勝てたのは、先ず君の心理を利用したこと、そして君に知識も見識も無い技術と術式で闘った事だ、ボクシングで戦えば

俺は君にkOされただろう】と言った。

レイは【俺は君の足を見てローキックで来ると思っていたんだ、でもエルボーで

パンチを合わせるとは凄い技だな、あの技術は空手なのか?】聞くとヒロが【古式ムエタイの技術で、その後のキックとセットの技だ、本当はリングで見せてはダメな禁術だ君は何でまだ若いのに、ボクシングを止め、軍に入隊したんだ】と言う。

レイは【金が必要だった、軍に入隊して金を貯めて、また再度ボクシングに

チャレンジするつもりだったのさ】と言った。

ヒロは居た堪れない気持ちに成った。そして彼に【拳は折れてないだろ?】と聞くと【拳は大丈夫らしいが脛にヒビが入っているらしい、当分、ボクシングはお預けさ】

と言う。ヒロは【もし拳や足に違和感を感じたら、良い医者を紹介する、治療費も俺が出す必ずボクシングに復帰するんだ】と言う。

【何故そこまでするんだ?】レイが聞くと、ヒロは【俺はワールドボクシングは必ず

録画して後からでも見ている、君が出ていたら自慢できるだろ、俺の友人として、

俺が勝ったことは秘密にしておいてやる】とジョークを言い部屋を後にした。

もう一人のスーパーヘビー級の方は検査の結果内臓に少し損傷は見えるが、日帰りで帰ることが出来て、投薬治療で様子を見ることに成った。

足のダメージは当分残るが骨折はしていないとの事だった。

流石140kのスーパーヘビーの頑丈さはたいした物だ。

ヒロは、見舞いを終えると、宿舎に帰りその後、皆で集まり昨日のカフェで、ランチを取りながら、打ち合わせをした、カフェでヒロ達がランチを食べていると捜査官の

ジャックが現れそこに座って良いかと聞く。

ジャンが呼んだので有ろう、ヒロが【どうぞ】と言うと、近くに座り

【昨日はすまなかった】と言う。

ヒロが【何故謝る、やったのは俺の判断だ】と言うジャックは【レイの怪我の

具合はどうだった?】と聞く。

ヒロが【思ったより軽いと思うが、脛の骨にひびが入っているそうだ】と言う。

すると美樹がジャックに英語で【ドゥ ユウ ルックダウン】見下してる?聞く。

そして【ディスクリネイション】と差別?と言う。

ド直球である。ヒロはビックリした、語学の得意で無い、美樹が自ら英語をしゃべり

ド直球でジャックに言葉を投げつけたことに。マリが【美樹ちゃん】と制止する。

ジャックが英語で否定して説明する。

美樹がエリカに通訳をさせて【日本人にも韓国や中国をバカにしたり、貶したりするバカが居る、私はそんな奴を居るとバカだと思う】と言う。

ヒロが【もういい、解っているから止めろ】と美樹をなだめる。

マリがジャックに【私たちは仲間でしょ、仲良くしましょう、ここに来た目的は

同じ、争いを起こそうとする人を止める事】と言うと、

ヒロはジャックの肩をさわり握手を求める、

すると美樹もそれを真似てジャックに握手をする。

つくづく美樹の能力には驚かされる。

その後ヒロはトレーニングするため基地のウエイトトレーニング施設に行き

娘達には二手に分れて情報収集に。

マリと美樹はジャックと同行してボウリング場に、アリサとエリカはゴルフ練習場に

行くことに成った。

アリサとエリカはたまに、ヒトミに付き合い、ゴルフの練習場に行ったことが

あるのだ。

特にエリカはゴルフの才能が有ると、ヒトミはヒロに言ってエリカをよく

連れ出していた。

エリカは武器を自由に操る能力に長けている、道具を使う能力にも長けているのかも知れない。

一方、ヒロがトレーニング場に入ると、先日の格闘技の教官がトレーニングを   

していた、ヒロは挨拶をしてトレーニングを始める。

今日は脚をドロップセットでトレーニングする日だ。

ドロップセットは、短時間で筋肉を追い込むため、非常にキツイ負荷を与える。

例えばスクワットをウウォーミングアップの後に、高重量の300Kgで、限界の

回数まで行う、その後すぐにバーベルの重さを少し落とし、270kgで限界まで

やる、また同じように240kに落とし限界までやる、限界が来て直ぐに少しウエイトを下げ最後150k位まで下げ、1クール6セット位を行う、セット間の休憩を

挟まないので非常にきつく短時間に限界まで追い込める、ただし毎回行うと疲労が

蓄積する上、その刺激に慣れて効果が、薄まってしまうので、要注意である。

スクワットを終えた後ヒロは更にマシーンで脚の筋肉を追い込んで

トレーニングをする。

教官はヒロがトレーニングを終えると声をかけて来て【いつもこんな

ハードに追い込んでいるのか?】と聞く。

ヒロは【追い込むのは当たり前だろ、ただドロップセットはいつもやっている訳では無い、時に刺激を変えないと、筋肉が刺激に慣れてしまうからな、勿論普通の

セット法の日もオーバーロード‘(加負荷)の原則に従い1kgでも重い負荷や、回数を増やすことを意識している】と言う。

教官は【君たちの武術はもっと魔法のような物だと思っていた】と言うと、

ヒロは【馬鹿らしい、それは君たちが古武術の術式を理解出来ないだけで、何百年も

かけて術式を進化させたから、武術は受け継がれているんだ、スポーツ化も一つの

進化の方向だが、俺たちの先人は違う方向の、進化を選んだのさ】と言う。

よく気の力を、魔法のようにとらえる人が居るが、脳と神経伝達力の伝え方を

極めたものを、そのように表現するだけである。

気の力を使うには、そのイメージや感覚こそが、秘伝なのである。

野球のレジェンドが、教え子のバットの素振りを聞いてそれだ

と教えたのはそう言うことだ。

ヒロは格闘技の教官に【この基地で狙撃のめ旨いのは誰だ?】と聞く。

彼はダニエルとトミーと言う名前を出す。

二人とも射撃を教える教官だが、性格を聞くとダニエルは評判が悪く遊び人で

金に汚い、博打と酒と女と三拍子揃った男だと言う。

一方でトミーは真面目で大人しく、皆に親切な男らしい。

一方アリサとエリカは、ゴルフ練習場の打ちっぱなし場で、有る老人と三十代の男を探したピーターと言う経理部の人間だ。

彼が今回の事件に関わる、疑惑が持たたれている人物だ、丁度その近くの打席が

空いて居たので、そこで練習を始めた。

エリカが打っているとピーターの隣に一人の老人が来た、アリサが読唇術で

唇を読んで居ると、元の上官で退役軍人らしい。

老人が打ち始めると、アリサが声をかける、ごく自然に、先日主人が、この基地に

赴任して来て、ゴルフに来た、と言う話をする。

アリサはジャンの新妻、と言う設定で来ているのだ。

エリカはアリサの妹として来ている、アメリカ人には日本人の顔は選別しにくい、

兄弟と言っても違和感が無いのだ。

これは逆もそうだ、白人の顔は日本人には判りにくい、ドイツ系だのイギリス系だの言われても判らないのだ、そしてアリサはウイルソンにエリカを妹と紹介する。

ウイルソンはアリサが結婚していることに驚く、アリサは見た目より年が行っていると言う。

勿論初対面で年齢を聞くようなことを彼はしない。

エリカがウイルソンに挨拶をして【ゴルフを教えて下さい】と彼に言う。

ホステスがジジイの金持ちにと被くベタな手法だが、これはスタンダードに

どこでも通用するのだ。

ジジイのゴルファーは、教え魔と言う、習性を利用した手法である。

ウイルソンはエリカにゴルフを教え、それをエリカが受け入れ上達する。

ウイルソンはエリカの才能に驚いたようだ。

エリカも満更では無い様子だ、任務を忘れてゴルフに興じている。

その自然さが功を奏している。

エリカとウイルソンがゴルフに興じてる間、アリサはトミーに声をかける。

ウイルソンが親しくしていることで、トミーの気が緩むことを期待してである。

このような作戦は機を焦ると失敗するが、思いの外うまく行った、エリカの

ジジイ殺しのお陰であろう。

ゴルフの後お茶を飲み、なんと二人はコースに誘われたのだ。

帰って来てエリカはそれをヒロに自慢する。

【先生、私ゴルフの才能有るって言われた、プロを目指せるんだって】と言う。

ヒロは【そうか良くやったな、でもそれはエリカが中学性ぐらいに見えたからじゃ

無いかな?プロは大変だと思うぞ】と言う。

エリカが‘【エーッでもプロゴルフのチャンピオンは四百万ドル位、稼げるって

それ以外にスポンサーがついて、年収十億円も夢じゃないし、洋服や色んな物がタダで貰えたりするらしい】と言う。

ヒロは【そうだな、その前にゴルフのルールとマナーを覚えないとな】と言い。

【エリカ、コースデビューは来週週末だろ?アリサとお前は、それまでゴルフマナーの特訓だな、至急ユニオンから講師を派遣してもらう】と言う。

二人は毎日2時間、オンラインでマナーとルールの勉強をすることになった。

ヒロはゴルフ講座の後、心配で【どうだ面戸臭いだろ?】と二人に言うと

エリカは‘【ハヤメ御婆様のマナー講座よりか簡単だよ】と言う。

ヒロは矢早の里での事を思い出し【あのババアのマナー講座を受けたのか】とエリカに言うと【うん、毎日一時間、弓や武器の修行の後】と言う。

【御婆様が女の嗜みだって言ってた】と言う。

ヒロはその度に、ハヤメに文句を言い衝突していたが所詮、空しい抵抗だったことを

思い出した。

美樹はジャックとマリと、色んな遊技場やバー等で潜入して、友達や遊び仲間を作り情報集めをしていた。

その夜、夕食を皆で取りながら、更に打ち合わせと、今後の事を話し合う。

早朝は娘と達とヒロは朝修行、その後ヒロと美樹、そしてアリサとエリカが

ツーコンビで別の場所で活動することに成った。

昼は美樹とヒロは手徒格闘場で、武術の指導を、ジャンとジャックは射撃の教官講師として兵士の指導に、マリは心理カウンセラーとしてカウンセリングに入る。

アリサとエリカはゴルフの勉強をしながら、ヒロや皆のため買い物や、

頼まれた用事をこなすことになった。

またアリサエリカ組は、色んな場所で虫型のドローンを使い、情報なども

集めて行った。

ヒロは格闘教官をやる中で、兵士たちと交流をして次第に兵士とも打ち解け

武術を教えて行った、その中で常に教えるのは生き残る術だ。

急所への攻撃を避ける事、そして無理な攻撃を行わない。

武はスポーツ格闘技とは違う、スポーツ格闘技は危険なのは確かだが

審判が存在し、危険ならばストップが入り試合は終わる。

武の本質は守り抜き、生きる事だ。

作戦の成功は大切だが、自分や仲間の命より大切な作戦など存在しないと

常に説いて来た、そしてそのための術式の基本を教えて行く。

勿論攻撃は最大の防御になる場合もある、防御を攻撃として使ったり

型式の基本を教え、それを実践で使える組手をやらせたりして身体に覚えさせる。

多くの技を一度に身に付けるより、その人間に適した少ない技を、何度も繰り返し

覚え、実戦で使えるようにするのが、ヒロのやり方だ。

中国拳法の達人の中には、一つの技でその名を轟かせた先人もいる。

半歩崩拳、あまねく天下を打つ、と言われた、郭 雲深(かく うんしん)と言う

武術家である。

たぅた一撃のパンチで、全ての敵を倒したと言われる武術家だ。

それはあくまで極論の例えだが、それぞれ自分の骨子に成る技術が身を助けるのだ。

修行が進むにつれ虚実や応用を覚え、実戦のレベルが上がってくる。

何事も基本ありきと、言う事なのだ。

そんなある日、美樹とマリとジャックが基地の中のバーに居ると、射撃の名手で

教官の一人、トミーがバーにやって来た。

ジャックがトミーに声をかけ、マリを紹介する、美樹はバーのダーツで仲良くなったグループで、テキーラをかけてダーツをやっている、水を得た魚とはこのことだ。

美樹にはダーツもテキーラも得意種目、負け知らずの英雄気取り、美樹が羽目を

外さないか、マリは監視していた。

そんな時にトミーが現れジャックが声をかけたのだ、ジャックはマリを、

心理カウンセラーで友人として紹介した。

トミーは宜しくとマリと握手をする。

ジャックが何か奢るよと言うと、イエガーマイスター(薬草のリキュール)を

注文した。

マリはトミーに【結婚しているの?】と何気ない話をする。

トミーは【独身だよ】と答える。

マリが【結婚はする気が無いの?】と聞くとジャックが【彼は以前フィアンセが

居たんだ、でも戦争のせいで別れることに成った】と言う。

マリが【気の毒に私の所にも戦場での出来事で、心に傷を負った人が多く来る

私で力に成れるなら何でも言って】と、電話番号を教える。

トミーが【カウンセリングには何度も通ったんだ、でももう良いんだ、

軍も退役しようと考えてる】と言う。

ジャックが【気持ちは解るが早まるなよ、君のようなシューティングの

名手が勿体ないよ】と宥める。

マリが【無理に留めるのは良くないわ、でもどちらにしても、出来るなら貴方の苦しみを少しでも和らげたいわ、貴方お酒を飲まないと眠れないのでしょう、このお茶を寝る前に飲んでみて、心を穏やかにするハーブ茶で変なものは入ってないわ】とハーブ茶の

ティーパックを数個渡す。

魔導士たちが心を穏やかにするのに自分たちが飲むお茶だ。

マリが三人で話をしていると、美樹がそこに戻って来て【姉様見て、ダーツ全部

勝っちゃった】とお金をマリに見せる。

マリが【コラッ、お金を掛けちゃダメでしょ全部、返して来なさい】としかる。

美樹が【エーッ勿体ない】と言うと【じゃあそれで皆にお酒を奢りなさい、

本当にダメな子ね】と言う。

美樹が【ハーイと言って】皆にそれでお酒を奢ると、更に美樹の人気が上がり拍手が起こり美樹も有頂天になるのだった、困ったちゃんとお金も使いようなので有る。

トミーがマリに【君の妹か?】と聞くと【まさか似て居ないでしょう

彼女は親戚の娘でここで武術教官をやっているパパが預かっているの】とマリが言う

ジャックが【マリはレイと試合をしたマスターヒロの娘なんだ、彼女は東洋の医術や

心理学の知識も有るんだ】と言うとトミーが

【レイの見舞いに行った時彼から聞いたよ、何度もレイを見舞いに来て

くれて、ジェントルマンで親切だって彼が言ってた】と言う。

ジャックが【ヒロはホントに凄い武術マスターだよ】と褒めると。

マリが【ジャックやめて、東洋では変に褒められると、くしゃみが出ると言うのよ】

と言う。

トミーが【それは本当なのかい)と聞くと【褒められると鼻がムズムズする

例えなの】と言う。

トミーはマリに心を許し始めたようだ。

そうしてマリは遅くなると、パパが心配するからまた連絡するねと言い、

帰りたくないと、ごねる美樹を連れてバーをでた。

当然待っていたヒロは、マリに遅かった理由を聞いた。

ヒロは心配だからメール位送ってくれ、と頼む、普通の親に成っていた。

一方、ジャンは米軍の実弾射撃の訓練を、ダニエルと言う教官と一緒に組んで

することに。

米軍の実弾射撃訓錬にも色々有るが、最初はただ同じ距離から的に当てる物から、

実際の戦場を想定して、25ヤード100ヤード200ヤード300ヤード

500ヤード等、色んなシュミレーションで、既定の的中を狙うより実践に即した

物まで様々ある。

ジャンはシュウと同じ銃のスペシャリストで、様々な銃器に精通してユニオンで

トップクラスのシューターだ。

しかし米軍のそれとユニオンのそれは、明らかな違いが有る。

米軍の射撃は必ず急所を想定して撃つ、頭部と胸部にマーキングされた的を

狙うのだ。

ユニオンの場合は脚や肩を、威力の少ない特別な弾丸を使い撃ちます。

より難しい技術を必要とし、厳しい訓練がなされるのだ。

米軍よりはるかに厳しい条件で、訓練したジャンには米軍の規定訓練など

簡単で全てノーミスで的中できる腕を持っている。

米軍の教官のダニエルはそれを見て驚きます。

【こんな凄腕の奴は見たことない何処で習得したんだ】と聞く。

ジャンは【俺は傭兵上がりさ。金に成ればどこでも仕事をする、家族には秘密だが色々金が要るのさ】と言う、ダニエルに近付き、罠を張るためで有った。

一方、マリがバーでトミーに会った数日後、トミーからマリに電話が有った、

バーで渡したお茶が欲しいと言うのだ。

マリが【判ったわ】と言ってトミーに会いに出かけ、ハーブティーを持っていった。

トミーは【これはいくらなんだ?】と聞くと【これは私が自分で飲んいでる、

私物なの、お金は要らないはわ】と言う。

トミーは【そういう訳には行かない、何でお金が要らないんだ?】と聞く。

マリは【その代わり、私のカウンセリングを受けに来て、それが私の仕事なの、

それで実績を上げることで、信用が付くのよ】と答える。

アメリカ人は、相手にメリットが無いことを信用しない。

取引とは両方のメリットが両立して成り立つと、教育されているのだ。

マリは【最初は貴方の事がもっと知りたいわ、心の治療にはそれが必須なの】

と言う。

予定を組んで週3回の予約を入れた、軍の場合これは軍のお金で賄われ、医療は無料で受ける事が出来る。

軍役で心を病む人は多い、また過酷な訓練で退役を余儀なくされる者を、防ぐことにも繋がる、因みに中東での任務で、アルコール依存に成る兵士は部署によっては2割を超えるとも言われる。

その1人の証言では、【タリバンは「人間」ではなく「悪人」だと軍隊では

そう教え込まれたが、実際は自分と同じ人間だった、罪のない多くの民間人が

巻き添え死する映像も目の当たりにした。

着任から三カ月、自分はタフだ、きっと耐えられるはずだと自身に言い聞かせて

来たが、何もかもが嫌になったと】言う。

戦争はそれほど悲惨で、生き残っても大きな傷を残すのだ、ユニオンの戦い方の

違いは、ここから生まれたのである。

マリの治療は何気ない会話から始まる【今日は来てくれてありがとう、貴方に会えて嬉しいわ】と言う、相手を認める事が大切なのだ。

【貴方はこの前辛く悲しそうな顔をして居たわ、余程つらいことが有ったのね、

言いたくなければ離さなくて良いの、でも辛い気持ちは何でも話して、辛いときは

いつでも電話して】と言った

そして相手の気持ちに同期して、同じ立場で有る、いつも何か有ればそばに居る、

貴方の苦しみは、私の苦しみで、お互いが分け合う事が出来ると認識させる作業が

大切なのだ。

時には彼の気持ちに同期して涙を流し、良い事が有ったと言えば一緒に笑顔見せる、地道で大変な作業だ。

日本の治療はそれを1か月に1回の薬の処方で済ましている。

それで心が回復するわけが無いのだ。

一方ヒロは、トミーの過去について、サミエル指令官に聞いていた、彼がどこで

着任していて何故心を病んでしまったのか。

彼は社会生活が送れないほどの病では無いが、治療が必要なのは明白で、その原因

となる事を調べる為だ。

本来は本人が話すのを待つのが良いが、マリには時間が無い上、彼を真剣に思うが

故である。

かれは中東で恋人が出来た、彼が負傷した折野戦病院で知り合った女性らしい、

そしてお互いの優しさに惹かれて愛しあったのだ。

しかしトミーは彼女の友人から、有る悲しい事実を聞くことに成る。

彼女の父親がテロ組織の一員で、自分の参加した作戦で亡くなったらしい。

彼にとっては正に衝撃の事実であった。

今まで敵として戦った相手の娘を愛してしまった。

散々、殺した人間にも普通の家庭が有ったこと。

すこし考えれば解ることだが、それが解らなく成るのが戦争なのだ。

ヒロは彼の事が自分と重なって見えた、マリにも関係有る事である。

マリは3回目にトミーに会った時、思い切って彼に言った。

【トミーごめんなさい、貴方を助けたくて、貴方を苦しめている物が何か調べたの

それは貴方とフィアンセだった人の事なのね】と切り出す。

トミーは【何故それを】と聞く。

マリは【貴方を大切に思ってる人から、私の父が聞いてくれたの、貴方は一人じゃ

無い、貴方の知らない所で、貴方の事を心配している人は沢山居るの】と言う。

トミーは【僕なんてそんな価値は無いんだ】と俯くと、マリは【そんな悲しい事言わないで。私の話を聞いて、これは私や私の父にも関係している話なの】と言う。

トミーは【君と君のお父さんが?】と言うとマリが【私の父は若い頃、有る戦いに参加していた、貴方も知らない戦いよ、私の母は医師だったの、そして二人は愛し合って結ばれ私が産まれた、でもその戦争のため、母は父と別れ別れに成ることに

成ったの、実は母はその国の出身で母の父、つまり私の祖父はその国の

要人だったので二人は別れなければいけない立場だったのよ】言う。

そして【父は今でも母を愛していて、会いたいと思っているけど、それは叶って

居ない、でも諦めて無い、だから私たちは貴方を助けたいの、貴方は私達の鏡

同じ境遇の者同士なのなのよ】マリは感極まり涙を流している本心からだった。

それに共鳴してトミーも涙を流した【君はこんな僕のために泣いて

くれているのか?】と聞く。

マリが【私だけじゃない他にも、貴方を助けたいと思っている人間はいっぱいいる、

だから一緒に手を取って欲しいの】と訴えた。

トミーは【僕はどうすればいいんだ?】と聞くとマリは【まずは心の準備をして】

と言う。

トミーは【何の準備だ】と言うと【アリューシャさんと話せるかどうか決めるの】

と言う、トミーは【そんなの無理だ、不可能だよ】と言うと。

マリは【解ってる、直ぐに決めなくて良いの、この事は特効薬だけど劇薬なの先ずは

その心の準備が必要よ、毎日私が貴方に会いに行くそれだけで良いわ、そして心が

決まったら話して頂戴、それからこれは貴方の心を平穏に保つ薬、毎日朝と寝る前に

飲んで貴方を守るためよ】と言って別れた。

そして毎日トミーの様子を見て少しずつ、アリューシャの思い出の話を聞き出して

治療を行った、一方でアリューシャの存在を、ユニオンで調べて行った、

アリューシャがどこに居るか、ユニオンで直ぐに解った。

今でも現地の医療NGOで、看護師として働いて居たのだ。

そこにはユニオンからの医師も派遣されて居て、彼女は元気で現地の医師にも非常に評判が良い人柄も優しいスタッフだったのだ。

一方いよいよ、アリサとエリカのゴルフコースデビューの日がやって来た。

ゴルフコースはレディース5100ヤード、レギュラー、6200ヤード

のフラットで簡単なコースだったのだが、エリカはパー、72打のコースを初心者

ながら、80打で上がる驚異的なスコアーを、出してしまったのだ。

アリサも95打で100を切ると言う素晴らしい出来で、ウイルソンは非常に

驚いて居た。

何より1週間のマナー講座が功を奏して、彼女達、特にエリカを非常に

気に入った様子だ。

因みにヒロが以前、ヒトミに無理やりコースに付き合わされた時スコアーは

120打を超え、散々な成績、それ以来、誘われてもヒロが、ゴルフをすることは

無かった、ヒロ曰く、あれは究極の自然破壊で、人間の傲慢が作った恐るべき所業だと言う、自然を歩きたかったら、山を壊さずそのまま歩けとヒトミに散々文句を言って喧嘩に成ったのだ。

エリカから電話でその報告を受けたヒトミは、大喜びでエリカをプロに

育てようだの、自分が学会やビジネスで参加しているコンペに、出させるとかヒロに

言って来たようだ。

接待ゴルフが功を奏してその日、彼女たちは彼の主催するホームパーティーに招かれたのだ。

その規模は、男女十人ほどの小さなパーティーだが、そこに居た一人に注目

すべき人物が居た、その日のゴルフで違うパーティーだった人物で

非常に政治的影響力を持ち、色んな団体を運営している人物だが、かなりのタカ派で何かと注目を浴びている人物だ。

過去にマリアとも因縁が有り、一度表舞台から消えたのだが、再度注目を浴び

表舞台に戻って来た人物だ。

ホームパーティーに参加した人物は、勿論、虫型のドローン等で

追跡したりユニオンが調べたり、マリアが裏取りを勧めて行きました。

共通点は有るNGOに繋がって居たのです。

彼らは戦争で障害を負った兵士への、援助活動をする団体の理事で

男性の多くは退役軍人でした。

アリサとエリカはその後も、ウイルソンと親しく友人のように接して

彼とゴルフをしたり、お茶を飲んだり、お土産を持って家を訪ねたり

していきました。

彼自身に特別怪しい動きは無く、その慈善団体の経理は例のピーターが

行って居るのだと言う事が判りました。

他のメンバーも、非常にタカ派で右寄りの考えと言う以外は

お金の怪しい動きは証明に足りる事は、見つかりませんでした。

裏で絵図を書いて居たのは、ケビンで有る事は間違い有りません。

何故ならケビンは、ニューヨークでヒロ達が調べたカジノの連中の中心にある

投資銀行の役員でも有るのです。

先ずはケビンと、実際にNGO団体の経理をやっている、ピーターとの接触証拠

武器の横流しの実行現場と犯人とケビンの関係性。

多くの証拠をユニオンと捜査当局でそろえる必要が有る。

そのためにもウイルソンとの繋がりを、エリカとアリサに持ってもらう必要が

有るのです。

一方マリはアリーシャ(トミーの恋人)の所在が判ると、彼女にユニオンを通じて

連絡を取った。

マリは自分が、ユニオンのメンバーだと証し、彼女にユニオンの医師を

助けてくれて居る礼を述べた【いつも私の仲間を助けてくれて有難う

貴女が献身的に、患者や医師を助けて下さっている事を、心から感謝します】と言う。

すると彼女は【それは私自身の喜びのため、行って居るのです、それにそのお手当もきちんと頂いています、感謝しているのは私も同じです】と言う。

マリは【有難う同志アリューシャ、実は私は貴方に助けて頂きたい事が有ります、私のケアしているクライアントについてです、彼は有る悲しい出来事から、非常に今も

苦しんで居ます。彼の名前はトミーハントと言い、貴女への贖罪のため、自分が戦争で行った罪深さを悔い、自分の心を自分自身で苦しめる、心の病にかかって居ます】

と告げる。そして【彼はもしかすると、貴女の家族や隣人に危害を加えた、加害者かも知れない、と言う思いから苦しんで居ます、私はカウンセラーとして彼の心の治療に

ついて、貴女に助けて頂きたいのです】と言う。

アリューシャは【彼は生きて居るのですか】と聞くと、マリは【生きて居ますが、

貴女への愛と贖罪の気持ちに挟まれ、心が死にかけて居るのです、私は自分が無力なため、貴女の慈悲に頼るしか、方法が思い浮かびません、自分勝手なお願いだと理解

しています、加害者の彼を救って欲しいなんて、貴女にすれば悪魔の誘いに感じる

かも知れません、どうかあなたの考えを教えて下さい】と言った。

アリューシャは【彼は加害者では有りません、彼が加害者ならば私の父も加害者に

成ってしまいます、二人とも戦争と言う恐ろしい悪魔の被害者なのです、私が看護師をして居るのも、その悪魔から一人でも多くの人を救いたいからです】と言う。

マリが【有難う、そのことを彼に伝えます、彼の様子をまたお伝えして

宜しいでしょか】と聞く。

すると彼女は【彼と話したい直接話したい事が有ります、どうか彼と話をする機会を私に下さい】と言う。

マリは【必ずその機会を作ります、少しお時間をください】と電話を切った。

マリは大きなかけに勝ったのである。

翌日マリアはトミーに会いに行き、トミーに告げる【アリューシャと電話で

お話をしたわ、貴方はアリューシャと、もう一度話をするべきよ、勇気を出して】と。

トミーは【そんな事が許されるはずが無い、僕はきっと神にも許されない、地獄に落ちる運命なんだ】と言う。

マリが【もしそうなら、私が神を許さない、貴方が思って居るのは、神を語る悪魔よ

貴方の言う神は、貴方が心の中で作った、あなた自身を許さない存在なの、

貴方の中の神が存在するなら、貴方を許すべきなの、悲しみも受け入れ、立ち上がる事を私は信じている、貴方が立ち上がる事が私の助けになる、私が人間を信じるために、貴方が立ち上がる姿を一緒に体験する必要があるの】と訴えた。

トミーは【そんな大切なことを君は僕に託すのかい】と言う。

マリは【そうよ、貴方にはその責任が有る、例え今打ちのめされて居ても

貴方が立ち上がる事が、人間の希望に繋がるの、貴方が立ち上がるまで

私は貴方に手を差し伸べるから、お願い勇気を出して】と言う。

トミーがじっと考えて目に決意を感じた時、マリは自分の携帯を取り

アリューシャに電話した。

彼女に【ここに彼が居ます、電話を彼に渡すので思って居る事を、

彼に告げて下さい】と言う。

そしてトミーに【貴方は彼女と話す義務が有るの、勇気を出して)と電話を渡す。

アリューシャが向こうから【トミー、トミーなのね】と呼びかける。

トミーは黙って話すことが出来ない。

アリューシャが【トミー、私は怒っているの、本当に怒っているのよ】と言う。

トミーは【許してくれ、アリューシャ俺を許してくれ】と謝る。

【いいえ私は本当に怒ってるの、何故手紙だけを置いて私の前から黙って消えたの、

私たちは心から愛し合っていたはずなのに、私に黙って消えて行くなんて酷すぎるわ】

と言う、向こうからアリューシャの鳴き声が聞こえてくる。

トミーは【俺は許される訳が無いことをしたんだ】とトミーは言う。

アリューシャが【知っているわ、後から貴方が悩んで居た事を、私の父さんと

戦ったかも知れない事も、人づてに聞いて私もショックだった、でもそれ以上に貴方が苦しんでいたと聞いて、胸が張り裂ける程、私も悩んだ、何故その苦しみを二人で

分け合わ無かったの、愛するトミー苦しみも悲しみも分け合う事を二人で

誓ったでしょ】と言う。

トミーが【ごめんよ、ごめんよ許してくれアリューシャ】と言う。

アリューシャが【愛するトミー私は貴方を許します、でも条件が有ります、

必ず私に会いに来て、貴方に会いたい必ずよ】と言う。

トミーもアリューシャも号泣している。

マリが電話を取り【アリューシャ有難う、必ずユニオンが彼を貴方の元に

連れて行きます、私が責任を持って連れて行くので安心してください】と言って

電話を置いた。

ヒロはその話の報告を受け、オッサンなのに涙を流し喜んだ。

マリはヒロに【きっと私達もママに巡り会えるわ、その時まで頑張りましょ】

と言った。

トミーを救えたことが、マリにはどんな大きな任務を、成功させることより

喜びだったのだ。

人がほんの少し、許し合う事が出来たなら、この世から戦争など起こらない。

最初から戦争が起こっている訳では無い、パン一つコイン一枚、土地一坪で争い

殺し合う。

あいつが取った、嘘をついた、そんな出来事が、末代までの恨みに

繋がったりもする。

人間の悲しい性なのか、それとも乗り越える事が出来きる、進化の糧なのか、

他ならぬ人間次第であろう。

片やエリカは、ウイルソンに、どんどん入り込んで、彼の娘、エマとも仲良く

親密に成り、一緒に彼の家を手伝いに行って居る。

理由は彼の周囲を調べる事と、彼と彼の娘の身柄を守る事だ。

勿論、彼との繋がりを強める事は、最終的にこの任務には必須だ。

責任者の彼に、捜査や証拠の協力が不可欠で、そのためエリカの任務は

非常に重要と言える。

出来る事ならば戦争で、何かしらの被害を受けた、兵士へのサポートは、

潰したく無いからだ。

目的は、裏で戦争を引き起こす動きをする連中を潰し、戦争を止めることだ。

またギャンブルや麻薬とも繋がっている資金の、マネーロンダリングにも

使うとは由々しき事である。

恐らくその構図は、ダークマネーは一旦、寄付としてNGOに個人名で入金される。そして再度、障害の有る人への支援として出金される、また武器横流しのシステムは

もっと巧妙だ。

密輸業者が古い武器を廃棄する業者を装い、基地からピーターが廃棄料金を振り込み

その業者に渡す。

その武器の代金は、恐らくその銀行に、個人の預金や、廃棄企業の関連企業の預金として振り込まれ、そのお金は寄付としてNGOに、そして時間がたった後再度、何処かに振り込まれるのであろう。

恐ろしく複雑な、経路を全て把握するにはNGOから協力が不可欠だ。

もしかすると病院の治療費として、関係する病院も経路に使われ、政治家への

寄付として、その病院からお金が流れている可能性も有る。

ヒロ達が基地に潜入して、約一カ月が過ぎた、美樹はマリと定期的にバーに出没して情報を探っている。

ピーターやダニエルが、出没する場所を調べるが、基地内では無く、州の中に有る

カジノに出入りしている、と言う噂を聞きつけ、それらを探ることに成った

ノースキャロライナはカジノは公認である。

ようやくピーターが出入りしているカジノを、探り当て、マリと美樹が

近づいて行く。

公認のカジノだが、何故かマリには嫌な気配を感じた。

中を探るため虫型ドローンで撮影をしていた。

美樹も何か嫌な雰囲気を感じたが、構わずピーターに近付いた。

マリが異臭を感じて美樹を制した、ピーターの近くに異臭の元を感じたからだ。

そこには中国人らしき男が居た。

例えると何も意思を感じられない、蝋人形のような表情の東洋人だった。

顔は笑顔に見せているが、表情を感じない。

美樹はとっさに折り鶴をその中国人に、投げようとした。

そのくらい不気味な人物に感じたのだ。

マリが再度美樹を制して男に【ごめんなさい、この子は少し可笑しいの、許して頂戴】と言う、美樹が【こいつが私に障ろうとしたのよ、警察に電話して】と騒ぐ。

これを見て客が騒ぎ出し、他の店員が駆け付けて、再度マリが店員に

【この子は病気なの御免なさい】と言い、謝罪して店を出た。

美樹が【姉様酷い、ちょっと可笑しいなんて】と言うと。

マリが【ゴメンね美樹ちゃん、貴女を守るためよ】と言う。

美樹が【でも気持ち悪い奴だった、なにあいつ】と言う。

マリが【そうね危ない所だった。一旦出直しましょう】と言った。

帰ってその人間の画像をヒロに見せると【まだ生き残りが居たのか】と

言う。

【この人を知っているの?】とマリが言うとヒロが【こいつの一族を】と答える。

ヒロはマリアに電話してマリアと口論している。

その男は孟と言う一族で、中国で毒を扱い暗殺をする一族の末裔だと言う。

独特な無表情と手に付けた腕輪の文様、美樹が感じた僅かな、お香のような臭い。

それは僅かな毒の臭いを隠すためだとヒロは言う。

美樹とマリはその違和感を、感じたのだ。

ヒロはマリアに娘たちを関わらせるのを止めるように言い、マリアと揉めたのだ。

マリはヒロからそれを聞いて【パパ。私も美樹ちゃんも、パパが思っているより

大人よ、子ども扱いは止めて】と言う。

ヒロは【大人とか子供とか言う事じゃない、とにかく危険な一族だ、

これ以上お前たちは関わってはダメだ】と言う。

美樹がヒロに【先生、私を見くびり過ぎ、私の一族が世界一毒に強い肝臓を持って

いるのを知っているでしょ】と言う。

ヒロが【毒を舐めちゃダメだ、いくら毒に強くてもそのダメージは後々、

体をむしばむ、当の孟一族でさえ、自分たちの毒のため長生き出来ないんだ】と言う。

アリサが【先生どうして自分の毒で長生き出来ないの】と聞く。

ヒロが【毒手だ、自分の手に毒を染み込ませ、それを武器に相手を暗殺するのが

奴の最終手段だ、少しでも毒が血管や内臓に入れば死に至る】と話す。

マリが【パパそれじゃ、ピーターや関係者も危ないんじゃないの?】聞くと

ヒロが【ああ、ヤバイことに成る可能性が出て来た、事を急ぐ必要が有るが、

どうするか、俺も今は思い浮かばない】と答える。

するとマリが【リスクを取りましょ、リスクを補うための保険をかけてねと】言う。

ヒロはマリを見て頭を抱えて思った。

また俺の娘は突拍子もない、危険なことを考えているに違いない。

ヒロは【その保険って何だ】と言うと【マリアママよ】と答える。

【マリアをここに呼び寄せるのか】とヒロが聞くと【そうよ、まずは関係者を神隠し

にする必要が有る、一人を除いてね】とマリが答える。

ヒロが【その除く一人は誰だ】と聞くと、【ダニエルよ、彼は蜘蛛の巣の餌に

成ってもらうの】とマリが答えた。

ヒロはますます危険な臭いのする、作戦だと思った。

マリは【ピーターとウイルソンさんには、行方を消して貰う】と言う。


ヒロは【どうやってだ】と言うと【ピーターには美樹ちゃんのネットワークを使い

ラスベガスの旅行に誘いだすの】とマリが言う。

ヒロは【そんなこと出来んのか】と言うと美樹が【元々その作戦は枝葉の一つで

マリ姉さまが考えていたもん、私のコミュ力を舐めないでよ】と言う。

マリが【彼には数日違う場所で眠って貰うだけよ】と付け加えた。

ヒロが【まさかあの危険薬物で催眠術を掛けるつもりか】と言うとマリは

【パパ誤解よ、あれは危険薬物じゃない、魔導士の秘伝の薬草酒】と言う。

ヒロは【あれが危険薬物じゃ無ければ、麻薬や覚せい剤も合法薬物として

認められるはずだろ】と言うと、マリは【ヘロインだってガンや精神治療に

使われることが有るのを知らないの】と言う。

ヒロが【その言い訳は、誰かからも聞いた覚えが有る、あんな悪魔に染まるんじゃない

お前は俺の娘なのだから】と言うと【今回はしかた無いの】と言う。

また【ウイリアムさんには、エリカちゃんとアリサちゃんから、説得して貰う、

これが大きな掛けに成る】とマリが説明する。

ヒロが【まさか種を明かすのか】と聞くと、【そのまさかよ】言い

【このような時のために、エリカちゃんにウイルソンさんと、人間関係を作って貰っていたの】とマリは答えるのだ。

ヒロは【それはそうだが証拠も無しに、彼がそれを信じるのか】と聞くと、

マリは【きっと証拠はダニエルかピーターが作ってくれるわ】と言う。

その翌日、美樹が友達の一人とピーターの職場に彼に会いに行く。

そして昨日カジノで、会ったことを彼に話すと、覚えていた。

本来はそこで仲良くなって、マリとカジノで勝ちまくり金の流れと情報を

引き出す手筈であったが、第2第3の策をマリとシュミレーションしていたのだ。

美樹は友達とピーターに皆でラスベガスに行こうと誘った、旅費がこちら持ちで

二泊での旅行だと誘う。

チケットを見せて、懸賞で美樹が当たったことにしたのだ。

美樹の友人二人は、トミーのカジノ情報を、教えてくれた人間で彼女達も

カジノで時々トミーに合う知り合いなのだ。

一か月の美樹の豪遊は無駄ではなかったが、ヒロはコストの無駄だといつも思って居た。

リムジンを用意してマリ、友人二人、美樹、ピーターと乗り込んだ。

そしてリムジンに置いていた酒の瓶に薬草酒を入れてピーターに飲ませた。

その後、マリがリムジンの中でトミーに催眠術を掛ける。

その秘伝の催眠術は、彼に本当にラスベガスに行って大金を掛け、大負けして

恐ろしい額の借金を負った、と思わせるのだ。

それを二日掛けて行う大掛かりな催眠術である。

彼には別のモーテルで二日間眠って貰い、美樹とマリが彼を世話をし、

術を掛けながら、水や食料をユニオンのスタッフが用意しそのスタッフと美樹、

マリ3人で、彼が眠る間の世話をする、大掛かりな作業で術式である。

一方エリカとアリサは、ウイルソンの家に行き真実を話す。

ピーターはカジノで、大きな借金を作り、裏の組織に利用されNGOを

マネーロンダリングに使って居る事、また中東や東側のある組織に、武器を売った資金の利益のマネーリンダリングにも使われている事、その後ろにケビンコールマン

(シンクタンクの代表)と彼が関係する投資銀行(NGOの口座も有る)が

関わっている事を話す。

エリカはウイルソンに口座を調べさせてくれと頼む。

ヒロの予想通り、ウイルソンはそれを断った。

エリカはウイルソンに【このままでは、また戦争が起こるかも知れないよ、

またその犠牲で多くの兵士も傷付くから、お願いウイルソンさん】と訴えた。

ウイルソンは‘【それは仕方ない犠牲なんだ、エリカ解ってくれ】と言う。

ウイルソンの娘の旦那、義理の息子はウイルソンの元部下で戦地で殉職したと

言うのを、エリカは彼から聞いて知っているので驚いて彼に言う

【息子さんと同じような人がまた出るんだよ、それで良いの】と言うと

彼は【エリカ、アメリカはいつも正しいんだ、常に正しい戦いを選択する、

正義の国なんだ、君たちアジア人には、理解出来ないかもしれないが、もしアメリカが戦うのならそれは正義なんだ】と言う。

エリカは泣き出してしまう。

泣きながらエリカが【私は実の両親も、お爺ちゃんも、ある戦いで死んだの、

お爺ちゃんも、ウイルソンさんと同じことを言って居たんだって、

そのせいで私はいつも寂しかった、もしもウイルソンさんもずっと一人に成ったら

悲しくないの?そんな人がまた生まれるのよ】と訴えた。

ウイルソンは【そのためにこの基金を作ったんだ、彼らを一人にしないのも

この基金の目的なんだ、もし君の話が本当でも、このNGOを潰す訳に行かない】

と言う。

エリカが【そうならない様に、調べて悪い人だけを、罰するよう動くから信じて】

と言う。

ウイルソンは【その保証はない、それはこちらで隠密裏に動く】と言う。

エリカは【それじゃウイルソンさんが危ないの】と言うと

彼は【自分の身は自分で守る】と言って聞かない。

一旦宿舎に戻り二人はヒロにその報告をした。

ヒロは【やっぱりそうなったか、ウイルソンは危ないかも知れない、

自分の正義を信じるのも困った者だ】と言う。

エリカが【ウイルソンさんは騙されているの、私を孫みたいに思うって

優しくしてくれた、先生、助けてあげて】と言う。

ヒロは【助けたいが、勝手に動かれても困るんだよ、まずは虫(ドローン)で動きを見るしか無いが】と言うとエリカが【‘私が虫と近くで見張って守る】と言う。

ヒロが’【ずっとって訳に行かないだろ、俺も動くしかない、ピーターを餌にする

作戦だったのにくるったな】と言う。

ヒロはジャンに連絡して、ダニエルを見張るように言った。

元々ダニエルは泳がせ、見張る予定だったが、ウイルソンが変に動いて狙われる

可能性が出来て予定がくるったのだ。

ジャンがヒロに【ピーターの行方不明の件は伝えなくて良いのか?

と聞く】ヒロはジャンに【熊語が通じるなら伝えてくれ】と言う。

ヒロはジャンの英語をバカにして熊語と言うが、要はフランスなまりの英語なのだ。

断っておくがフランス訛りは、熊に似た発音では無い、フランス語と英語は同じ

文字でも発音が違うのでキングスイングリッシュ(‘イギリスの発音)で覚えている

ヒロには以前は解り難かったのだ。

ジャンはそれを聞いて【マリアが許可したら俺がお前を射撃する】と怒るのだが。

ヒロは‘【マリアは人を殺すのに人を使う必要は無いさ、お前はまだマリアを

解って無い】と言い返す。

ジャンはヒロの言う通り、ピーターが行方不明らしい、と言う噂を話す。

事実、彼は美樹とマリのせいで、行方不明状態だ。

千と千尋では無く、美樹とマリによる、神隠しである。

そしてカジノで莫大な借金を抱えて、金を盗んで逃げたと言う噂を話す。

これは嘘だが、経理をしているのは当のピーターだ。

その話を聞いてダニエルがどう動くのか、ケビンに連絡するかを見るのだ。

当然それを、虫型ドローンで見張り、証拠として録画している。

言うなれば、完全遺法捜査である。

素人は正義と感じるが法的には悪だ、しかしこんな手法で自白に追い込み、

立件するなんてことは有る話だ。

またアメリカには司法取引で情報を引きだし、末端は執行猶予を与え、

主犯や事件の真相解明に協力させることが、認められている。

日本では法的に違法だ、だから複雑で巧妙な犯罪は真相が判らない事が多く有るのだ。日本の検察は役人思考、アメリカは捜査思考なのかも知れない。

取り調べる際の留置や判決のシステム、そして刑務所の事情も随分違う。

一般的に日本の司法は先進国では、かなり遅れているとも言われている。

中には中国やロシアと並ぶ、非人権的とも訴える人も居る様だ。

質事実、反戦デモで米軍基地に足を少し踏み入れた、とか米兵を押しのけたと言う疑いで、逮捕され立件され1年以上拘留され、結局無罪だったケースもある、国際的に人質司法と問題に成っているようだ。

一方エリカとヒロ、アリサは交代でウイルソンの動きを見ているウイルソンに何か

有れば、全てが無駄に成る可能性も有る、彼はエリカの話を聞いてピーターに電話を 掛けた様だ。

当然電話も出ない、不安に成り職場に電話しても休んでいる、

更に不安が募ったようだ、そして彼にとっては、最悪の選択をしてしまう。

ケビンにこのことを電話してしまうのだ。

丁度その時は、エリカが彼を見張っている、ヒロに電話してそのことを報告する。

エリカはヒロに【先生どうしよう、もう一度ウイルソンさんに直接会って

説得しよう】と言う。

ヒロは【待て、スグに行く、そのまま見張っていろ】と制止する。

ヒロは直ぐにエリカの元に急行してエリカを落ち着かせた。

【大丈夫だ、きっと何とかするから、二人で彼を守るぞ】と言う。

エリカは頷いているが目が潤んでいる。

彼女は誰にでも優しい、これは彼女の美点では有るがエージェントとして

妨げになる可能性も有るとヒロは感じる。

自分が過去そんな苦しみを、何度か経験したので、彼女の苦しみを感じるのだ。

そして何故かマリアに怒りを感じる、こんな任務を娘たちに続けさせた本人にだ。

見張りの車から少し席を外して、マリアに電話する

【マリア、いつまでゆっくり、している、年が明けるぞ】と言うと【今そっちに

飛行機で向かっているわ、まだ秋にも成って無いわよ、鬼が泣くわよと】言う。

ヒロが【鬼が無く訳が無いだろう、それは鬼が笑うって言うんだ】と言うと

【日本語は難しいわね、ジェフリー・ディーヴァの作品では悪魔が泣くのよ】と言う。ヒロは【なんだそれ、アンタでも小説とか読むのか、そんな事はどうでもいい、

いざと言う時の保険なんだ、孟の奴が動くかも知れない、悪い予感がする奴に

狙われたら死人がでる、アンタにしか解毒は無理なんだ】と言う。

マリアが【解っている今飛行機の中よユニオンの飛行機でも、時空を超えるのは

無理なのよ】と言う。

ヒロは【科学って、いざと言う時役立たない、早く頼むよ】と言って電話を切った。完全に無茶ぶりである、その時、焦るヒロにジャンから電話が有った。

ジャンは【ダニエルは動く気配が無いぞ、ケビンにも連絡してない様子だ、どうするもっと揺さぶるのか?】とヒロに尋ねた。



ヒロはジャンに【ダニエルみたいな無責任な奴を、ケビンは良く仲間に入れたな

こいついざとなれば直ぐ、尻尾として切られるんだろう、そのまま様子見て

待機してくれ後々、こいつをまた餌に出来るから、殺されないようにな】と言った。

するとウイルソンの娘が外出するようだ。

最悪だ、エリカに彼女を警護させるため、二手に二別れる必要がある。

そんな時アリサが応援に駆けつけてくれた、アリサとエリカがウイルソンの娘の

警護に出て、ヒロがウイルソン本人の警護で、そのまま張り付くことに成った。

ヒロはそこで一つの賭けに出る、エリカにウイルソンの娘を説得して協力を

願うことだ。

エリカとアリサが、彼女の車を追いかけた、彼女はスーパーに向かっているようだ、普段の食料や日常品を買いに行くのだろう。

スーパーに到着した彼女に二人は声をかける。

エリカが彼女に【エマさん、お願いが有ります、もう一度聞いてください】と言う。

エマは‘【ここまで付いて来たの、驚いた、私には何も権限も無いわ】と言う。

エリカが【このままではウイルソンさんが危険な目に合うかもしれません、どうか私達が警護出来るように説得して下さい、お願いします】と言う。

エマが【父を説得なんか出来ない、知っているでしょ、あの人は根っからの軍人、

自分の正義を貫く人、あの人を変える事なんか誰も出来ない】と言う。

エリカが【ご主人のように、ウイルソンさんを失っても良いのですか】と言うと

【主人も父も同じよ、家族の気持ちなんか考えない、国と自分の正義が一番なのよ

女は男を信じて付いてくれば良い、と言うタイプなの、でもその分家族には優しいのよ

知っているでしょ】と聞かない。

エリカが諦めて彼女の護衛だけはさせて貰うと、ウイルソンに異変が起きる。

彼が突然苦しみ出したのだ。

ケビンは既に、何がしかの手段でウイルソンに毒を盛って居たのだ。

それも遅効性の物であろう、ヒロはエリカに連絡して、このことをエマに知らせると共に救急車を呼び軍の病院に運んだ。

時遅しかも知れない、と思った所にマリアから空港に着いた連絡が有った。

救急車で彼を運ぶと共に、皆で病院で落ち合うことに成った。

救急車で救命士に事情を話し血液を採取させると共に、電解液を輸液させ解毒を

試みるが、それで効果が出る訳では無く、あくまでも時間稼ぎに過ぎない。

本格的に解毒するには最低、人工腎臓装置による血液透析、浄化が必要に成る。

遅効性の毒の厄介なのは、症状が出た時には体に吸収されていることで、

それを無毒化する薬剤が有れば良いのだが、それには毒物の知識とそれに対処できる

技術が必要だ。

マリアは毒のスペシャリストでも有るのだ。

ヒロは毒の成分を早急に知るためエリカに電話して、ウイルソンが、この数日

贈り物など人から届いた物を何か食べるか口にしたか聞かせた。

すると誰かから葉巻が送られて来て、それを吸っていたと言う。

エリカだけをエマに付き添わせアリサにその葉巻を取りに行かせた。

病院に着きマリアと合流して、ウイルソンの治療に取り掛かる。

アリサが持ってきた葉巻とウイルソンの血液を病院とマリアが調べ、その間

点滴と透析を行って解毒しながらその薬を調べると、ナス科の植物、キノコ、 

   トリカブトなど、数種の毒を巧妙に混ぜた、毒で有る事が判った。

心臓、腎臓、肝臓に、それぞれがダメージを与える巧妙な毒だ。

また毒がお互いの薬効で時間差で効いて、ダメージを与える巧妙な物だ。

症状の解りやすい心臓は、最後にダメージが来るように、設計されていた。

心臓はマリアが早急に対処策を投じ、弱った心臓を病院の機材で補助しながら

肝臓と腎臓の治療に努めた。

ユニオンからもそれぞれの臓器の専門医を呼んで一週間の治療でようやく

ウイルソンは回復をして、病状が安定した。

その間エリカとエマでの介護とマリアと医師団の賢明な治療でようやく

意識を取り戻し安定したのだった。

エマが涙を浮かべウイルソンに【良かった、皆がパパを助けるために動いて

くれたのよ】と言う。

ウイルソンが【一体、何が起こったんだ】と言うとエマが【覚えていないの?パパが

いきなり倒れて救急車を呼んだの、エリカちゃん達が居なければパパは

死んでいたのよ】と言う。

ウイルソンは【そういえばいきなり胸が苦しくなって、そしたら腹部も何か違和感を

感じた気が】と言う。

気が付いた事を聞いた医師とマリアが、病室に来てウイルソンに

【貴方は毒を盛られていたんです】と告げる。

【そんなバカな事を誰が何のために】とウイルソンが聞く。

エリカが【ケビンって人がやったに決まっている】と言うと、彼は【信じられない、あの人はアメリカのために活動している人だ、何か証拠は有るのか】と言う。

マリアは【証拠はこれから出てきます、それを証明するため貴方には、一旦死んだ事に成っていただきます】と言う。

そして【因みに、あなたが中毒に成った原因がこの葉巻です、この送り主の方は

この葉巻のことを知りませんでした、きっと誰かがこの方を語り、貴方に

送ったのです】と言う。

ウイルソンが【一体何のために】と聞くと【貴方のNGOを乗っ取るためでしょう。


それが判るまで貴方とピーターには死んだことに成ってもらいます】とマリアが言う。そしてその数時間後ピーターをウイルソンの元に連れて来た。

ピーターにはウイルソンが殺されかけた事をマリに教えられた、

そして真実をウイルソンに話すようマリが言ったのだ。

ピーターはウイルソンに知っている限り、自分が行った事と、その理由を話した。

しかしそれはカジノに脅され、借金返済のため、ヤラされたことで、本当の黒幕までは知らないと言う事で有った。

そしてピーターは、ラスベガスで大負けして自殺したことに、ウイルソンは

中毒死したことを装い、本当の闇の将軍が、ケビンで有る事を暴く事を告げた。

勿論二人の協力で経理関係の記録と、入出金の記録、銀行関係の記録は全て

出してもらいコピーした上で、事務所に保管して、その後誰がどのように動くかを

虫型ドローンや、紐づけされた口座で追いかけるのだ。

次にダニエルがどのように動くのか、これも紐づけする必要がある。

実際に銃器の不正の実行は、ダニエルで有るから、何かしらのアクションを起こさせ

彼の知る所を追及する必要がある。

ウイルソンの葬儀は3日後に行い、その中の人間を全てチェックした。

当然ケビンや多くの退役軍人が弔問に訪れた、その中になんと孟も来ていたのだ。

彼の死を確かめるためであろう。

ヒロはこれ以上の被害を出さないため、彼を倒す決意をした、当然、人目の無い場所を選ぶ必要がある。

ヒロは離れた場所で、常にドローンで孟の行動をチャックをした。

軍の教官の予定は数日キャンセルして、孟一人に集中したのだ。

孟が報酬を受け取る所を確認するためである。

彼らの一族は電子マネーを信じないし、口座も持たない、現物主義で有る。

恐らく現金か、金の現物での受け渡しに成る事は知っている。

その現場を確認して、孟を倒すつもりだ。

ヒロはジャックと二人で車からドローンを使い孟を監視した。

孟が誰かの車に乗り込んだ、それをドローンで追いながら、離れて尾行すると

有る事務所に入り、十分後ぐらいに出て来た、新たに手にアタッシュケースを持って

居る、それを確認して、ヒロは孟に声を掛けた。

ジャックはその事務所に乗り込んで行く。

ヒロは孟に【すまないがその中身を見せてくれ】と言う。

すると孟はカバンを開けるふりをして中から鏢(ひょう)と言う、手裏剣のような

刃物に細い紐のついた武器を、ヒロに投げる、ヒロがそれをよけると懐から、消音能力のついたOPS30と言う火薬では無く、バネで飛ぶ銃をヒロに向かって撃つ。


ヒロは横に飛んで逃げながらベルトの後ろから、小さな傘のような防弾シールドを

出し急所をカバーしながら、折鶴(手裏剣)を孟の手に当て銃を落とす、銃が落ちたと

同時に傘型のシールドの柄の部分を分離して吹き矢のように孟に吹き付けると

小さな矢が孟の足の部分に刺さり、孟が逃げ走ろうとするが思うように走れない、

一時的に神経がしびれる薬品が塗ってあるのだ、孟はそれでもカバンを持って逃げようとするが、ヒロは距離を保ちながら追い詰めて行き、距離が詰まった所で、ヒロが小型の銃を向けて【カバン邪魔じゃ無いか?】と言います。

更に‘【カバンと交換しよう】と言い、銃を孟の手元にそっと投げると孟はカバンを

右手に持ったまま、左で銃を受け取ろうとします。

ヒロは毛の左横に無拍子(ノーアクション)で飛び込み、斜め後ろから、首の上に

左ハイキックを打ち下ろします。

毛は操り人形の糸が切れたように、崩れ落ちました。

孟を拘束して、彼が気が付いた時ヒロは【悪かったな、騙して、これ弾入って

無いの】と彼に見せ笑顔を見せます。   

カバンには金1キロバーが五枚、日本円で六千万以上の金が入って居ました。

恐らく前金と合わせ一億円以上の仕事だと思いますが。

それで人を殺すのは割に合いません。

ヒロは彼に【孟家も落ちたのもだな、銃に頼るなんて、銃と金に執着しなければ

お前逃げることが出来たかも知れないのに】と言うと。

孟は【お前に何が解る。もう孟家は無い、俺は食べるために殺すだけだ

それの何が悪い】と言う。

ヒロが【そうだな、そんなに悪いことでは無いかもな、他に道を与えてくれる

人間が居たら違って居たかもな】と話す。

ヒロは自分に、仲間や家族が居なければ、同じ道を歩んだかもと悲しく成った。

源三が昔【武とは皆が仲良くする一つの道具にすぎぬ、無手とはそれさえも捨て、何も無くとも、最強でおれる、境地の事よ、我らは、何れそこにたどり着くため、

もがき苦しんで居るだけじゃ】と言った。

その言葉をヒロは今、思い出した。

その時にヒロは【ジジイ、ボケたか?】と言ったが、もしや無の境地とは

一見、何も無いように見えて居るが、全てを解り悟りながら、何も解らぬ人間には

そのように見える物かも知れないとも思った。

孟が執着した金と銃、しかし、そのようにさせる世の中、現世は地獄、来世は天国と教える宗教は何だ?

結局諦め、死ねば楽に成ると、言っているだけだ。

それより、もがき苦しみながら、その苦しみを分け合い、共存出来る道を見つけ。


志、半ばで、その魂の遺伝子を残した、源三や水樹こそ極楽だったのでは無いのか

誰かがきっと夢を繋いで叶えてくれる、そう信じて行ける世の中を、目指したいと

思った。

一方ジャックは、ヒロから借りた睡眠ガス装置を、事務所に投げ込むだけの

楽な仕事で任務を達成した。

ヒロは彼に【お前らがこれ使うのは違法だからな、お前は医師免許持って無い。   俺は今俺では無いから、何を使っても許されるんだ、お前らクソ役人はルールに

縛られ皆、くたばるんだ】と毒を吐きながら帰った。

孟とその他の連中はユニオンのスタッフが拘束したまま連れて帰り、聴取をした。

孟の危険が消え、ホッとし車で帰る中ヒロは、あんなに恐れていた割に

呆気ない奴だったと思った。

以前、彼の一族と戦った時、ヒロは毒手にやられ死にかけた。

今回の奴が孟家は、もう無い(洒落?)と言った、それよりあんなに、金と銃に 執着するなんてと思った。                          

途中ジャックがトイレを催して、スーパーに入った。                               その時ビールをヒロが買いスーパーのベンチで飲んでいると 、

ジャックが【お前まだ任務中だぞ】と文句を言うので【やかましい、お前、楽な仕事

しかしてないだろ、死ぬまで運転手してろボケ公務員】とヒロが言い返す。

その時、近くで一人の少女が反戦を掲げてギター一本で歌を歌っていた。

その歌詞は

【いつのまにか、貴方の事を憎み始めたの

いつのまにか貴方に執着してしまったの

憎み続けてそれが私の愛だと気づいた

そして貴方の憎しみにさえも愛が有ると知ったの

有難う貴方、貴方の愛を教えてくれて

そしてさよなら貴方と私、愛の執着よ

また会いましょ、違う形で二人、会いましょう】と言う唄だった。

ヒロには哲学的にも聞こえ、数人の観客の中で誰に歌うでもなく、まるで彼女自身に歌って居るように見え、何よりも綺麗で通る彼女の唄に自然と涙が溢れ、聞いていた 皆と一緒に拍手をした。

そしてジャックに100ドル持っているか?と言って100ドル札を出させ

【ベンジャミンフランクリンからのお礼とお詫びだ】と言ってギターケースに

置いた。

帰りの車でジャックが【返してくれるんだよな】と聞くと

【フランクリンが返してくれるさ】と言って笑ってごまかすのだった。


その帰りウイルソンのいる病院に行き【貴方に毒を盛った実行犯を捕まえました】と彼に告げて、孟がその一味と一緒に居る写真と、カバンの中の金の延べ棒の写真

毛がカジノに居た写真を見せた。

そしてそれをピーターにも説明させた。

ピーターは借金で脅され犯した犯行、と言う事でユニオンが捜査当局と交渉して、

全面的に協力する条件と、賭博中毒の治療を受け、その賭博の怖さを知らせて

中毒者へのボランティアを条件として刑の執行を猶予することされた。

ウイルソンはこの現実に混乱してマリアに【私はどうなる、こんなことに関与して

いたことに成れば私はおしまいだ、私は何も知らなかった】と言う。

マリアは【そうね、貴方は被害者でも、加害者でもある】と言う。

ウイルソンは【私が何をしたと言うんだ】と聞くと

【貴方は戦争を引き起こし、新たな戦争の被害者を作る手伝いを、知らず知らず

していた無作為の加害者よ】と言う。

更に【何より自分の愛する家族を、戦争の正当化で、知らずに傷付けていたことに

気付くべきだわ】とマリアは言った。

ウイルソンが【私が家族を傷付けた?】と聞くと。

【貴方は、貴方の部下で有る義理の息子さんを教育して戦地に送り込んだ、

その時の娘さんの複雑な気持ちは?貴方の正義を信じたい気持ちと愛する夫を戦地に

送り出す気持ちを解って居て、正義を主張したの?】とマリアが言う。

そして【何よりも、戦争は必要悪だと決めつけ、その埋め合わせに、この団体を作る

それって、マッチポンプでは無いかしら?何よりも自分の正義を疑わない

貴方のような人たちが多くの犠牲者を出していることに気付くべき、正義ほど厄介な

公害はこの世に無いわ】とマリアは責める。

ウイルソンは【しかし悪は滅ぼさなければ、行けないのでは】と言うと

マリアは笑いながら【それでは貴方自身で貴方を滅ぼさなければね】と言い

【貴方の行為が多くの人を傷つけ、米軍の信用さえ貶めたのだから】と言う。

そして【貴方は悪と言うけど、その悪も同じ地球と言う身体で育った、貴方と同じ細胞なのよ、例えその細胞が病気に成ったと言って、悪と決めつけ、どんどん切り捨てて

行ったら貴方の身体はどうなるかしら?それより自分の体質を改善して、その臓器が

自己治癒出来るよう治療するのが正しい医療では無い?貴方を殺しかけた毒でさえ、

薄め形を変えると別のものと化学反応し、薬として使えるのよ、不思議よね、

自然って】と言った。

ヒロはそれをそばで聞いて、マリア自身が強力な毒物ならの、深い言葉だ、流石

マリアは毒を使えば世界一だ等と、的外れな事を思ったのだ。

そして一方でダニエルを利用して、ケビンをあぶり出す罠をはるため

ジャンが動いた。

有る組織の傭兵部隊に、武器が早急に入用だとダニエルに流したのだ。

勿論、ダニエルを見張りながらジャンはダニエルと人間関係を作り傭兵上がりで

金のため仕事をしていると思いこませていた。

今回、孟に資金を提供した組織から押収した、資金を使うことにした。

相手は資金源が一つ減った所だ、金に飛びつくで有ろう。

しかもウイルソンとトミーが死んでゴタゴタな事に成っている。

尻尾を出すだろうと踏んでの作戦だ。

ヒロ達が基地に来て、2か月近くが過ぎた頃に事は動きだした。

十月に成ろうとしている時だ。

新しいNGOの代表が決まり、再スタートが始まった頃にジャンに話しが来た。

ジャンが注文したのはⅯ240、Ⅿ249機関銃、現在もNATOで使われている

銃とその銃弾で総額1億ドルの取引で、まず1割の1千万ドルを手付として

振り込み、武器が到着した分を順次口座に振り込む話である。

それにより送金のシステム、金が再度どのように、どこに送られるか解明できる。

決局、新しく決まった経理と、理事の中の一人を解明して、その捜査は終る。

ヒロがマリアに文句を言う【散々俺たちを使いまわして、ケビンを上げられないなんて魔導士マリアも落ちぶれたな】と言うと。

マリアは気に障ったのか、少し表情を硬くして【私があの男を許すと思う?】

と言った。

因みにその取引のハブ(中軸)と成っていた銀行はマリの行っていた、偽装カジノ

捜査で関係が明らかに成り株が暴落をした。

それ以前からマリアが、株の空売りを仕掛けていて、ユニオン関連の金融会社は

大儲け、その金を使いⅯ&Ⅿで株を安値で買い、そして役員を一掃して

新たに新会社として、ユニオンの系列会社が経営をスタートした。

当然そこの株主で、理事で有ったケビンは理事を退任して、魔導士会は大儲け、

ケビンは壊滅的な損をしてしまった。

武器輸出やカジノの、お金の経路が解ったのちに、障害を負った兵士のための

NGOは改めて、ウイルソンの娘が代表として就任し、ユニオンが基金の運用を

手掛け兵士たちのケアの事業を続けた。

エリカはアメリカの任務中ウイルソンの所にちょくちょく顔を出し、お茶をしたり

たまにゴルフをしたりしていた。

ウイルソンは表面上死んだ後、ゴルフ練習場のオーナーとして娘の近くで暮らし、

ゆっくりゴルフを楽しんだそうだ。

任務が終わりマリとマリアはアリューシャの居る所にトミーを連れて行き。

ヒロと弟子の三は日本に帰った、十一月に成ろうとしていた頃だ。



エリカと美樹は十八歳、高校生なら卒業の歳だ、アリサは二十歳、

子供っぽいと思って居たアリサにも、大人の女性らしさを感じるようになり

ヒロは寂しさを感じていた。

一方で美樹は今回の事件は、自分が活躍して解決に至ったと

ヒロに主張し、一向に精神的な成長を感じさせない。

ヒロは一応(よく頑張ったな)と誉めはするが、明らかに天然の遊び好きが

功を奏しただけである。

エリカの方はウイルソンの看護の様子や気持ちの優しさをヒロが見て

エリカと話し、姉のヒトミに相談をしていた事がある。

彼女は医療に向いているのでは?とヒロは感じたのだ。

エリカは語学も堪能で、英語とフランス語を話せる。

また手先も武器の扱いの修行からか器用な娘である。

学業もアカデミーの中でもトップの成績であった。

エリカ自身も新しい自分に成りたいと言う、姉のヒトミは大喜びで彼女を歓迎して

学費から勉強から全てフォローすると言ってくれて居る。

エリカは新しい可能性に進むことに成った。

帰りの飛行機でヒロはようやく日本に帰れることを喜ぶと、美樹は寂しがっている。基地の友人達とディズニーに行きたかったとか、ラスベガスに本当に行きたかった

とか言う。

ヒロは狸寝入りして、知らんふりしていると、ヒロの肩を揺さぶり、駄々をこねる

始末だ。

美樹が【先生も任務が終わったら、ニューヨークで色んなバーボン飲んで

ライブハウスで昔のロック聞きたいって、言ってたジャン】と言う。

ヒロが【俺は今のニューヨークに絶望したくないんだ、もしロックが魂を失って

居たら、俺には絶望でしかない】と言う。

美樹が【何言ってるか、わかんねー】と漫才のギャグをかますのであった。









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愚才な武人と天才少女たちの魂の伝承 十二章アメリカでの任務編 不自由な新自由主義の反乱児 @tbwku42263

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