第7話 隠された真実
リュミエールがAI《メモリガーディアン》の導きで父ノアの記憶を進んでいくと、鮮やかな映像が広がった。それは若き日のノア――科学技術の最前線にいた頃の記憶だった。
ノアは白衣をまとい、未来的な研究所で同僚たちと議論を交わしている。そこには、脳インプラント技術の初期実験が行われている様子が映し出されていた。
その技術は「メモリーシェアリング」と呼ばれ、複数の人々が記憶をリンクし、感情や知識を直接共有できるという画期的なものでした。しかし、当時はまだ実験段階で、リスクが高かった。ノアもその研究の中心人物として、熱意を持って取り組んでいました。
「記憶をリンクすることで、人々は互いをより深く理解できる。争いをなくし、愛を育むことができるはずだ!」
ノアが情熱的に語る声が響く。
しかし、次の瞬間、研究室内の空気が一変した。緊急アラームが鳴り響き、映像が揺れる。記憶共有技術の実験中に、被験者が突然苦しみ出し、リンクが破綻したのです。その結果、被験者同士の記憶が一部失われ、大切な人との思い出や感情が消えてしまうという深刻な事態が起きたのでした。
さらに記憶が進むと、ノア自身もその失敗の影響を受けていたことが明らかになりました。彼は当時、大切な人――リュミエールの母にあたる女性――との記憶を一部失っていたのです。
ノアが頭を抱え、絶望の表情を浮かべる場面が浮かびました。
「彼女が何を好きだったのか、何を夢見ていたのか、どうしても思い出せない…。まるで心の中に穴が開いたようだ…。」
その喪失感は、ノアの人生を大きく狂わせました。彼は研究への意欲を失い、次第に孤独を深めていったのです。
リュミエールはその記憶を見て、父が抱えていた心の痛みに触れました。なぜ父が家族との時間を犠牲にしてまで研究に没頭していたのか、なぜ後に記憶や感情を避けるような態度を取るようになったのか――その答えが目の前にあったのです。
AI《メモリガーディアン》がリュミエールに語りかけます。
「ノアは、自分の失敗が他者の記憶を奪った責任を強く感じていました。その罪悪感が、彼の人生を蝕み続けたのです。」
リュミエールは、父がこれほどまでに苦しんでいたことを初めて知り、胸が締め付けられる思いでした。
リュミエールは深く息をつき、決意を新たにしました。
「私は父の記憶を修復し、彼の心を救いたい。そして、同じ悲劇が繰り返されないように、この技術の未来を変えたい。」
その言葉に、AI《メモリガーディアン》は静かに応えました。
「あなたの覚悟は十分です。次のステップへ進みましょう。」
リュミエールは新たな光の道を歩み始めました。父ノアが背負ってきた過去の重荷を解き放ち、未来に希望を繋ぐために――。
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