「お客さまはセルフレジがお嫌いですか?」

文鳥亮

第一話(序)

「あちゃあ! やられたぁ!」

 フミオは愕然とした。


 ここはスーパーマーケット『ハッピーハッピー』の食品売り場である。

 彼は常連だが、足の怪我で二週間以上来ていなかった。そういえばあちこちに貼り紙がしてあったが、すっかり忘れていた。

(なんてこった!)

 あの壮観だった有人レジの並びが、半分消えているのだ。彼がジークフリート線と呼んでいたあのラインが‥‥‥

 替わりに幅を利かせているのは、セルフレジコーナーだ。

 しかもセルフに誘導するためだろう。稼働している有人レジは二台しかない。つまり、残ったラインもがらんどうの廃墟と化していた。

(あ~あ‥‥‥)

 彼はがっくりと肩を落とした。

まさに「ハッピーよ、お前もか!」であった。


———この男はなぜそんなことを言うかって? 

 彼はセルフレジが嫌いなのだ。

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