第11話向田邦子著「父の詫び状」

 新年早々、たまには古典を読もうと思って、「向田邦子ベストエッセイ」(ちくま文庫)を買ってきた。さっそく読み始めた。

 「父の詫び状」とは向田さんの随筆集の題名だという。その冒頭の「父の詫び状」というエッセイ、さっそく読んだ。

 友人から伊勢海老のお土産をもらっても、独り暮らしなので調理がめんどう。なので、それを知人にあげてしまうというお話から、向田さんのお父さんの昔話につながっていく。

 向田さんのお父さん、厳しい人だったらしく、家にお客が来ると、向田さんにお客さんの靴をそろえるように言う。

 そのそろえ方を向田さんに細かく指示し、去っていく。

 そんな感じで、学生時代、東京の祖母の家から学校へ通い、夏冬の休みだけ仙台の実家に帰る。

 お父さん、向田さんが実家に帰ってくると、けっこういろいろ気を遣わせる。

 東京に帰ってから、お父さんから手紙があり、「このたびは格別のお働き」と書いてあった。なんとそこには朱筆で傍線がひっぱってある。

 普段、向田さんの働きに「ありがとう」の一言も言わないお父さん。

 手紙に心からのお礼が書いてあって、なんともほのぼのする。

 ああ、私が向田さんのエッセイのあらすじ書いても、いまいちよさが伝わらないかも。

 これ、本当に短くも心温まるエッセイなので、機会があったらぜひ、読んでいただきたい。

 本当に品があり、ユーモアあふれる作品、新年早々良いものを読ませていただきました。


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