常夏ノ島
某凡人
プロローグ
波の音が心地良い。
ゆっくりと突然の光に目を慣らしていく。
フェリーに揺られてうとうとしていた。
特有の硬い椅子で腰が痛い。
僕の名前は
体が弱い以外は普通の高校生。
特徴らしい特徴はないただの高校生だ。
なぜか制服のままで着替えは持ってきていない。
《なぜか》って自分でも分からない、思い出せない。
たしか寮にもう全部準備されてると聞いた気がする。
なんで転校する事になったかは覚えてない。
記憶に霧が掛かってるような思い出したくないようななんとも言えない気分になる。
思い出そうとした反動の頭痛で下を向いて大人しくしていると光る掲示板に目が行く。
不意に気になって行き先を見るとそこには常夏島の表記があった。
周りを見ると自分以外の観光客もいるらしくちらほらと乗っている。
中には7才くらいの子供もいる。
保護者らしい人も姿が見えない。
おじいちゃんおばあちゃんのとこにでも遊びに来たんだろう。
外から汽笛の大きい音が聞こえた。
島の案内はたしか同じ学校に通う予定の同級生が案内してくれるはずだ。
…なんで分かるのかは思い出せない。
まるでフェリーに乗る前の記憶が消えたようなそんな感覚だ。
思い出そうと腕を組んで少し考える。
フェリーのチケットを買った記憶は無い。
なぜ転校になったのかも覚えてない。
記憶喪失するほど頭を強く打ったなら今は病院のはずだ。
腕を組んで考える。
…そもそも都合良く何で一部分の記憶があるのか
なにか夢のようなもの?
急な肩への感触で現実に戻される。
その衝撃に無意識に体が反応してしまった。
「あんちゃん、降りないのかい?」
フェリーの運転手さんだった。
「え、あぁ、はい…」
自分でも情けない返事しか出なかった。
常夏ノ島 某凡人 @0729kinoko
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