第一節 御前
「―――様! ―――かみ様? ―――コッチ向けや神様?」
「ッタ! 何すんだてめぇ! 余は神だぞ!」
「自分で神っていう神ダサっ! ダサすぎ!」
「ダサいって言うな! 暴言を吐きかけるな! 余は、神だぞ!」
「神なら、そんな小汚い紙っ切れ見てないで謁見者の相手をしてください!」
「謁見者ぁ? 余の崇高なる娯楽を邪魔する不届き物は何処のどいつドゥワぁ? ミカエルッ? 来ていたのか」
「―――我が駄弟の分体を連れてまいりました……しかし、一体それ程までに集中して、何をご覧なられておられたのですか? 只の羊皮紙の様に見えますが……」
「あぁ、これか? これは……地上で言う日記のような物だ、地上で起きている主要な出来事を記してくれる……そんな事より、だ。ミカエル」
「はい、何でしょう」
「……ソイツは違う」
「―――は?」
「……ソイツは、ルシファーの分体ではない……あと、何でソイツは裸なんだ? ここに連れてくる前に何か着せておけよ……」
「お、おい、お前! ……ここ、何処なんだよ……何で、雲の上に、」
「黙れ。その汚い口を閉じろ―――それにしても、その。どういう事でしょうか……コイツは―――」
「問題無い。間違いなく、余の考えた通りに物事は進んでいる……話を続けてもよいな?余は今忙しいのだ……ミカエルよ」
「はっ」
「ソイツを―――天月を鍛え、利用し、先程の赤星の元へ向かわせるのだ……天月は分体では無いが、力を得ている」
「し、しかし……いえ、分かりました―――ですが、赤星というのは」
「ウリエルと共に行動していた、あの人間だ……その人間が分かっているだろう……ミカエル、お前が知る必要はない」
「そう、ですか……分かりました―――おい、立て」
「ちょ、ちょっと! 結局俺、何も知らないんだけど? 何やらされるの、俺?」
「あぁそうだ、ミカエル」
「―――はっ、何でしょう」
「お前たちの来た時代から3日後だ、3日後に天月を向かわすようにするのだ」
「……はっ。そのように……ほら、行くぞ」
「ちょ、ま―――」
「……行っちゃいましたけど……何で、目的を教えないんですか? その……ミカエル様に」
「……お前は良く分かっているだろう? これで良いのだ―――これで」
「……ま~た、紙を見る……そんなに魅力的なんですか? それが」
「あぁ、いや、なんせ。余の想定通りに事が進むのが、嬉しくてな」
「……そうですか。まぁ、何でも良いですけど。でもほら、あの束見てください? 地上からの祈りや願いが、あーんなにあるんですよ! 無視は酷くないですか?」
「……あぁ? あぁ……そんなものは置いておけ、これから凄いことが起きる……人間たちが、祈りや願いを忘れる程の、な」
「はぁ、そうですか……もういいです。そうやって、1枚の羊皮紙を夢中になってくりくりお目目で見つめ続けていたらいいんですよ! そうやって人からも忘れられて死ね!」
「グフッ、死ねは言いすぎだろ! 何だ、寂しいのか? ―――イタッ! だから、余は神だぞ! おい、無視するなよ……まぁ、良いか―――イタッ」
「……にしても、最近お前おかしいぞ……余が作った道具が、壊れることは無い筈だがな……」
「遂に独りで話し始めたんですか?」
「違う。最近、どうも日記の様子がおかしいのだ」
「どう、おかしいんですか?」
「普通、この日記は主要な出来事を書き留めるから第三者視点で書かれるのだが……近頃は赤星の周りの出来事しか書かなくなった……」
「えぇ~、たまたまじゃ無いんですか~?」
「……まぁ極稀にだから、良いのだが……何故急に、と思ってな」
「知らないですよ、ポンコツが作ったなら、そんなもんじゃ無いんですか?」
「ぽ、ポンコツ? それは流石に聞き捨てならんぞ!」
「フンッ、知らないです!」
「―――何なんだよ……」
「まぁ、もしかしたらが有り得るかもしれない……余は、ポンコツなのか……」
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