ヨーロッパでひっそり暮らしていた元軍人の俺は日本?という国でもひっそりと暮らす
まめざかたろう
第1話 アビス·ホーネッカーという男
「ここまでか…」
私、アビス·ホーネッカーは死の瞬間を迎えようとしていた。
「嫌です…まだ死なないでください…私はまだあなたに学ぶべきことがたくさんあるのに…」と私の愛弟子であるリナの嘆くような声が聞こえてくる。
もう何も見えない。
「もし、次の人生があるならば…平和な世の中で人々を笑顔にしたいものだ。」
私はそう思いながら、死んだ。
……………眩しい。ここが天国か?
目が覚めると私は青年の姿で学校?らしきところにいた。どうやら天国では無いらしい。
「1939年にドイツはポーランドに侵攻して第二次世界大戦が~」
教師らしき人間が何やら書物を持って話をしている。
しかし見たことがない言語だ。不思議な言語である。ところどころ、清国の書物で見たことがある文字がたる。しかし何より不思議なのがこの未知の言語を完璧に理解できることだ。
「じゃあここを高木!なぜポーランド降伏後、戦争状態にも関わらず、しばらくフランスとドイツは交戦しなかったんだ?」
私のいる方向を向いて教師らしき人間が問いかける。
「高木!高木!当てられてるよ!」
隣の女子が小声で私に声かける。どうやら高木とは私のことらしい。
しかしドイツがポーランドに侵攻?ポーランドなんて国あったか?昔滅んだはずだが…ドイツとフランスが戦争状態?確かに当時もかつてのナポレオン戦争の恨みが未だにプロイセン国民には確かにあった。いや、そもそもおそらくこの教師が話していることは私の生きた世界とは違う話であることは容易に想像がつく。仕方ない。
「すみません、わかりません。」私はそういった。
「そうか、分からないか…まあ難しい問題だったな。理由は~」
教師はその言って再び話始めた。
しかし、ますます意味がわからない。
キーンコーンカーンコーン
鐘の音が鳴り、教師らしき人間が
「では授業終わります。復習を怠らないように。」
と言って教室を去った。
どうやらこの学校?はこの授業で今日は終わりらしく、みんながやがやし始め、帰り支度をしている。
しかし謎である。とにかく状況を把握したい。
「ごめん、今は何年で、ここはどこかわかるかい?」
と、隣の女子に聞いてみる。すると隣の女子は
「何言っているのよ。今は2035年の6月24日よ。ここは学校に決まってるじゃない。変なこと聞くのね、
じゃあまた明日」
と、少し困惑した顔でその女子は答えた。ありがとう、と私は返したが、
(2035年!?私の生きていた時代から170年ほど未来だというのか!?どんな魔法だよ…)
と内心驚愕していると、
「おーい!高木!かえろーぜー!」
と元気な声で男子生徒が駆け寄ってくる。おそらくこのタカギとやらの友人だろうか?
「ごめん、君は誰かな?」
もちろん名前など知らないのでこう返すしかない、
「どうしたんだよ!田口だよ!田口優大!忘れたのか!?」
ととても驚いたような顔で答えてくれた。
「そうか、ごめんごめん。少し寝ぼけてたよ」
とぼけるように返し、私も本を鞄にしまい、学校を出た。
タグチと話しているうちにわかったことがある。
・ここは日本の大阪、というところだということ
・私は高木省吾という名前ということ
・日本は今平和ということ
・私はその日本の高校生だということ
つまり私はプロイセンから日本の、しかもおよそ170年後にしかも高木省吾という名と体を借りて転生した、ということなのか…理解が追いつかないが、とりあえず無理やり理解するしかない。
そうこうしていると
「お前の家はここだろ?なんだか今日はお前ぼーっとしてたぞ?まあゆっくり休めよな、またな!」
そういってタグチは手を振りながら去っていった。
カバンを探ると、鍵があったので、タグチが私の家と言った建物に入った。
「ずいぶん立派な家だな…前のぼろぼろの小屋とは大違いだな…」
「あら省吾、お帰りなさい。」
と女性が笑顔で出迎えてくれた。おそらくタカギの母親だろうか、ただいま、と返し私は二階に昇った。なんとなく、私の部屋があると思ったからだ。
ご丁寧に「省吾の部屋」とドアにかかっていた。
そこに入ると色々な本や、世界地図のポスターが貼ってあった。
中には「ドイツの歴史」や「まんがでわかる!世界の歴史⑤」などが置いてあった。
こんなに本があるならば、この世界を知るには十分だ。
本を読むのは以前から好きだった。問題はない。
乗り掛かった舟だ、この国では平和に生きて見せる!
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