道標の魔法
鳩羽天理
Prologue
路頭に迷うとはこういうことを言うのだろう。
暗い路地に一人、僕は途方に暮れていた。
身をもってこれを経験するとは思わなかったが、実際の所、それは自分の想像を凌駕する程に行き詰まった状況だった。
僕は座り込んでいた場所から立ち上がり、目の前にある二つの分かれ道を見極めようとした。
…しかし、いくら考えても答えは出なかった。
考える前に行き詰まってしまうのだ。幾度とこの決断をしたが、どの道を選んでも出口には辿り着かなかったからである。
ここに迷い込んだ当時、不運なことに僕の所持品は通信機器は勿論、腕時計さえ持ち合わせていなかった。情報源が何一つない状態で、今もこの暗く狭い路地を進み続けている。
立ち上がったが、もう進み続ける気力は残っていなかった。
思い出せばいつだってそうだった。
どの道を行こうと、そこに正解は無い。
いつだって、僕が進んだ先に辿り着く居場所は無い。
考えれば考えるほど、絶望的な状況が鮮明になる。頭がおかしくなりそうだった。
多湿な空気が吐気を催す。肌寒い隙間風は、皮膚を突き刺す様に痛かった。
壁にもたれかかる様にして座り込む。
泥に飲まれる様な感覚の中、意識が遠のく中で思った。
僕が進む先に、最初から居場所なんてなかったのだ。
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