終末世界の寂しい寂しい人外少女

秋桜空間

プロローグ


「ユウタ、あれはなんだ?」


角の生えた女の子、エマが窓の向こうを指さす。


「何ですか?」


読みかけの本を置いて、俺はエマの方へ顔を向けた。

エマの金髪が窓からの光を反射して、キラキラ光っている。


「よくわからんが、なんか綺麗になってるぞ。不思議だ」


指をさしている方を見たらなんてことはない。

それは庭の桜だった。

ここ最近暖かかったからか、花が咲き始めている。

エマは宇宙人だからな、と俺は思った。

気づいたら枯れ木に花が付いていて、びっくりしたんだろう。

見たのが初めてなら、不思議に感じても仕方ないのかもしれない。

俺からしたら、

光を反射してこんなにキラキラ光るエマの金髪の方が

よっぽど不思議だったし、よっぽど綺麗に思えたけれど。


「あれは桜ですね。この時期になるといつもこんな感じで咲くんですよ」


「ほーう」


エマは窓におでこをくっつけながら感嘆の声を上げる。

どうやら桜の花が相当お気に召したらしい。

楽しそうに窓の外を見つめるエマを見ていると、

なぜか俺も嬉しくなってきて、ふふ、と笑ってしまう。


「これからもっとたくさん咲きますよ」


「そうなのか?それは楽しみだ」


こちらを向いたエマが、八重歯を見せつつニコッとした。


「はい。それで毎年桜の周りは花見をする人でいっぱいになるんです」


あーでも……、とそこまで言って俺はあることを思い出す。


「もう地球には、人がいないんでしたね」

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