彗星

つばめいろ

彗星と想い

 明日、彗星が地球に堕ちる。そして地球は滅ぶ。……らしい。にわかには信じがたい話だ。空には昼間なのに、太陽と一つ、明るい星が浮かんでいる。それで世界が終わってしまう。明日が、地球最後の日。果たして僕は、君にこの想いを伝えることができるのだろうか?




 君との出会いは学校だった。君の優しさに惚れたんだよ。一人ぼっちだった僕に君は笑顔で話しかけてきた。初めの一言は


 「何してるの?」


 だったかな。周りとはどこか違う、何かオーラを感じる。このときから僕は君のことが気になり始めた。


 それから君は空いてる時間ごとに僕に話しかけてきた。決まってくだらないことだ。今日の星座占いが良かっただとか、今日は髪型がうまくいっただとか、なんてことないことだ。僕はただ君の言う事を聞くだけ。それでもその関係はずっと続いた。




 こんな平和な、幸せな日々を壊しにきたのは彗星だった。


 ある日、彗星が地球に接近していると報道された。このままだとぶつかって地球が滅亡するとも。一部の人は自暴自棄になり、一部の人は信じなかったり、一部の人は諦めて死んだり、一部の人は普通の生活を続けたりした。

 僕は普通の生活を続けた人だ。君も同じ。だって、終わるかなんて実際わからない。それだったら、今まで通りを続けたい。普段の生活が一番の幸せとも言うし。


 それからクラスには、ポツポツ空席ができた。おそらく世界が終わるから、自分の好きなことをやりに行ったのだろう。先生は何も言っていなかった。そして、通常の授業が執り行われた。君は相変わらず、休み時間になると話しかけてくる。


 また、学校にカップルが増えた。最後だからと、告白して付き合う人が多くいるのだろう。……まあ、あくまで憶測だが。地球が終わるかもという出来事がないと、告白もできないのか。


 それは自分も同じか。


 だって、君に告白をしようとしている。君のことが好きだという気持ちに気づいてしまったんだ。ただ、世界が終わる予定日の前日まで言えずにきてしまったが。今日言えるだろうか? 

 今日もいつも通り学校に来た。そして、君はいつもどおり話しかけてくる。僕はいつもどおり話さず、聞いているだけ。言わなきゃ、という気持ちはあるが、ただあるだけ。後押しはしてくれない。


 そのまま一日が過ぎていく。



 「それじゃ、ばいばい!」


 君はそう言って帰ってしまった。もう夕方だ。結局、君に告白できなかった。後悔が胸の中を締める。苦しい。明日、言えるだろうか。テレビでは、明日世界が終わると騒いでいる。最後くらい自分の気持ちが伝えられるかな。わからないが、そのまま眠ってしまった。




 朝になってしまった。学校に行こう。そこに行けば君に会える。支度をして、外に出ると、空に太陽の他に、明るい星が佇んでいる。あれが彗星か。あれが堕ちる前に気持ちを伝えられるだろうか。




 少し不安な気持ちを乗せて、学校まで歩く。最後の日だからか外が騒がしいな。














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