第一話 亡命
エラの両親は地方の領主でした。
しかしその土地では農民一揆が起こり、エラの両親は公開斬首刑に・・・・・・
両親は反乱の民たちに捕まる前になんとか我が子だけでもと、世話役の乳母と共にエラを遠い他国へと亡命させる段取りをしてくれました。
下賤の出からの成り上がりだった父親は、血筋に拘る近隣の国との仲は悪く・・・といっても、一方的に”蔑み”を受けていただけなのだが、エラを亡命させるには遠い西の国へと送る必要があったのです。
その西国とはエラが住む土地との物流が盛んで、エラの父親もその外交的手腕にて今の地位までのし上がり、商売としての繋がりだけでけっして交友的という訳ではなかった。しかし、その喉から手が出る程に欲しがる「実」の栽培方法や「労働力」を良く取引としていたとして、保護という恩赦は与えられなかったとしても、いつもの奴隷商ルートを使いなんとか受け入れだけは承諾を得ることが出来ました。
農民一揆の主な理由が、国家ぐるみの人身売買でもあったのです。
エラの国では「纏足」という文化が当たり前のように存在し、足が小さければ小さいほどに美しいとされています。それは富の象徴とも言われ、足の甲から親指以外の骨を刻む様に折り、そして足裏へ巻き込むように指を折りたたんでそれを布できつく巻き固定するという、痛々しくも恐ろしい風習です。
痛みで苦しむだけでなく、無理に施術を行うとその炎症にて命を失う者や気が狂う者も現れ、それらを抑える為にも「アヘン」を吸わせなければならない程の為に基本的には歩行が日常的にも困難で、行事も農作も不可能な者を養わなければならなくなることは実質的な事実にて、その環境そのものが裕福層の証となるのです。
幼き頃から早ければ早いほど纏足は始めると良いとされ、三才から六才の間から行えばより足が小さくなり、理想的な大きさは三寸以下である「三寸金蓮」「金足」と呼ばれていました。金足である女性は皇族、貴族、様々な裕福層がそれだけで良く好まれ、安泰な婚約が約束される。
歩行が困難な人生を覚悟をしてでも行える者は挙って纏足を施し、玉の輿を狙う為に途方も無い苦痛の日々を送り、十五才前後でも実行する者も中には居ました。
しかしそこそこの年齢を経た後続者となると、なかなか三寸以下にはどうしてもならず、金足に満たない者は「銀足」とも言われ安泰とは言えないが施されていない者よりはマシだという事で、エラも十才頃の比較的遅めとも言える年ごろに「纏足」を施すことになりました。
エラの一家もなんとか領主としてその地域の代表として拍が付きだし、いわば生活の余裕を得て更なる大きな安泰を求め、なんとかエラを列記とした貴族の元へと嫁がせるために纏足に着手したのです。
エラと乳母はなんとか自国の暴動の合間を搔い潜り、国を幾つも越えて遠い西国へと辿り着いたのだが、貧困層とは言わないまでもエラの一家よりも下層と思われる家の養子として、実質には家政婦、丁稚奉公としてその身を置くことになりました。
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