第20話 生存作戦
大雪というより暴風雪じゃないか、とクレイが愚痴をこぼしながら雪をかき分け、杭を打つのを横目に、食料を確認する。
「この量だと、生存だけなら三週間は持つな」
「ただし敵との交戦や帰還のことを考えるともう少し時間は減るだろう」
カールが意見を出す。確かにその通りだ、この状態で敵と交戦すれば犠牲が出る。できるだけ交戦は避けたいな…多少の悪天候でも即時撤退を目指すか?いや、遭難したら元も子もないじゃないか…どうするかな。そう考えていたら、杭を打ち終わったクレイが口を挟む。
「敵きたら俺が全員ぶっ殺せばいいだろ、なんの心配してる?」
はぁ…どこまでいってもこいつは戦闘狂だな。
「あのな暴風、怪我してみろ。雪の中歩くんだぜ?凍傷と感染症で帰還する前にお陀仏だ」
「そう簡単に怪我しないっつーの、俺を誰だと思ってる」
「普段お前が一番被弾してるだろ」
「知らないな⭐︎」
にやっと笑いながらウインクをして見せるクレイ。笑い事じゃねぇよ。
「現実的に考えろ、暴風。雪中戦の経験が浅い俺たちがベテランと戦うことになったらどうなると思う?」
「知ったことか、理不尽を押し付けるんだよ」
意味深なことを言いながら、クレイがポケットから何かを取り出した。一見するとそれはただの銃弾だったが、カールは気づいたようだ。
「…それはホローポイント弾か?」
クレイは悪魔のような笑みを浮かべ、頷いた。ホローポイント弾、着弾時に弾頭が潰れ、生物への被害面積が増える構造だ。かなり前に軍隊での使用を禁じられたはずだが、なぜ持っている。
「なんもやましいことはないさ。これは昔から所持してたもの、戦争の為に用意したものでもないし、闇ルートで入手したわけでもない」
「暴風、入手方法についてはこの際詳しく聞かない」
クレイはありがたそうに首を振った。
「だが、雪中戦の時に着るような厚い服を貫通するか?」
クレイが頭を抱えた。
「…そうだったな、この弾は貫通力が少なかったな。じゃあ使えないか…」
クレイがポケットに戻す。
「…なぁ、テントの中入らないの?」
オーロンがテントの中から顔を出す。
「えぇ…?あぁ…」
カールを先頭にテントの中に入る俺たち。テントの中は四人が余裕を持って寝れるくらいには広かった。風が防げるだけでかなり寒さもマシになるようだ。
外が暗くなってきた。何時かはわからないがとにかく外での活動をやめた方がいいのは事実だった。
「…暇だな」
クレイが膝を抱えて呑気に言った。
「…生きるか死ぬかの時に暇は無いだろ」
オーロンが明後日の方向を見て無感情に言う。暇と感じているのは変わらないようだ。
「飯にするか?」
カールが携帯食を差し出すと、クレイが明らかに嫌がった。
「それまずいから嫌なんだけど」
「死ぬか生きるかの時に言う事じゃねえだろ」
クレイがかなり不機嫌な顔でぶっきらぼうに受け取る。この食事が全く美味くないのは確かだ。人が食べるものの味をしていない。でも、今食べないと死ぬのは確かだった。
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