第13話 生存必死

「クソが…嵌められた」

クレイが木箱を蹴飛ばそうとするのでランディが慌てて止める。

「やめとけ、中にタウナー入ってたら大惨事だぞ」

当たる寸前で止めるクレイ。危なかった。

「木箱に八つ当たりする前に、どうやってここから抜け出すか考えろ、このままじゃ餓死してもおかしくないだろ」

カールが倉庫を物色しながら言う。

「…多分外から鍵かけられてるから内側からなんかしても意味ないと思うぜ」

オーロンが扉を調べながら暗い声で言った。確かに内側の扉には鍵など何もかかっておらず、外部からなんらかの方法で開かなくなっているようだった。

「おーいバールあったぜ!」

カールがバールを手にこちらに近づいてきた。そして扉の隙間に差し込んでてこの要領で力をこめた。が、扉は強かった。

「はぁ…クソ、助け待つしかねぇな、食料と水あるか?」

カールが倉庫を見渡しながら言うと、クレイがどんよりとした声で言う。

「…最悪木箱の中に入ってるもの食えばいいさ」

おい、冗談だよな?でも現状冗談にならないのがまずい。


閉じ込められてから何時間か経った。全員がほとんど寝転んで過ごしている。時計がないので時刻がわからない。しかも窓がないため外の様子もわからなかった。完全に外界から遮断されたような感覚だ。

「…お前ら生きてるか?」

オーロンがぽつりと呟くので、

「当たり前よ」

とクレイが答えていた。


さらに何時間か経った。今度は睡魔との戦いだ。全員が眠りこけるとあのヒョロヒョロが何をするかわからないため、俺たちは一切眠らなかった。

「あー、クソ、腹減った。眠い」

クレイが愚痴をこぼしていた。一向に誰かくる気配もなく、希望が見えない。まさかあのヒョロヒョロ男は俺たちがタウナーの死体を食うように仕向けたのか?考えすぎか?もしそうだとしたらなんて悪趣味なやつなんだ。


もう何時間経ったのかよくわからない。多分気温的に深夜だろうか。時間の感覚がなくなってきてる上に、空腹もきつかった。

「…おい!足音が聞こえるぞ!」

扉に耳をつけていたオーロンが叫ぶ。なんだって!?一斉に扉に向かい叫ぶタランチュラメンバー。

「ここだ!この倉庫にいる!助けてくれ!」

だんだん足音が近づいてくる。奇跡だ、本当に餓死するところだった。

「中にいるのは誰だ?」

この声は…ヘルテル代理司令。直々のお出ましとはな。

「俺たちです!開けてください!」

ランディが扉の近くで叫ぶ。すぐに扉は開いた。ヘルテル司令が護衛を二人連れて立っていた。

「君たち、大丈夫か?」

「大丈夫に見える?腹ペコだぜ…」

奥の方からクレイがげっそりと低い声で答えた。

「タウナーが見つかったよ、あの木箱に入ってる。バラバラ死体の状態でな」

クレイが声のトーンを変えずに言う。

「…わかった、とりあえず状況説明を…」

そう言い倉庫に入ってくるヘルテル司令。俺はさっきからずっと何か違和感を覚えていた。少し不自然だ。このタイミングで助けが来てくれる?そんなに都合がいい話あるか?もしこれが仕組まれたことなら、何か目的があるはずだ。司令も俺たちと同じように閉じ込めるためか?いや、違う!忘れていた!俺は咄嗟に叫んだ。

「司令入るな!」

司令が反応する時間もなく、倉庫が爆発した。

扉付近にいた俺たちは爆発の被害を最小限に抑えられたが、中にいたクレイの安否はわからない。生きてろよ。そして、廊下の奥からドス黒い笑みを浮かべた男が現れた。

「あらら、あんまりくらってないご様子だね」

ヒョロヒョロ男だった。

「あ?おかげさまでうちの暴風が死にそうなんだが、どうしてくれんだ?」

「そりゃご愁傷様」

ヒョロヒョロ男は冷淡に答える。

「さて、見たところ爆発で即死しなかった人たちも多少の怪我は負ったみたいだね。来な」

ヒョロヒョロ男は拳銃を取り出して手招きした。

「フン、舐めらたものだな、私が行こう。お前ごとき私一人で十分だ」

そう言ったのはヘルテル代理司令。司令も拳銃を取り出した。

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