第10話 失踪
タランチュラメンバーがまともに動けるようになった頃、事件が起きた。遡ること2日前。
「指令、失礼します。次の防衛作戦についてなのですが…指令?いらっしゃいますか?…あれ、おかしいな、普段はこの時間いるのに…」
「指令を見かけませんでしたか?」
「いや、見ていない。指令は先ほど自室にて事務仕事をするとおっしゃられたが、自室には?」
「…いえ、いらっしゃいませんでした」
という感じで、タウナーがいなくなったのだ。
「タウナーの野郎ついに逃げたかなぁ…?次の指令はまともな人がいいなぁ…」
朝食の席でクレイが呟いていた。
「今のヘルテル代理司令がそのままなってくれればいいのに」
カールが同調する。エンテーヌ・ヘルテル、タウナーと違ってよく頭の切れる人物だ。多少厳しいところがあるが、兵士のことをよく見ていて公正な評価ができる。
「タウナーが逃げたのか、それとも誰かに殺されたのか、調査班の報告を待った方がいいだろう」
ベーコンをかじりながらオーロンが言った。
「その通りだな」
俺はそれに賛成だ。
午後、兵士たちは部屋に全員自室に閉じ込められていた。
「訓練なくなってラッキー!!」
いつになくハイテンションなクレイが自分のベッドで小躍りしている。
「タウナー多分殺されたんだろうしな」
口角が上がっているカールがベッド下の鉄パイプの隙間からナイフを取り出す。
「…お前そこにどれだけしまってるんだよ」
オーロンがボソッと言った。が、やや食い気味にカールが言い返す。どうやらハイテンションなのはクレイだけではないようだ。
「あと拳銃が一丁とナイフが一つとマガジンいっぱいよ。そんなことどうでもいいから今から勝負でもしないか?」
「何でさ」
「このナイフを投げて扉にかかっている木の板に刺す。一番木の中心に近かったやつの勝ちさ!」
この部屋に戻ってきた時には木の板なんてかかっていなかってはずなんだけどな…いつかけたんだろうか。そう思い、クレイを見るとクレイは片目を瞑ってみせた。お前か。
「さぁて、第一投行くぜ〜」
カールが大きく振りかぶり投げたナイフは、ビュンッと風を切り的を大きく逸れ、ランディめがけて飛んで行った。
「うわ危ねぇ!!」
間一髪避けたランディ。カールは大笑いしていた。
「ふざけんなこの野郎w」
ランディが狙い定め、木の板めがけて投げたナイフは見事的に当たり、跳ね返って俺の足を狙ってきた。
「うおっと!」
俺はすぐさま足を避ける。
あぶねーな…。落ちたナイフ拾うか。そして足元を見るとナイフがない。ベッドの下に行ったか…。俺はベッドの下を覗き込み、ナイフを探そうとした。
そうしたら、目が合った。ナイフを握りしめた誰かと。
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