どうやらゲームの世界でボコボコにしていた魔王が現実に転移してしまったらしい
星影の変わり人
第1話 なんか魔王がいるけどなんで?
「ただいま……って言っても誰もいないか」
自分の部屋に入り、鞄を地面に置く。
雑に高校の制服を脱ぎ捨て、椅子に座る。
ふと、息を付きゲーム機の電源を入れ、コントローラーを掴み待機。
ゲームを起動したらそのロード時間を利用して飲み物を急いで持ってこようか。
コントローラーを一旦机の上に置き、椅子から離れる。
「今日はアイツをどんな
俺には、数カ月前からハマっているゲームがある。
ゲーム名「どうしてもこの魔王が倒せないのだ!」と言うゲームだ。
このゲームを一言で言えば、最新鋭のAIが搭載された魔王スズランを倒す思考RPGゲームだ。
プレイヤーである勇者は5つある街を自由に回りながら、アイテムを育てたり、はたまたモンスターを狩ってレベルを上げたりして、ある一定の時間が経つと街に攻めてくる魔王を倒す。倒しては、魔王が逃げる。それを繰り返すゲームだ。
しかしこのゲームには、欠点がある。
ネットのレビューでも多くの人が言っていたこと。
それは、魔王が可愛いすぎると言う事だ。
本来魔王と呼ばれる物は、恐ろしい容姿をしているイメージがあるだろう。
魔王スズランは違う。
白色の綺麗な二本の角、雪のように白い肌。
そして、胸の断崖絶壁に小さな体、この可愛いキャラクターデザインに多くのプレイヤーを引退へ葬った魔性の女性だ。
たが、そんなプレイヤー達の中に対抗する男性が一人。
それが俺こと、東蒼矢だ。
普通の人は「スズラン可愛すぎて無理、このゲーム諦める」となるが、俺は遠慮なくスズランを倒す。
倒すとは言っても、命を奪う意味では無い。
俺も最初はその可愛い見た目に剣が握れない被害者の一人だったが、意外とスズランは話が通じるようで戦いは、命を奪う事以外を条件にすることにして日々戦っている。
他愛もない家の廊下を歩く。
キッチンに着き、冷蔵庫から一つのペットボトルを取ると部屋に向かって小走りに向かう。
ガチャっと扉を開く。
……ん?
夢か?
一瞬、目がおかしくなったのかと思い、目を擦り、部屋の中を見る。
目線の先、椅子に座る一人の少女の姿がいた。
少女は俺に気づいたのかガタガタを体を震わせる。
「何で魔王スズランがいるんだよ!」
「ふぇぇ!! なんじゃお前ぇ!!」
「い〜や、こっちが聞きてぇよ!! 何でゲームのキャラクターが現実世界に?」
「げ〜む? 何言ってるんじゃ?」
咄嗟に部屋の中を見る。
カメラはつけられないってことはドッキリでは無い。
いや、一般人にドッキリ仕掛けるテレビ番組とか中々無いし、違うか。
……にわかに信じがたいが目の前にいる一人の少女は、魔王スズランだろう。
俺の脳内のデータベースがそう言っている。
夢ではない。テレビ番組のドッキリでもなければ、一体。
「むぅ……お主もしや、勇者バーサーカーか?」
勇者バーサーカー、それはゲームのプレイヤーネームだ。
「そうだけど、何でわかった? ゲームとは容姿が全く違うぞ」
「……なんとなくじゃな、わらわの脳内がそう言ってるのじゃ、あの忌々しい勇者バーサーカーじゃとね」
「忌々しいのは、そっちだろ!! チート魔法をバンバン使って
「そっちだってポーションを大量に飲んでズルをしたじゃろ!!」
お互いに睨め合い、口喧嘩を始めた。
二時間ほど立つとスズランが息切れを起こし、一旦休戦をすることになる。
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