第2話『ようこそ廃プラ同好会へ』

北校舎は本校舎から渡り廊下で繋がっている。北校舎に着くと私は階段を上がり、3階へと上がる。そして廊下を進み、一番奥の教室へと向かった。扉には、廃プラ同好会と書かれていた。私はまだ葛藤の渦中にいた。

(ちょっとだけ……ちょっと覗いて、ニンマリ微笑んで帰るだけ)

そう、私はまだこの同好会に入ると決めたわけじゃないのだ。だからこれは偵察だ。私は恐る恐る扉をノックしようとする。すると突然、扉が開き、中から女子生徒が現れた。

「ひょえ!」

私は驚いて変な声を出しながら、変なポーズをしてしまう。

「あら、あなた」

扉を開けて現れたのは、今朝校門前で出会った生徒会長、月東弥恵先輩だった。

私は思わず逃げ出そうとするも、バランスを崩して転んでしまった。しかし間一髪のところで先輩に支えられる。

「まったく、手のかかる子ね。ん?もしかして入部希望!?」

「NO!NO!NO!NO!」

私は必死に否定する。すると先輩は私を引っ張り上げて立たせてくれた。そして、少し考えるような仕草をしてから言った。

「なるほど。見学に来たって感じね。そして扉をノックしようとしたら、偶然私が出てきた。違う?」

なんだ、その洞察力。エスパーなの?エスパー美少女なの?答えはイエスですけど。私は素直に頷いた。すると、先輩は微笑みながら言う。

「じゃあ、中に入りなさい」

私は言われるがままに廃プラ同好会の部室へと入った。中に入ると、私の想像を超えた光景が広がっていた。そこには、いくつものケーブルが床を這い、得体の知れない機械や部品が散乱していた。そして部屋の右側には机があり、その上にはパソコンが置かれていて、白衣を着た女子生徒がカタカタとキーボードを打っていた。そして中央奥には御座が敷かれ、その上で寝ている女子生徒。頭にはケーブルで繋がれたヘルメットのような物を被っている。彼女は寝息を立てながら、気持ちよさそうに寝ていた。そして左側の窓際には……。

「あ、飛行機」

頬杖をついて窓の外を眺める、小柄な女子生徒がいた。首には黄色いスカーフを巻いている。……私にはわかる。この人たちは、普通じゃない。

(へんてこ人間達だ……)






あまりに異様な部室内の光景に、私は呆然と立ち尽くしていた。そんな私を見て月東先輩は言った。

「ようこそ、廃プラ同好会へ」

あなたはなぜそこで胸を張れる。この引きつってる顔が見えないのか。

「いや、廃プラ同好会ってなんですか!というか色々なんなんですか!」

私はつい声を上げてしまった。しかし、弥恵先輩は特に気にする様子はなかった。

「そうね。まずはメンバー紹介しないとね。私が部長の月東弥恵。この部の指揮官をしているわ。そこで眠っているのが、二年の井笹いざさゆすり。この部のキーパーソンとなる子よ。そして、白衣を着ているのが同じく二年の八盛やさかりうなみ。ゆすりを研究しているわ。窓際にいるのが三年の来生寺星羅くるきじせいら。この部のマスコット的な存在よ。何か質問ある?」

ワッツ?なんだこの人たち。色々と聞きたいことがありすぎるぞ?私は少し考えてから言った。

「あの…………わかりました!」

世の中には、深く突っ込んではいけないこともある。もう考えることはやめよう。私はそう心に決め、踵を返そうとした。

ブォン!ブォン!ブォン!ブォン!

「なに!?」

突然、部屋中に警報が鳴り響く。

「うなぁ!ゆすりちゃんの生体反応に変化が!」

ついに喋りだしたうなみ先輩。彼女はモニターに食いつくように近寄ると、キーボードを叩き始める。

「全員、警戒態勢に入って!シールド展開!」

弥恵先輩はそう言うと、どこからか取り出した段ボールを盾にして身を隠す。なんとなく私もその段ボールの後ろへと隠れる。弥恵先輩は覗き穴からゆすり先輩を凝視している。

「なにが起きるんですか?」

私が尋ねると、彼女は深刻な顔をして言った。

「わからないわ。でもゆすりの行動によってこの部の活動が始まるのは確かよ」

うん。ずっと何言ってんだこの人。私は状況について行けなかったが、ここからかなり、すごいことが起きるということだけはわかった。

警報の音は徐々に早くなり、部屋がガタガタと揺れる。うなみ先輩も物凄い速さでキーボードを乱打している。そしてついにその時が来た。

「ゆすりちゃん、動きます!」

揺れも音もピタリと止む。私達は息を殺してその様子を見守った。

「うみゅぅ……」

ゆすり先輩は右から左へと寝返りをうつ。



…………いや寝返りうっただけかよ!私は心の中で盛大にツッコんだのだった。

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