鈍感ぼっちくん ~今日も嫌々学校へ向かう~(カクヨムコンテスト版)
高たんぱくプロテイン君
第1話 ぼっちくん
今も眩しいほどの太陽の光が、窓の外から教室へと煌びやかに差しこんでいる。
そう。この昼休みという自由時間。それは本来であれば、この高校生活の中の淡い青春の一ページになりうる時間。
そんな、誰もが待ち望む昼下がりの時間帯に、今日もいつもの様に、クラスメイト達の楽し気な話し声や笑い声が絶え間なく聞こえてくる。
放課後にどこで遊ぶか、部活がだるいと言った愚痴、昨日見た面白いSNS動画の感想や共有、誰と誰が付き合っているかなどの恋愛話など。
その話題は人それぞれもちろん違うが、誰もが楽しそうな明るい雰囲気をその声色に含んでいるということに違いはないのだろう。
おそらく、昼食後のこの時間が嫌いな生徒なんてそうはいないはずだ。
俗に言う、輝いた空間というのは、まさにこの学園ドラマのワンシーンと言っても過言ではないような、この教室みたいな空間のことを言うに違いない。
しかしだ。
そんな煌びやかな空間の中で今日もしっかりと、自らの机の上で寝たフリをして時間を潰すイレギュラーで異質な男が、さっきからポツンと教室の隅には一人いる。
おそらく、その男の背中からはそれはもう陰鬱なオーラがにじみ出ていることだろう。そう。この教室でただ一人、この時間が今すぐにでも終われと思っている男のことだ。
「......」
まあ、もう薄々気づいているのかもしれないが、その虚しさ満載のイレギュラーな男とは、さっきから一人心の中でブツブツと呟いている
俺のことだ。
何故こんな楽しい昼休みという時間に一人で俺が寝たフリをしているのかって?
言わせるな。普通に友達がいないからだよ...。
現に今日も学校に登校してから他のクラスメイトとは一言も喋っていない
別にそれは今日が特別であるというわけでもない。
そう。それが俺、間宮健人のいつもの日常だ。
とりあえず、俺の高校生活、こんなはずではなかった。
寝たフリをするために学校に来るような人間なんてまずいないから。
そう。あの時のことを今でも昨日のことの様に思い出す。きっかけは今思えば些細で小さくしょうもないことだった。本当に、くだらないことだった。
確か、あれは入学後はじめての昼食の時間。
いわば、クラスメイトと親睦を深めることのできる初めのイベントといっても過言ではない時間。 俺はそこで失敗をおかした
次々と教室内で昼食を食べるグループができていくなか、俺も友達をつくる為に自分の前に座るクラスメイトに勇気を出して声をかけたのだが
「ねぇ、ちょっと良いかな?」
「無理」
そう。まだ何も言っていないのにも関わらず、誘う前から何故か俺は声をかけた前の席の男に断られてしまった。まさに秒。一瞬だった。
そして、結局のところ。俺が声をかけたその男は、俺の誘いを断った上で別のグループの輪に入っていった。
ただ、別にクラスメイトは声をかけた彼一人では当然ない
あんなにもはっきりと断られてしまったことには少々驚いたが、気持ちを切り替えて俺はすぐにまた別のグループへ向かい声をかけた。
今度はお互いの机をくっつけて和気あいあいとする4人組のグループだった。
次こそはと自らの椅子を片手に「俺も一緒にいいかな」と彼らに笑顔で声をかけるも
「.....」
今度はまさかの無視。沈黙だ。
目は合っている。俺の存在を認識していないわけでもないのに誰も反応してくれない。
そこで、俺の心は完全に折れてしまった。
他にもグループはあるが、想定もしていなかった予想外の現実に俺は拗ねてしまった。勝手に、クラス全体から自分がバカにされていると思ってしまった。
だから、色々と諦めた俺は1人静かに席に戻って静かにお弁当箱を開けた。
すると、それと同時に席の近くからはある男の声がちょうど聞こえてくる。
「あーよかった。さっき陰キャに声かけられて焦ったけど、無事逃げきれたわ」
そう。声の主はさっき俺の誘いを断った俺の前の席の男。その人物だった。
そして、さらに追い討ちをかけるように俺の耳にはまた別の声。
「あいつ、1人で飯食ってるよ。ぼっちかよ」
ゲラゲラと俺をあざ笑うような嘲笑が聞こえてくる。
視線の先にはさっき俺の誘いを断ったグループの奴ら4人が俺に向けて意地の悪い笑みを浮かべている。
結果、そんな光景に俺は情けないことでしかないが、涙が出そうになっていた。
確かに俺は平凡だ。特別面白いことが言えるわけでもない。見た目も地味であることは自覚している。
ただ、それだけで、それだけの理由で、俺はこいつらに拒絶されたのかと。
俺がお前らに何かしたのかと。
そして、この時に拗ねてしまった俺は完全に自分の作った殻の中に閉じこもってしまった。当たり前だが、これが何よりも大きな失敗だった
俺を拒絶した奴ら以外にもクラスメイトはいるのだから、めげなければ、拗ねなければ、友達はできていたのかもしれない。
しかし、殻にとじ込もってしまった俺は、他人と関わることを諦め、ぼっちになることを自分で受け入れて選択してしまったのだ。
そしてその出来事から早1年、高校2年になった俺は無事に今もぼっちを継続中だ。
学年が変わり、環境が変わったにも関わらず俺は相も変わらず殻にとじ込もり続けてしまっている。こればっかりは完全に自業自得でしかない。
正直、俺はもう、この高校での3年間は完全に捨てるつもりだ。
別にいじめられているわけでもない。
そう。ただ空気として3年間我慢すればそれで済む話だ...。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます