魔王は勝利した

藍無

第1話 勝利

魔王は勝った。

今、この瞬間、魔王は勇者を倒した。

その場にコロコロと勇者の首が転がる。

「きっさまぁぁぁぁぁ!!」

勇者のパーティーメンバーが怒り狂って、俺の首を狙おうとしてくる。

無理に決まっているんだけどな。

こいつらは、馬鹿なんだろうな。

俺は、きらきらと希望に満ちた瞳が一番嫌いだ。

絶望のどん底に突き落としてしまいたくなる。

だから、この世の中で勇者パーティーが、そいつらを褒め称える人々が一番嫌いだ。

どうしようもなく憎悪の感情が這い上がってくる。

俺は、勇者パーティーメンバーを全員殺した。

「はあ。」

勇者。

こいつは死んでもなお俺を不快にする。

こいつらのせいで広間の赤い絨毯じゅうたんに、汚らわしい血がしみ込んでしまったではないか。本当に腹が立つ。

「アイ。」

俺は、広間の掃除をさせようと思い、メイドを呼んだ。

「はい、かしこまりました。」

まるで、こちらの言おうとしていることが分かっているかのようにアイは広間に転がる勇者一行の死体を片付け始めた。流石はアイだ。

俺は退屈なので玉座から降りて、魔王としての仕事を行おうと思い、執務室に『転移』で戻った。

すると、そこには執務室の書類をあさる白髪の女がいた。

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