第30話 7年ぶりだもんなぁ……愛しているよ、花蓮 花蓮Side

 私は鷹宮に抱きしめられていた。

 いつになく熱烈な愛を示されて、私は夢心地だった。



 夜も更けて、美梨の君を無事に青桃菊棟に送り届けた鷹宮は後宮に戻ってきており、私たちは寝殿にいた。



 この部屋は奥まっていて、月も見えぬ部屋で2人きりの時間を過ごせる。



 体も心も蕩ける。

 鷹宮に小さな口付けをいくつもされ、悶えた。



 照れたような瞳で、頬を赤く染め上げた鷹宮が私を見下ろしている。指を絡めとられ、私は鷹宮の煌めく瞳を見上げた。



 ふっくらとした唇が誘うように口付けをしてきた。



「今日、美梨を助けてくれてありがとう」



 耳元でささやかれて、鷹宮の色気にくらくらする。



「美梨の君に何があったの?」


「羅国と手を組んだ姫がいて、俺とその姫を2人だけにして閉じ込める手助けをしろと美梨に迫ったらしい」


「何ですって!?あっ、あの砂漠は羅国だったのね?」



 私はとんでもない騒ぎになった、と思った。



 今宵、美梨の君は、危うく男どもの手ごめにされかけた。鷹宮と無理やり姫をくっつけるのを断ったからだろう。



 なんという乱暴な……。

 許せない。



 一体、どの姫がそんなことを!?



「冥々と柳々だ」



 鷹宮はささやくような声で告げた。私は衝撃のあまりに固まった。



「冥々!?」



 あのお優しい茉莉姫まありひめが!?


「信じられないっ!何かの間違いでは……?」



 美しさと気立の塩梅がちょうど良いと言われて、選抜の儀第2位で、入内以来ずっと私に優しく接してくださったあの姫が!?



 うそでしょう!?

 何かの間違いでは……?



 長い髪をおろしてまあるい大きな瞳がキラキラとして、私に穏やかに話しかけてくださる茉莉姫。



 冥々の家の経済が厳しいという噂はやはり、本当なのだろうか。東の激奈龍に近い領地でありながら、西側の羅国と手を組んだなら、もしかして……?



「冥々は、激奈龍とも羅国とも手を結んだ可能性は?」



 私はふと口に出した。

 私の髪を撫でていた鷹宮の手が止まった。



 鷹宮は御咲の皇子だ。 



「羅国と手を結び、俺と茉莉姫を閉じ込め、俺に薬を飲ませて既成事実を無理やり作らせる……。その目論見に激奈龍も絡む?」



 えっ!?

 鷹宮に薬を飲ませて既成事実を作らせる?



 いやっ!

 怖い……。



 なんでそんな極端なことに?



「薬を使うという手は、激奈龍らしいな。羅国らしくない手だとは思ったのだ。それにしても、宮中は怖いところだろ?」


 

 鷹宮は私を静かに見つめて言った。



「俺が花蓮を好きなせいで、巻き込んでごめん。花蓮はつい最近まで俺に恋をしていたわけでもなかっただろう」



 私は笑った。



 これほどの凛々しく美しい顔の鷹宮が言うと、口説いているように聞こえる。



「怖いけど恋をしているから……平気」


 

 急に眠気が襲ってきて、私は目をつぶった。鷹宮のそばにいるとリラックスしてしまう。暖かくて心地よくてついうとうとしてしまった。



『激奈龍が欲しいのは、鉱山だ』



 父上の言葉が頭によぎった。



 では、海に囲まれて豊かな国であるはずの羅国は御咲の何を欲しがる……?



「花蓮、今日は疲れたろ……7年ぶりだもんなぁ……愛しているよ、花蓮」


 

 鷹宮の囁く声が聞こえて、私は頬に口付けをされて意識を手放した。



「春でも至極冷えるな……風邪ひくなよ」


 

 鷹宮が私に温かい布団をかけてくれているのが分かる。



 福分と凶分は隣り合わせ……。

 済々の母上はよく言っていたっけな。

 


 私は最高の福分を手にしたようだ。だが、それだけ凶分も大きくなるということだ。



 あれ?

 何が7年ぶりなんだっけ?

 わからない…。



 淡く美しい桜の咲く頃を無事に迎えられるだろうか。


 私の後宮での花嫁生活は、予期せぬ展開になったようだ。

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