前世のトラウマを消してあげてね(最高神はまだお願いをする)
確門潜竜
第1話 ロレンツィオは、王太子を殺害した
金髪の凛々しく、美しく、その魅力的な容姿は聖鎧を着こんでいてもわかる、女勇者サルビアは、ダンジョンの奥底の奈落の入り口に立つ、ロレンツィオ、黒髪の優しそうだが、地味な顔だちの戦士の前に立った。
「ロレンツィオ殿。私は、今まで何度もあなたに助けてもらった。魔王を倒せたのも、あなたの助力があったればこそだ。そ、そして、王太子を、あなたが殺していなければ、一服盛られ身動きができない私はあの方に凌辱されていたでしょう。
今度は、私があなたを助けたい。勇者として与えられた全てを捨てても、いや、我が命を捨てても、あなたを守る。だから、私とともに来てほしい。お願いだ。私は、あなたに死んでほしくはないんだ。」
彼女は必死に訴えた、懇願するように。彼女は涙さえ流していた。
彼女の傍らで大賢者ミケランジェロがハラハラしていた。あの時、ロレンツィオに教えられ、サルビアを救うために王宮に忍び込み、全裸で気を失っているサルビアを見つけ、毛布でくるみ抱きかかえた時、返り血で汚れたロレンツィオが王太子の首を持って立っているのが目に入った。
「大賢者ミケランジェロ殿、早く勇者様を連れていかれよ。」
とロレンツィオは声をかけた。
彼の背には、
「第六天魔王ロレンツィオ様は、王太子の首をかき取ったー!」
という叫び声が聞こえていた。
王太子は、好色で残忍で無能な、評判最悪の屑だった。誰もが、彼の死を知って、ホッとしたものだった。だが、それでも王太子である。その彼を殺害したロレンツィオは、国として許しておけるものではなかった。彼の捕縛またはその場での処刑が、捕縛・処刑隊の何度もの失敗の後、命じられた。
「そんなことをしたら、大賢者様を悲しませちゃうから、よしておくよ。それに僕は大したことはしていないよ。魔王討伐は君達の力さ。僕は、チームの一員としての、それだけの貢献さ。屑の王太子を殺してのは、簡単すぎて自慢にもならないよ。それでも、僕に恩を返したいというなら、大賢者様とイチャイチャラブラブしてくれたまえ。お互いの相思相愛の気持ちに正直になってくれ。それで、ベッドの上でくんずほぐれつ、上になり、下になり、いい声だして、幸せになってくれよ。あ、それからそこの魔法修道士長様と騎士団長様。勇者様達に何かしたら、国王陛下以下、王族全ての首が胴体から離れると言っておくようにね。」
サルビアとミケランジェロの足元にブルブル震えている魔法修道士長と騎士団長に向って言った。
「じゃあ、僕はこの奈落とやらに入る。どうなるかは分からないけれど、死にたくも、死ぬつもりもないけど、多分もう二度と会うことはないだろうから、これでお別れだ。あ、お二人方、念のために言っておきますがね、勇者様ご夫妻に何か不都合なことをしたら、絶対にここから這い上がって戻ってきて、それなりのことをしますからね。じゃあ、さようなら。」
ロレンツィオは、そのまま奈落と呼ばれる穴の中に入っていった。
「もう、あいつはいつもこうなんだ。」
大粒の涙を落とすサルビアをミケランジェロは優しく後ろから抱きしめた。二人の唇が重なるには、さほど時間はかからなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます