マッチングアプリ狂騒曲
@takahirohorii12
第1話 手記
彼は国立社会保障・人口問題研究所の生涯未婚率に関する統計を見ながら女性とあまり関わったことがないのに気づいた。それで男女の関わりに関する文章や結婚研究なることをやっている荒川氏の文章などを読みながらマッチングアプリでもやってみようかと思うに至った。
彼なりにはまっとうに生きてきたと自覚していた。学校の喧騒は少し辛かったが中学受験をこなしてそれなりの成績でやりすごし、教師連中とも友好的な関係を築いていた。
大学に行き、そこでもそれなりの成績で首席ではないが満足できるような位置にいた。ここには女性がいくらかいたがなぜか視界に入らなかった。学会で他の大学の人と交流していてもそうだった。存在しているかもしれない、だがなぜか意識に入らなかった。
そこからある大企業の研究職として働くことになった。楽しい。その一言に尽きる。それだけが救いだった。
自宅近くを散歩していると大学生らしき男女がなにか卑猥なことを話しているのを偶然聞いた。不愉快というより理解ができなかった。その会話を成り立たせている要素がよくわからなかったのだ。そこからだ女性の性的な側面に興味を持ったのは。
そこから視界に女性が入るようになった。どのように生活しているのか、トイレはどうしているのか、入浴はどうしているのか、どのようにものを食べているのか、どのように着替えているのか、体をどのように動かすのか、どのような金の使い方をしていてどのように文化的な生活をしているのか、など頭の中に様々なものがぐるぐる回ってきた。
それで思った巷で使われていると思われるマッチングアプリを使って直接女性に会ってどういう生態をしているのか確かめてみればいいのではないかと。
早速料金を払い、登録した。写真を貼るところがあり自分の写真を貼った。そこから相手を見つけるフェースに入った。スクロールすればいいらしい。しかしどのように相手を判断すればいいのかまるでわからなかった。写真だけではどうにもわからない。そもそも顔を載せない人がいるので女性かどうかもわからない。いくらか時間を費やしたあとどうしようもない徒労感を感じていた。
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