頭からつま先まで

ほしのしずく

第1話 私は貴方に恋をした。

 私は貴方に恋をした。


 あれは高校生の頃、私が友達を下校していた時、部活終わりの貴方がいきなり告白をしてきたことがきっかけでしたね。


 初めは、変な人という印象しかありませんでした。


 けれど、恋人という存在への憧れ。


 若かったということ。


 そして目の前で懇願する貴方の熱意に負けてしまい、付き合うことになりました。


 初めはその子供のようにクシャとした無邪気な笑顔に惹かれ。


 相反する私の手を包む大きなゴツゴツした手にドキドキし。

 抱き締められた時には、何とも言えない安堵感と幸福感が私を満たしていました。


 仕事を勤め上げ、ソファーでコーヒーを飲む貴方には、若い頃のような誰もが振り向くカッコ良さや、力強さはないけれど。


 笑顔や私を気遣う所は、一緒ですね。


 もうお婆さんになってしまったので、恥ずかしくて口には出したくありませんけれど。


 頭からつま先まで、愛しく想います。


 ずっとそのままで笑顔を咲かせて長生きして下さいね。


 かつて美少女だった貴方の伴侶より。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る