2章: 身体の声を聞く(身体の浄化)(後編)

▢▢▢ 光への道 ▢▢▢


 数週間が過ぎ、山中健吾やまなかけんごは「浄化の書」に書かれた教えを日々実践していた。瞑想を重ねるたびに、心と体のつながりが少しずつ見えてくる。


「体がこんなに正直だったなんてな…」


 肩の痛みが和らぎ、かつての疲労感も少しずつ薄れていく。しかし、それは簡単な道のりではなかった。新たに浮かび上がった感情や記憶に向き合うたび、健吾の心は揺さぶられた。


▢▢▢ 試練のとき ▢▢▢


 ある日、健吾は瞑想の最中に、過去に経験した最も苦しい記憶と向き合うことになった。それは、病気の発症後、最初に仕事を辞めざるを得なかった日のことだった。


「俺は無力だ…何もできない人間なんだ。」


 その時の感情が鮮明に蘇り、胸が締め付けられるようだった。涙が頬を伝う中、健吾は「浄化の書」の教えを思い出した。


「感情は否定するものではなく、受け入れ、感謝し、手放すもの。」


「これも俺の一部なんだな…ありがとう。そして、さよなら。」


 そう心の中でつぶやくと、胸の苦しみが少しずつ解けていくのを感じた。


▢▢▢ 新たな選択 ▢▢▢


 心の中の重荷が減ったことで、健吾は次第に未来について考える余裕が生まれた。ある朝、彼はふと思い立ち、かつての友人に連絡を取ってみることにした。


「久しぶりだけど、元気にしてるか?」


 健吾のメッセージに返ってきたのは、思いがけないほど温かい返信だった。彼らとの再会を通じて、健吾は失ったと思っていたものが、実はまだ手の届くところにあることを知った。


 その日、健吾は「浄化の書」の最後の章を開いた。


「浄化とは、過去を手放し、未来へと歩むための準備である。真の癒しは、行動によって成し遂げられる。」


 その言葉に、健吾は深くうなずいた。


▢▢▢ 光の中へ ▢▢▢


 数日後、健吾は新しい挑戦を始めることにした。それは、地域の健康サポートグループに参加し、自分と同じような経験を持つ人たちを助ける活動だった。


「自分の体験が誰かの力になるなら、それが俺の生きる意味になるかもしれない。」


 かつては病気に囚われていた健吾だったが、今ではその経験を光に変え、新たな道を歩き始めていた。


 「浄化の書」との出会いは、彼にとって心と体をつなぎ直す旅の始まりだった。そしてその旅は、これからも続いていく。


▢▢▢ 完 ▢▢▢


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浄化の道標(再生への五つの扉) 三分堂 旅人(さんぶんどう たびと) @Sanbundou

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