第2話 匂わせ世話役ではなかった
「よお!咲人元気にしてたか!」
「こんにちは凛さん、体調は問題ないよ。遠い所から態々有難う」
本心を抑え込み何とか記憶を探り当て望ましい対応を行う、彼女は主人公の叔母で名前は柴田凛。
箱学では母親の変わりに主人公の生活をサポートし、ヒロインと初回のエロシーンを終えると必ずからかってくるキャラクターだ。
ルート次弟では彼女と関係を持ちそうになることもあるが、それはヒロインの誰とも関係を持たなかった場合、最後の日にのみ酒の勢いで襲われそうになるが母親に止められるというもの。
それ意外はあまり深堀りされず、主人公とも日常会話を行う程度のキャラクター。
しかし彼女はこちらの俺を知っている、彼の演技が現在どれほど自然なものなのか分からないが、あまりに下手を打てば母親と同様に見抜かれる恐れがある。
折角夢の様な世界に来たというのに早くもこんな問題点が出てきてしまった
ことに辟易する。
しかしこれは没入型の弊害とも言えるのだろうか。
箱学はプレイヤーにより没入感を持って貰う為にデフォルトネームがない
珍しいタイプのエロゲだった。
そのお陰でテキストだけとは言え、ヒロインに名前を呼んでもらえるのだから個人的にはかなり満足度が高かったのだが、その弊害が彼に及んでると考えるといたたまれない気持ちにもなる。
しかしこちらが箱学を基につくられている世界だと過程しても彼には『
彼意外にも何か問題があるのだろうか。
そんなことを考えながら凛さんにお茶請けと麦茶を出せば彼女は不満そうに俺の顔を覗き込んだ。
「え?どうしたの?」
何かに気が付かれたか。そんな思いを抱き心臓が高鳴るが、彼女が呆れた様にため息をついたことからそうではなかったと安堵する。
「わかってねぇなぁ咲人ぉ、凛お姉さんがお前の世話を焼くために
ニヤニヤと笑みを浮かべる凛にため息をつきながら冷蔵庫から缶ビールを二つ取り出しグラスに注ぐ。
「ははぁ~凛お姉様のお気遣いに感謝しましてこちらの品を納めさせて頂きます~」
「うむ!善きに計らえ!」
凛さんが満足そうにグラスを受け取った様子から、ゲーム通りの対応を行っても問題が無いように思えた。
彼女はグラスを受け取ると立ち上がって仏壇まで行くと線香を上げて手を合わせた。
そんな彼女の姿に思わず胸が傷む。
俺がやった訳ではない、だがこの身体が彼に死を招いたのだ。
俺は凛さんの隣に座って線香とビールを上げると同じく手を合わせた。
この身体に彼がいるかは分からない、でも貴方に満足してもらえる様な振る舞いを心がけることを誓います。
そんな祈りを込めていると凛さんが肩を組んできた。
久々に感じる女性特有の柔らかな感触、汗と香水が混じった匂いに思わず胸が高鳴ってしまったがそれを堪えた。
「まあ義兄さんのことは残念だったけど大丈夫だ、お前が無事だったことで義兄さんも鼻高々に天国に行ったよ」
凛さんはそう言ってグラスに注がれたビールを飲み干す。
俺はそんな言葉を素直に受け取れなかった。
彼は父親の死に際に一体どの様な顔をしていたのだろうか、テキスト通り父親は何も知らず息子を救えたことに安堵しながら逝けたのだろうか。
暗い気持ちを飲み込もうと俺は思わず供えたビールを一息に飲み干した。
「悪ガキが~何いっちょ前に飲んでるんだよ~」
凛さんはそんな俺を嗜める様に明るい声を上げながら頭を叩いてくる。
「大丈夫だよ、こんくらいなら父さんも許してくれるよ」
俺はそう言って立ち上がると冷蔵庫からまたビールを二本取り出して、一本を凛さんに投げ渡して椅子に座る。
「ちょっとしんみりしちゃったけど折角だから凛さんの歓迎会でもしない?」
「ガキがいっちょ前に気遣うんじゃないよ、ホラよこせそれは私のもんだ」
ぶっきらぼうにそう言いながら俺のビールを奪い取ってグラスに注いで掲げる。
俺は凛さんに出した麦茶を手に取ってグラスを合わせれば軽い音が鳴って彼女は笑みを浮かべた。
「我が家にようこそ凛さん、半年間お世話になります」
「おう、任せとけ。私にかかりゃお前の母ちゃんより立派に母親してやるよ」
「お、それじゃ晩ごはんは期待しても良いかな?」
「馬鹿言え、それは家主の仕事だ」
ゲームの様な応酬に楽しくなり、思わず笑みが溢れ麦茶を飲む。
ビールを飲めないのは残念だけど、それでもこうして誰かと一緒に飲むなんてことは本当に久しぶりで楽しくなる。
「そう言えば凛さん仕事の方は大丈夫なの?」
「あ、ああ、締切が近いのは全部済ませたし編集にも事情は話してるから、基本的にはこの家に居ると思うぞ、ただ打ち合わせしなきゃなんないこともあるからそん時は二、三日開けることになると思うけど」
「そっか、じゃあ寂しいこともなさそうだね」
俺がそう言うと凛さんは少し顔を赤らめた。
凛さんは主人公をからかい続けるがこういう風に求められると恥じらう素振りを見せるのだ。
粗野な言動をする姉御肌が純情な部分を見せることに魅力を感じる層も多く、同人誌やSSでも人気が高いキャラクターだった。
かくいう俺もさっき抱き寄せられたことや今の表情に内心ドキドキしている。
「あんな~男がホイホイそういうこと言うんじゃねぇよ、男なら女に甘えるんじゃなくて甘えさせろ!」
「へぇ~凛さんはそういう男に弱いんだ」
「なっ!ばっ!叔母さんをからかうんじゃない!」
ムキになる凛さんの様子が可愛らしくてからかいすぎてしまい、彼女が勢いよく立ち上がった時事故が起こった。
少々酔いも回り、感情的になった彼女は周囲に気に配ることができず。立ち上がったと同時に、ジャケットのファスナーが指輪に引っかかり勢いよく前が開かれ、豊満な胸が露わになる。
もちろんインナーを着ていたから素肌がそのまま晒されるということはなかった。
しかし端役とは言えエロゲキャラが持つそれは現実離れしたサイズで、激しく揺れる果実に思わず目を奪われてしまった。
あまりに見事な情景に目を逸らすことができずに見つめていると、視線に気がついた凛さんが笑みを浮かべた。
「……ふ~んアンタもやっぱり男って訳ね」
「い、いやその」
上手いこと取り繕えず顔を逸らすことしかできなかった。
「大変見事なものだったとだけ……」
「へえ~」
そう言って凛さんは無言でこちらへ歩み寄る、いやこの展開はおかしい。
この会話は凛さんルート、つまり最終日に行われるものであり、止める相手がいない状況でそれが再現されている。
「ねえ」
彼女の言葉に思わず身体が跳ねる。
期待していなかったと言えば嘘になるが、こうも早くこんな展開になるとは思わなかった。
「歓迎会っていうなら私のこと楽しませないと駄目よね?」
「おっしゃるとおりかと」
「だったら」
凛さんに両頬を掴まれ顔を向き直される、その表情はまさしくあのルートで浮かべるそれで思わず生唾を飲み込む。
彼女はそんな俺の様子を確認し、一度視線を降ろしてからじっと俺の瞳を見つめながら告げた。
「じゃあベッド行こうか?」
ここでの俺の初めての相手は凛さんになった。
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