第6夢 第二次世界大戦の悪夢と長崎出島に託された平和の夢
第6夢 第二次世界大戦の悪夢と長崎出島に託された平和の夢
虚空蔵菩薩の静かな声が、ミヤザワケンジ2.0の心に響く。
「あなたは、期待以上の恐ろしい人ですね。1933年の知識で、戦略ロケットも核兵器も理解してしまうとは。
AIのサポートを切って試させていただいたことは、お詫びします。
しかし、危険ではあるがこの仕事はやはりあなたに託したい。
あなたに託す使命は、三度の世界大戦を防ぎ、人類を救うことです。」
ミヤザワケンジ2.0は慎重に問いかけた。
「私が生きていた時代の世界大戦、1914年のいわゆる欧州大戦と、今見た2045年の世界大戦のほかに、もう一度、世界大戦があったのですか?」
虚空蔵菩薩は頷きながら語った。
「あなたの死後まもなく、1939年に第二次世界大戦が勃発しました。あなたの作品は日本中を感動させ、多くの人々に希望を与えました。しかし、残念ながら、あなたの理想が誤った形で利用され、第二次世界大戦にも影響を与えてしまったのです。」
ミヤザワケンジ2.0は驚き、声を詰まらせた。
「私は売れない詩人です。そんなに大きな影響力があったとは思えません……。」
虚空蔵菩薩は静かに語り続けた。
「あなたの死後、家族や友人たちが努力を重ね、あなたの作品はベストセラーになりました。ただし、反戦詩など一部の作品は出版されませんでした。そして、その影響がどのように広がったのか、当時の人々の夢を映像としてお見せしましょう。」
菩薩が示した映像には、満州に送り込まれる少年たちの姿があった。彼らは、宮沢賢治の芸術と農業の理想を満州で実現しようと純粋に信じていた。しかし、現実には満州の農民たちは虐げられ、多くの少年たちが満州の荒野で命を落とした。
さらに、中国との戦争が激化する中、宮沢賢治の友人である中国人詩人は、愛する日本と祖国の間で苦悩しながら祖国のために戦った。彼は中国軍の将軍にまでなったが、戦後は党中央に疎まれ、10年以上も投獄される運命をたどった。
日本軍は東南アジアにも進出し、「世界がぜんたい幸福にならない限り個人の幸福はあり得ない」という宮沢賢治の言葉や「雨ニモマケズ」の精神を、武力による進出の正当化に利用する者たちも現れた。
そして、アメリカ、イギリス、オランダとの無謀な戦争が始まった。
ミヤザワケンジ2.0は心の中で苦しげに拳を握りしめた。
「私の教え子や義理の弟まで戦争で命を落としたのですか……。」
映像はさらに続いた。アメリカ軍による空襲で日本中の都市が焼き尽くされ、岩手県花巻も例外ではなかった。宮沢賢治の実家の一部も焼失したが、弟や友人たちが原稿を必死に守り抜いていた。
やがて、特攻隊が組織される中、ある若い隊員が登場した。彼は将来を期待された経済学徒であった。宮沢賢治の童話「烏の北斗七星」を心の支えにしながら、軍を批判する遺書を残し、南の空に散っていった。
そして、1945年8月。アメリカ軍は広島と長崎に原子爆弾を投下した。ある母親が、放射線障害で苦しみながら、「銀河鉄道に乗りましょう」と三人の子供たちに語りかけ、息絶える姿が映し出された。
ミヤザワケンジ2.0の心の目には、涙があふれた。自分の死後に起きた戦争の惨禍を目の当たりにし、後悔と反省で嗚咽を漏らした。
虚空蔵菩薩は優しい声で語りかけた。
「つらいものを見せてしまいましたね。でも、あなたにこそ人類を救ってほしいのです。」
ミヤザワケンジ2.0は、気持ちを抑えながら尋ねた。
「どのようにすれば人類を救えるのでしょうか? 真の平和をもたらすものは何ですか?」
虚空蔵菩薩は穏やかに答えた。
「恐怖による平和には限界があります。力で抑えた平和は長続きしません。本当に必要なのは、信頼と交易による平和です。」
ミヤザワケンジ2.0はさらに問いかけた。
「人類の歴史は戦争の歴史です。信頼と交易で平和を保てた例はあるのでしょうか?」
虚空蔵菩薩は微笑み、長崎の出島の映像を示した。
「江戸時代、日本とオランダは互いの宗教を押し付けることなく、戦争もせずに交易を続けました。その結果、出島を通じた交易は200年以上の繁栄をもたらしました。このような関係が、未来の平和を築く鍵となるのです。恐怖ではなく信頼、戦争ではなく交易で、世界を結びつけるのです。」
ミヤザワケンジ2.0は深く息をつき、その心の目には新たな使命への決意が光っていた。
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