こちら王立冒険者【再就職】支援ギルド!!~無能冒険者さんいらっしゃいませ!中堅冒険者のオレが究極ダメ冒険者といっしょに社会復帰をサポートします!?~
第十話 『治安維持のための冒険者雇用!?』 その16
第十話 『治安維持のための冒険者雇用!?』 その16
シオンの選択が得られるよりも前に、晩飯の準備は出来ちまった。パンだけじゃないぞ、春野菜のスープと、ミートボールのトマト煮込み……ごちそうになるコトにしたんだ。パンを焼くのを手伝ったしね!
子供たちといっしょにメシを食うのは、楽しかった。うるさいし。イタズラする。この騒がしい雰囲気が、どうにも心地よかったのは事実だよ。「魔王戦争時代の遠征を思い出しているのね」。教官たちとのキャンプもね。ガキの頃、訓練がてら……ドミニクやティナたちといっしょにキャンプした。ノリが、酷似しているよ。
料理の味もいい。
プラナがメインで作っているようだが、さすがだな。おしとやかな女子で、料理が上手いとか……「男が好きそうよね」。料理が上手なヤツは、だいたい尊敬しちまうものさ。
オレも、もっと上手になりたくもあるが。多少の雑味があるんだよね。「野蛮なトコロが出ちゃうのよね、男の料理っていうものは」。そうだな。どこか、それでいいと思ってしまうと、成長に向かなくなっちまう。「思想というのは、厄介よね」。
「お口に合いましたか?」
「うん。とっても美味しい。子供たちは、幸せだよ。プラナの美味しい料理をいつも食べられる」
「そ、そうだと、私も嬉しいですっ!」
楽しい食事の時間を過ごした。考え込んでいる様子のシオンが、気にはなったけれど。
まあ、彼女の答えは……。
「ハハハ! ミートボールを賭けて、勝負だ!!」
子供の叫びじゃなかった。レフト・ウィルソンだ。教師でもある彼らにも、晩飯が支給されているらしい。栄養バランスがしっかりとしたプラナの手料理を食べた方が、安食堂の雑な晩飯より健康に良さそうだから、居ついちまっているのかも。「さわがしいわね。子供たちと、遊んでるわよ。ダイスで」。
賭博みたいだよな。
「ほら! 21だ!」
賭博っぽいが、賭けてるのがミートボールならば、問題はないんだろう。一応、釘は刺しておくかね。
「子供たちからメシ、巻き上げんじゃないぞ」
「巻き上げられてるのは、オレも同じだ! そもそもこいつらは三食も食べているんだが、オレなんて、二食程度……つまり、オレのが必死なんだよ!!」
「レフト先生、ガリガリでヒョロヒョロだもんな。ほんとうに元・冒険者なのか怪しいんだ」
「ガリガリなのは、貧困のせいだ。冒険者時代は、もうちょっと筋肉があったんだぞ」
「貧乏なんだ。共同経営者なのに」
「いい会社の経営者なら、リッチだ! ちいさなトコロは、こんなもんだよ!」
「勉強できても、貧乏にしかならないってコト?」
「ハハハハ! ちがうな。貧乏になるかどうかは、運だ。ダイスと同じ。しかし、賢くなければ、そもそも起業もやれないだろう。銀行を口説く必要がある。あるいは、騙す必要があるんだ。金の専門家を、騙すんだぞ?」
聞こえの良くない言い方じゃあるよな。「でも、言っている意味は正しいわね」。そうだっけ?
「銀行から金をぶんどる必要があるんだ。そのためには、事業計画書だとか、まあ、諸々の書類が必要だ! お前、プロの金貸しを説得するための文章の文字が、汚いのと、キレイだったら、どっちが信用できそうだ? どっちに金を貸す? バカと、賢いヤツの」
「……バカには、貸さない!」
「そうだ! バカにはな、金を貸したくないんだよ! そこが、バカが人生でフリなトコロのひとつだ。教養には、本来、金がかかるもんだ。しっかりと勉強できてるヤツは、家も『太い』可能性がある。銀行は、地位も見るんだ」
「オレたち、孤児じゃん」
「そうだよ。貧乏だ。しかし、賢いだけでどう思われる? 有能なのかもしれないと思われるんだ。金持ちのクソガキに貸すのは、『しょうがないから』だが。『賢く有能そうなヤツに貸す金は、ガチなんだ』。ちゃんと、貸した金以上に、戻ってくると期待している! 誰でもない、オレが言うんだから、間違いはない!」
「賢かったら、商売がうまく行くかはともかく……最初の金を、銀行からぶんどれる?」
「そのとおりだ!! それが、世の中ってもんだよ!! ミートボールを食われた甲斐があったな!! その理解は、ミートボールが1トン以上買えるほどの金に値する知恵だ!」
ビジネスの視点を、子供のころから教え込むのは、孤児院の子供たちにも有益かもしれない。「実際、身に着けられるかはムズカシイでしょうけれどね」。それはそうだ。だが、それは、金持ちのボンボンにもそうだし、粉屋の息子だってそう。
でもね。
ドミニクとか、賢い子が聞いていたら。この種の知識をマジで活用しまくって、商人になっちまうと思うんだよ。「そうかも。ドミニクは、レオよりもずっと賢いものね」。
「可能性ってさ、伸ばしてやるべきだよな」
「で、ですよね」
「レフトや、ライトもだけど。ちょっと変わってる連中だ。でも、どっちも賢くはあるし、行動力がスゲー。王都でくすぶってたオレよりも、ずっと早く……しくじりかけたけど、会社を興して……スゲー連中だなー」
「そうですね。少々、特殊な指導方法の気もしますけれど……銀行を騙すなんて言い方は」
「そこらは他の先生たちでバランスを取るしかないな。君や、シオンや。オレたちも。もっと、いろんな価値観を知っておくと。それだけ、可能性を伸ばせる」
「……その言い方。可能性を伸ばせるって言い方。すごく、ステキですよね」
「そうだろ。それぞれに才能や、好きなコトがあってさ。それを、伸ばせられたら、最高だよな」
わかっちゃいるとも。何でもかんでも、夢や希望が叶えられるとは限らないって。夢は弱者が見るものだとも。それでも、叶えちまうヤツが、たまにはいるんだ。
オレたちにやれるのは、可能性を守って、伸ばしてやるコトか。そのためにも、やっぱり。内戦だとか、治安の悪化とか、貧困とか……もろもろ、がんばるしかねえな。「無限の困難を見つけたのね。冒険者が、最も得意とする道だわ。がんばりなさいな、レオ」。
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