第九話 『傭兵ブーム到来!?』 その60/正義のための力って!?


 国境周辺での暮らしは、想像以上に冒険者じみていた。魔王戦争時代は、辺境の土地どころか、モンスターがうろつく地獄みたいな場所で野宿しまくっていたけれど。


 この平和な三年間で、街のなかで暮らすという行為になれてしまっていた。


 ムダに寒いし。


 人のいない山間部の夜は、ほんとうに物悲しさがある。


 敵がうろついていれば、まだ気晴らしになるけれど。実際は、そうじゃない。まったく何も起きないんだ。


 それなのに、油断もできない。


 いつ、ファーガルとの国境を越えて、敵が押し寄せるかわかったものじゃないから。


「魔王戦争時代のほうがっ」


「人類同士の争いは抑止されていたんですっ」


「下手に人類同士で争ってしまうと……っ」


「魔王軍に滅ぼされてしまうリスクがありましたからっ」


 国境警備は、かつてよりもずっとムズカシイようだ。


「ファーガルもそうですがっ」


「どこの軍隊もそうですっ」


「傭兵も、騎士団だって……っ」


「国内にさえも、戦争を企む勢力はいるわけですっ」


 歴史について教えてもらった。よく考えれば、当たり前のコトだけど。歴史って、戦争の山だった。どこの国がどこの国と戦って、どっちが勝って、どう奪ったのか。


 ほとんどのページがそれらについて記されているのが歴史書だもんね。


 その戦争の半分は、敵国から攻められたもので。


「残りの半分はっ」


「もちろん、内戦によるものですっ」


「強いリーダーがいなくなったときなどっ」


「支配力の『空白』が生まれたときに、内戦は起きますっ」


 今は、王さまが元気だから、『まだこれぐらいの衝突ですんでいる』のだと、エンデバー姉妹は教えてくれた。


 それが、真実なのか、考えすぎた……『傭兵脳』の傾き過ぎてしまった意見なのかは、ちょっと判別がつかないトコロがあるけれど。


 あながち、ウソとも言い難い。


 王さまに対して、ほんとうの意味で忠実なのは、王国騎士団ぐらいかもしれない。オレたち冒険者は、どこか反発していたし。貴族も、騎士団も、傭兵も……。


「マクシミリアン王子が、冒険者ギルドを解体したがったのは……っ」


「現状の混沌とした勢力関係を、ちょっとでも解消したかったから……っ」


 オレの立場としては、『絶対ありえない』わけだけど。


 マクシミリアン王子さまからすれば、そうなるようだ。冒険者という『力』がいると、王国を不安定にしかねない、と。


「冒険者は、強いですからっ」


「力は、横暴さを許容してしまいますっ」


「願いや、夢や、野心を……っ」


「叶えてしまう怖さがある……っ」


 世の中ってのは、弱肉強食であるべき……らしい。弱い連中が、強い連中を引きずり落とすコトを嫌っている連中もいる。


「平和というものは、安定しているコトっ」


「秩序にしたがって、下剋上がないという状態なのですっ」


 それは。


 率直に。


「はい。一部の方々は、こう思われるのですっ」


「『つまらない』とっ」


 夢を叶えるのは、いいコトだと思っている。疑いの余地はないと。でも、平和な時代って、一部の夢が叶わなくなる状態でもあった。


 魔王がいないから。


 勇者になれない。


 辺境の貴族や騎士団は、ただ疲弊していきながら。


 中央や王さまのために、尽くすだけ……。


「争いごとが起きなければ、貧しい者は永遠に搾取されるだけですからっ」


「争いごとが起きて、勝利があれば、貧しい者が豊かになる日も訪れるっ」


「……もっと、みんなで協力して、みんなで豊かになればいいと思うんだ」


「理想ですねっ」


「正しいけれど、人は正しいコトばかりできませんのでっ」


「戦士は、備えておくべきですっ」


「守るべきモノを、守るためにっ」


 その守るべきモノってのが、人によってそれぞれに違うから。みんな、ぶつかり合ってしまうのだろう。


 王さまが、いれば。


 今のところ、安定している。


 でも……。


「今の王さまが亡くなられたときっ」


「ルクレート王国は内戦になるかもですっ」


「……ヴィルヘルム王子さまが、継ぐらしいぜ」


「ファーガルに婿入りした方ですのでっ」


「その時点で、反発する人々はいますっ」


「……マクシミリアン王子さまなら?」


「ヴィルヘルム王子さまや、その義父であるっ」


「ハーマン・ローが、介入の口実を得るかもしれませんっ」


「ヴィルヘルム王子さまが王になれば、内戦。マクシミリアン王子さまが王になれば、ファーガルとの戦争……」


「王さまと、王子さまたちがっ」


「王位の継承を問題なく行えればいいのですがっ」


 王さまの言葉が、アタマに浮かんだ。『倒せ』。革命を起こしてもいいから、人々を戦争の苦しみから救えという意味だと思う。


 だから。


 戦争のプロフェッショナルに聞いてみた。


「……そうなったとき。オレは、どうすればいいと思う?」


「乱世で必要なのはっ」


「旗幟鮮明であるコトっ」


「何のために、剣を取るのかはっ」


「しっかりと、ご理解されているべきですっ」


「……人死にが、最も出ない結論を選びたい。それだけのときは」


「その意志を貫くための『圧倒的な軍事力』をっ」


「その手に持っていれば、願いを力で叶えられるでしょうっ」


「レオンハルトご主人様っ」


「我らは、そのとき。貴方の剣になるでしょうっ」



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