第九話 『傭兵ブーム到来!?』 その59/監獄とボードゲーム!?


 いくらかの『国境警備騎士団』の騎士は逃亡させてしまったものの、拉致されていた王国騎士団のメンバーは無事に助け出したし……団長親子と傭兵たち、つまりは『反乱分子』も拘束した。


 山城の地下牢に、彼らをぶち込んだまま。


 二日間を過ごす。


「捕虜さんたち、ゴハンできましたっすよー! 勝手にキッチン使わせてもらっているっすけど、味は、絶対に美味しいっすからね!」


「……かたじけない」


「エルフの姉ちゃん、オレたち傭兵は大食いなんだから。大目によそってくれよ!」


「はいはい! たくさん食べて元気になるのはいいっすけど、ケンカはなしっすよー!」


「それぐらいしか、下っ端には遊びもねえのに?」


「本でも、よ、読めばいいんだよ。賢くなったら、も、もっとマシな生き方がやれるかも」


 ちゃんと、王立冒険者【再就職】支援ギルドとしての職務も、我が妹は守ってくれている。


「オレたちに、本かー」


「字を読めないヤツも、多いんだぜ」


「同じ牢に入っているんすから、騎士さんたちに勉強でも教えてもらえばいいっすよ。大学出が多いから、インテリさんたちなんっすからね!」


「勉強そのものが苦手だ」


「バカなんだよな」


「……傭兵め」


「食い方も、下品ときている」


「はあ!?」


「やんのか、騎士野郎が!!」


 ……『お互いを監視させる』ために、騎士たちと傭兵たちを同じ牢にぶち込んでいたりする。シデン・ボニャスキーのアイデアだった。


 騎士たちだけだとか、傭兵たちだけで集めていたら、脱走計画だとか、もっと露骨なことにオレたちを閉じ込めて砦を支配するかもしれない。


 なかなか、よろしくない状況だろ。


 だから、ケンカし合うリスクがあったとしても、こうして同じ牢にぶち込んだわけだ。改善点は、あったかもしれない。


「仲良くするっすよ。それが、平和のため」


「そうだよ。よ、傭兵さんたちも、協調性を見つけられたら……お、王さまが雇ってくれるかもだから」


「マジか?」


「王さまは、オレたちみたいなの嫌いじゃね?」


「シデンが、い、言っていたの。誰かが国境警備を維持しないといけない。こ、『国境警備騎士団』がトラブルを起こした以上、傭兵さんたちにもチャンスあるかもって」


「悪くないな」


「でも。騎士野郎たちといっしょに、国境の見回りをするってのか……」


「聖なる任務に、このような男たちを」


「……命令だとしても……不満はある」


「はいはい。同じゴハンを食べてれば、そのうち仲良くなるっすよ。男子って、そういう単純な動物さんたちっすから」


「我々を誤解している」


「そんな単純じゃ、ねーんだからな」


「じゃあ。い、いっしょに。遊んだらいいよ」


「遊ぶだと?」


「牢のなかで……?」


「これね。れ、レフト・ウィルソンと、ライト・トーマスが作ってる、ぼ、ボドゲだよ」


「ぼどげ?」


「ボードゲームか」


「うん。な、なってみたかった人生を、演じられるゲーム。普通に、け、けっこうおもしろいから、牢屋のなかでも遊べると思うの」


「うちのギルドの公式なグッズなんすよ! 元・冒険者であるみなさんの再就職を、熱烈応援するのが王立冒険者【再就職】支援ギルドのお仕事なんすからね!」


「対戦要素も、あ、あるから。仲が悪いなら、それで勝負するといいよ」


「わかった!」


「メシ食ったら、そいつで白黒つけてやるからな!」


「いいだろう!」


「完膚なきまで打ちのめしてやるぞ!」


「まあ、さ、サイコロの出目しだいのトコロもあるから。賢くても無双はできないよ。い、いいゲームバランスなんだ」


 レフト・ウィルソンとライト・トーマスの……そして、ケネスのアイデアもしっかりとつまったボードゲームは、牢屋のなかの男たちの暇つぶしには、実に適していた。


 牢獄に売るのも、ありかもしれないな。


 囚人たちもヒマだろうから、何か遊びがあれば、暴動とか脱走とか企てにくくなるかもしれない。


 まあ、オレとロッドが看守のように彼らの全員を見張っているから、脱走なんてさせはしなかったけど。ボドゲの可能性を、またひとつ感じたな。


「もう一勝負だ!」


「こ、今度は騎士側の勝利となるのだからな!」


「晩飯の唐揚げかけようぜ」


「乗った」


 暇な野郎には、遊びが必要らしい。騎士団や傭兵相手にも、販路を広げられたら……もしかすると、レフトとライトは大儲けしちまうかもしれん。これがなかったら、もっと荒れていたと思うんだ。おかげで、看守役をやるのが楽で良かったよ。


 もちろん。


 大変だった方々もいたわけだが。


 いちばん露骨なのは、マリカーネ・フラッコ先生だったのは言うまでもない。


「ケガ人ばかり作って。ほんとうに、アホばかりよね」


「す、すみません、先生……」


「うう。いてえよお。さっさと、回復魔法かけてくれよお」


「痛いのが嫌なら、襲撃とか拉致とか……戦うんじゃないの、アホどもめ!」


 美女にプンプンの説教されながら治療される。


 一部の男たちには、悪くない体験だったハズだな。それで懲りるかどうかは、また別腹なのが不毛なトコロだけど。


「私も多少の回復魔法が使えるようになっていて、良かったぞ。マリを手伝えるから」


 クレアもがんばっていた。魔神から授けられた回復魔法のおかげで、軽症者の治療をやれた……まあ、魔力がすぐに切れちまうから、マリのサポート役という域を抜け出さなかったが。いてくれなかったら、マリは激務の果てに、激怒していただろう。


「メイドらしくっ」


「お嬢さまたちをっ」


「お手伝いっ」


「何なりと雑用も思うしつけくださいっ」


 ミケとニケも器用に働いてくれた。治療の助手から……見張りも。ケットシーは夜目もきくから。国境の方をじっとにらみつけて、ファーガルに怪しい動きがないかも探る。


 オレも手伝ったよ。


 夜の寒さが深まったときは、毛布とあったかいコーヒーの差し入れを持っていったし。明け方にかけての見張りもやった。


「意外と、地味だな」


「忍耐が試されるお仕事ですねっ」


「厳冬期では、今の八倍はハードですっ」


 国境警備は大変だという学びもやれた。ギルド長としても、自由騎士としても、男爵としても、勉強になったのは事実だ。王さまへの報告を充実するためにも、『国境警備騎士団』の苦しみは、身をもって知っておきたかった。



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