第八話 『呪われた鎧と消えた王子』 その47/勝利とさみしさと


「レオお兄ちゃん! どこ!? 大丈夫なの!?」


「危ないから、く、来るな!」


「行く!!」


「そ、それなら! ぼ、ぼ、ボクだってええええ!!」


 どうにか崩れかけていた城壁にしがみついているだけだった。爆薬だって、どれだけ残っているのかわかったものじゃないのに。


 どっちも冒険者らしいというか、陰キャ系のふたりに助けてもらったよ。


「持ち上げるんだっ!」


「わ、わかりました! フーレンの血よ、ぼ、ボクに力をおおおおっ!!」


「そんなに、重たくはねえよ……っ」


 引きずり上げてもらった……折られてる右腕を引っぱられたから、激烈に痛かったが。


「ありがとう」


「うん!」


「よ、良かったです。間に合って……こ、これ。『渡り鳥の大剣』」


「持っててくれ。右腕、折られてるんだ」


「は、はい!」


「それより、ここから離れるぞ! まだ、爆発するかもしれん!」


「わかった!」


「に、逃げましょう!」


 黒い煙がくすぶっていて、どうにもこうにも不穏だった。逃げた。砦の内部に逃げ込んでから、数秒後か。それよりもっとだったかな。爆発がまた起きちまう。背中から爆風に突き飛ばされそうになったが、耐えられたよ。


 お袋のメシで、大きく育ててもらえた甲斐があるよな。ありがてえよ。本当に。吹き飛ばされて、ローズとロンドリを巻き込むようなコトにならずに済んだから。守れたぞ。守ってくれたヤツらを……お前も、そうなりたかっただろうな、アルベルト・ヨハンソン。


「こ、こんなに大量の爆薬を、仕掛けていたんですね……っ」


「執念を感じさせる」


「あいつは、ど、どうなったの?」


「追い詰められて、飛び降りた。爆薬に、火をつけながらな」


「そ、それじゃあ……」


「死んじゃったんだね」


「たぶん。おそらく……いや、そうだろう。死んだんだ」


 誰かの死を確かめるように肯定するときというのは、重みがある。とんでもなくさみしくなるものだ。自分とそいつにある『つながり』を、自分で断ち切るような感覚は、あまりにも苦しみがあって。さみしいもんだったよ。


「強かった」


「よ、よく勝てましたね」


「オレを、誰だと思っているんだ」


「れ、レオンハルト・ブレイディさんです。とっても、強い」


「そうだ。君らのギルド長は、強いんだぜ」


「うん!」


「でも、ありがとう。危うく落ちちまうところだったよ」


「ほめて」


「ああ。腕が、折れてなきゃ、右手でアタマなで回していたよ」


「く、クレアさんに回復魔法を使ってもらいましょう」


「骨なら、わ、私もやれるよ。くっつけー、ほねほねー」


 魔力を込めたちいさな手が、オレの右腕に触れて―――。


 ゴキガキゴギ!!


 ―――モンスターに腕でも噛み砕かれているような激痛が走ったけれど、さすがはネクロマンサーだ。三秒後には、おかしな方向に曲がっていた右腕が、マトモなかたちに戻っていたよ。


「どんな、か、感じ?」


「完璧だ。ナデナデ」


「いひひ。ネクロマンサーの、骨接ぎ魔法は、さ、最強なんだよっ」


「す、すごい。ネクロマンサーって、何でもやれるんだ」


「そこそこね。い、医療にも、可能性があるって言っていたの。と、ときどきマリが医学書を読ませてくるんだ」


 ……ローズ本人には伝えてはいないが、ケネスの治療法として、悪霊をカラダに憑依させるってプランをマリは考えているからな。ネクロマンサーのスキルって、本当に、世の中のために役立つかもれいない。


 天才ローズは、可能性のカタマリだった。


「ダーリン! 無事か!」


「ああ。そっちも、大丈夫か!」


 クレアたちと合流する……クレアに抱きしめられた。恋人がいるって、いいもんだな。


「あちこち、傷だらけだ。ああ、ダーリン。すぐに、回復してやるからな」


「他に重傷なヤツがいたら、そいつを優先してくれ」


「安心しろ。ダーリンが、いちばん重傷者だ」


「ろ、ローズちゃんが折れた右腕を治してましたから。本当に、ズタボロでしたね」


「ズタボロで、当然だ。自分よりも強い敵と、一対一をやっちまったんだから……みんな、真似するんじゃねえぞ。命は、大切にしないとな」


「うむ。ダーリンもだ」


「わかってる。今は、本当に、とんでもなく、思い知らされているよ。あいつ、思っていた以上に、悲しい男だったから」


 クレアに回復魔法をかけてもらいながらも、エリアス王子さまを見た……。


「王子さまも、どうにか倒したか」


「とてつもない強敵だったが……」


『チームプレーというのも、悪くないものだな』


「お前も、大活躍してたんだ」


『その通りだ。まあ、ローズマリー・ガトウに、力を引き出してもらった』


「こっそりと、ろ、ロンドリも役に立っていたよ!」


「は、はい。こっそりと……ちょっとだけ、ですけれど……お、お役に立てた気がしていますっ」


「オレを助けてもくれたからな。いい仕事をしてくれたぜ」


「は、はいっ!」


「姉貴としても、嬉しいだろ。弟の活躍が?」


「まあな。思っていた以上に、成長していたのかもしれん。だが、もっと強くなれ。小説家を目指すのはかまわんが、筋トレのひとつぐらいはするように」


「しょ、精進しますっ!」


「それでいい……さて。レオンハルトよ。騎馬の足音が、聞こえたが……」


「よくわかるな」


「フーレンの聴覚を、なめるな。それで?」


「ヴィルヘルム王子さまと、その護衛か何かが来たらしいぜ」



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