ゆきのきょじん

タルタルソース柱島

ゆきのきょじんとちいさなむら

 むかしむかし、山の中に、小さな村がありました。

 その村は、冬になると山ほど雪がふり、まっ白な世界になります。

 でも、雪がたくさんふると道は通れなくなり、食べ物も足りなくなって、村人たちはとても困っていました。


 そんなある日、大きな足あとが村の近くにありました。

「あれ? なんだろう?」

 村人たちが見に行くと、森の中に雪でできた大きな巨人が立っていました。

 その巨人は、全身が雪でできていて、ふわふわした毛のような氷のかたまりが体中についていました。


 巨人は、低い声で言いました。

「わしは雪の巨人じゃ。この村が雪とどうくらすか、見にきたのじゃ」

雪の巨人は村人たちに言いました。

「雪はみんなを困らせることもあれば、たすけてくれることもある。

おまえたちが雪をどう使うか、わしに見せてくれんかの」


 村人たちは最初、とても困りました。

「雪なんてただのじゃまものだよ。さむいし、道は通れないし・・・・・・」

けれども、村の中のひとりの少年が言いました。


「雪をいいものとして使えたら、巨人もきっと喜んでくれるよ!」



 村人たちは、少年の言葉にしたがって、雪を使う方法を考えました。


 ある人は、雪でかまくらを作りました。

 その中は雪で囲まれているのに、風が入らず、あたたかく過ごせました。


 ほかの人は、雪をかためて道を作り、その上をそりですべりました。

 重たい物を運ぶのが楽になり、村の外からたべものを運ぶこともできました。


 また、雪をとかして水にして、飲み水や料理に使うこともしました。

 村人たちは、雪がただのじゃまものではなく、とてもたすけになることに気づいたのです。



 春が近づいたころ、また雪の巨人が現れました。

「おまえたちは雪をうまく使ったな。これからも雪とともに生きていけるよう、わしがひとつ手助けをしようぞ」


巨人は大きな手で地面をたたきました。

 すると、春になっても雪の水が田んぼや畑に届くようになり、村は一年中たべものに困らなくなりました。


 それから村では、雪に感謝しながらくらすようになりました。

 雪の巨人の話は、子どもたちにこうやって伝えられました。


「むずかしいことも、あたまをつかえばたのしいことやいいことに変えられるんだよ」


 村人たちは、雪の巨人にお礼を言いながら、ずっと幸せにくらしましたとさ。


 めでたしめでたし。

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ゆきのきょじん タルタルソース柱島 @hashira_jima

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