あの澄んだ空は君と見たかった

しふぉん

第1話 ココネ

僕の対極にあるもの、それは君だ。いつしか出会った君の笑顔は雨上がりの空のようだった。


「想くん」


「何?」


「さっきからスマホばかり見てるじゃん」


ココネが拗ねた顔をして僕を見ていたが、僕はスマホを見たままだ。こいつにはこれでいいのだ。ココネは追いかける恋愛が好きな女。そもそも軽率に僕のセフレになるような女など少し冷たくするくらいがちょうどいい。ココネは僕とセックスするだけの関係と割り切ってくれているから、こいつもこいつで僕に抱かれてやってるくらいに思っているのだろう。


「あぁ、明日仕事か」


ココネがため息をついた。ココネは看護師だ。土日休みではなく、休みは変則的だ。たまたま有給を取ったので僕に合わせて土日休みだった。だから会う頻度は実は少ない。


「そういや面倒な後輩がいるんだろ」


「そうなの。看護師になるならある程度は覚悟あると思うんだけどねー、すぐ泣くし厄介」


「ココネがきつい言い方してるとか?ほら、レナって気が強いから」


「そんなこと…それもそうかなあ、想が言うならそうかもしれない」


「簡単に納得するなよ」


ココネは半身を起こした。白い乳房が露わになる。


「シャワー浴びてくる」


僕は部屋で一人になった。僕はベッドから出て着替える。今日はがくれたスウェットのパジャマを上下で着ていたが、それはたたみ、私服に着替える。こいつはセンスがいい。部屋も家具もシンプルで洗練されている。パジャマはのココネの家に置いていて泊まるときだけ着ていた。

そうこうしているうちにシャワーを浴びたココネが出てきた。ミディアムヘアの髪は濡れていた。首にタオルを巻いている。着ているのは淡いピンク色のもこもことした生地のパジャマだった。


「想くん、帰る?」


「うん」


「シャワーくらい浴びていけばいいのに。ちゃんと家帰ったらシャワー浴びな」


ココネの口調がうざったく感じたが何も言わず、むしろ僕は近づいてきた彼女に軽いハグをした。


「また会える日があったら連絡する」


ココネはそのままハグをし返した。


帰宅すると僕はスマホに来ていた連絡を返すことにした。大学生の頃から女にチヤホヤされはじめた僕は社会人になっても相変わらずセックスできる女を漁っていた。夜職の女の子は避けてなるべく普通の会社員などの職業の子と連絡を取っている。しかし、最近ココネ以外とは継続的な関係はしていなかった。マッチングアプリで遊び目的で一回セックスをしたら連絡をそっけなくしたり、アプリをやめて連絡がつかないようにしていた。僕はいい加減飽きたのかもしれない。ココネとの関係も迷っていた。セフレ関係を解消するか、あるいはココネにその気があるなら彼女と落ち着くのもありだと思っていた。実家の太さと高嶺の花と思われがちな整った顔の妻。上出来じゃないか。なのにどちらも気が進まない。


それはまだ大学4年生だったあの頃に出会った君のせいかもしれない。

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