第5話 ナラッカ

「ナラッカって何だよ!?」


『今から1万年前の地球に存在した、人類の天敵だ。一時期、我々の先祖は絶滅寸前まで追い込まれた』


 ……あの場では居られないので。


 人の居るところに出て、コンビニのイートインスペースに陣取った。

 ペットボトルのお茶を買って。


 ……まあ、一口も飲んで無いんだけどな。

 とてもそんな気分じゃない。


『ナラッカは人間の生命力を喰らう。奴らはプシュケーと呼んでいるが』


「人間の命を食糧にしてるのか!?」


『そうだ』


 ……声は抑えめだ。

 独り言のデカいヤバイ奴とは思われたくないし。


『ナラッカは伝説や伝承に出て来る悪魔の原型……よく悪魔との取引で、魂を要求されるハナシがあるだろ? それはナラッカの仕業についての言い伝えが元になってるんだ』


 ……混乱してきた。

 あの化け物共は、悪魔の原型で。

 人間の命を食糧としてる怪物……!


 まぁ、それは置いておこう。


 とりあえず


「アンタはそれと戦ってたのか?」


『そうだ。……僕は家族をナラッカに全員殺されたとき、師匠に出会い、この道に入った』


 で、この聖戦士さんの亡霊っぽい人は俺の脳内で語り始めた。


 いかにナラッカが邪悪かについて。


 そのナラッカという化け物たちは、1万年前に人類の先祖を絶滅寸前まで喰い殺し、数が減り過ぎたことを問題視。

 なので人間の数が回復するまでと、別次元に移動したそうだ。

 その別次元が「魔界」と呼ばれているそうな。


 ナラッカは人の生命力・プシュケーを喰らって人を殺す。

 だけどそれは自分の生命維持のためじゃない。


 空腹を抑えるためだ。


 ナラッカは何も食べなくても生きていけるけど、プシュケーを喰わないと腹が減るんだと。

 だから喰らう。


 悪魔召喚の伝説は色々あるし、創作物でも良く出て来るが。

 あれは現実にもあるらしく。


 ナラッカはほぼ全て魔界に移動して、今はこの世界には居ないけど。

 人間の召喚士がこっちに呼び出し、自分の邪な願いを叶えるための取引を要求する。


 その結果こっちにやってきたナラッカを、聖戦士は狩ることを使命にしてきたそうだ。


「聖戦士はアンタ1人なのか?」


『いや、メギドの力を与えられた聖戦士はたくさんいる。具体的にどれだけいるのかは不明だが』


 あぁメギド、メギドって……

 知らん単語をベラベラ言われても。


 まぁいい。

 俺には関係ない話だ。


『……申し遅れた。僕の名前は山本やまもと猛瑠たける。全力でサポートはするから、どうか人類を守る戦いを……!』


 脳内の亡霊さんの自己紹介。

 タケルね……


「タケルさんさぁ、冗談じゃ無いんだわ」


 俺は言ったよ。

 ここまでの説明を全部聞いて。


 そしてこう言ったんだ。


「俺は関係無いんだ。俺は聖戦士の使命とやらを放棄する」


 俺は巻き込まれただけで、アンタに借りも全く無い。

 チカラを継承して欲しいとも言ってない。

 冗談じゃない……


 やってられるか!

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