第3話 メタル系特撮ヒーロー
「オノレッ! ヨクモッ!」
「キャアアアア!」
不倫女が悲鳴を上げる。
不倫相手がいきなり化け物になったからだ。
そして逃げ出した。
だけど化け物は
「チッ!」
意外なことに、追わなかった。
しかし
逃げた不倫女と、化け物の間に立ち塞がるように。
黒コートの男が現れたんだ。
鋭い目をした、研ぎ澄まされた剣のような雰囲気の男だった。
「……ナラッカ・アスモス。お前の命はここまでだ」
男は化け物に厳しい視線を向け。
その胸の首飾りを手に取り
叫んだんだ。
「
レイロウ……?
その瞬間、眩い光が男から噴き出した。
思わず目を瞑る。
そして光が消えたとき。
そこには、鎧の戦士が出現していた。
……西洋の鎧、中華の鎧、日本の鎧。
どれにも似ていない。
材質は紫水晶に似ている。
そして形状は……
強化服だな。
いや、メタル系特撮ヒーロー……?
紫水晶のメタル系特撮ヒーロー。
額から鬼に似た角が2本、生えている。
「ク……メギドの
化け物の焦りの声。
メタル系特撮ヒーローは化け物に対し
「討滅する!」
強く宣言し、その右手に紫色の炎と共に長さ1メートルくらいの剣を生み出す。
炎の装飾がついた、勇者の剣と表現するのが適当な両刃の長剣。
……何なんだ一体?
目の前で、化け物とメタル系特撮ヒーローが戦闘を開始した。
見りゃ分かるけど、両方とも人間のレベルを超えた動きを見せてる。
両方とも、間違いなく人外だ。
……どうしよう?
正常化バイアスってやつか?
混乱してたのと、潜伏出来てる自信からか。
ここまで逃げるのを忘れてたけど。
ここまで見て、確信した。
目の前で行われていること、これ絶対本物だ。
だったらこれ、撮影した方が良いのでは?
なんとなく、俺はそう思ってしまった。
世界の裏側で、こういうことが人知れず起きている。
これを公表するべきなんじゃないのか、と。
そして、隠れたまま、こっそりと撮影をしようとしたときだ。
「そこまでだメギドの戦士よ」
……別の声が聞こえて来たんだ。
視線を向ける。
そこには……
ガチガチの装甲を身に纏った漆黒の蠅の怪人がいて。
それが女性を羽交い絞めにしていた。
……あの不倫女を!
女は怯えきっており、動けなくなっている。
黒い蠅の怪人は
「メギドの戦士……前の戦いで、見捨てるべき子供を庇ったのは失策だったなぁ」
そう、勝ち誇った声で。
「将軍ベルゼブ……! 卑劣な……!」
「弱みを見せたお前が悪いのだよ」
メタル系特撮ヒーローの動きが止まった。
え? え?
まずいのでは?
そうは思うが、何をすればいいのか分からないし、できない。
俺なんて飛び出してもしょうがないし。
そしてバレないように物陰で見守りながら
俺は
メタル系特撮ヒーローが、さっきまで戦っていた化け物に。
背中から胸を貫かれる様を見てしまった。
……貫手だった。
あっ、と思い。
同時に俺は
自分が、彼を見殺しにしてしまったんだ、と思った。
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