私は身バレなんてへっちゃらだよ
獅子2の16乗
第1話 お見合い?
「
お願いします!
『ごめんなさい。私のことを好きになってくれたのは本当にうれしいけど、私達高2で来年受験でしょ。私今は勉強漬けでちっともオシャレとかしてなくて、たぶん
「ダメってことなの」
『本当にごめんなさいね。友達が待ってるから私行くね』
あんな見えすいた断り方……いやいや、お呼びじゃなかったってことなんだろう。
1年生の時の
気分転換に浜辺を散歩して帰ろう。
…………
潮騒が、なんか気持ちいい。
小説投稿サイトで、人が海に行きたがるのは、波の音を弱った心、弱った心臓に聞かせて元気づけようとしてるのかもしれないって読んだことがある。
その時は嘘っぱちだと思った。
でも今は、あの作者さんが書いてたことは本当かもしれないって思う。
あれ……こんな所に潮だまり?
あ、貝がいる……夕べの時化で打ち上げられちゃったのかな。
でも、満潮でもここまで海水こないからそのうち乾いて死んじゃうよな……
……うん。
「ほら、戻してやるからな。もう打ち上げられるんじゃないぞ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
大学時代も彼女なし、就職して3年たつけど、やっぱり彼女ができない。
『
「いない……って父さん、帰省して開口一番息子の傷口を抉らないでよ」
『いつからいないんだ』
「う、生まれてこの方……26年だよ!」
『一度もできたことがないんだったら無傷じゃないのか?』
「父さん、それ屁理屈」
『よし、そんな息子に彼女を紹介してやろう』
「それは……お見合いってことか? だからスーツ持って帰ってこいとか、床屋に行ってから帰ってこいとか言ってたのかよ」
『よくできました。太郎はおりこうさんね』
あのな~
『高校時代の友達の娘さんで、私達がやってる仲買の
『いい子だぞ~』
『どうしても結婚しなければならないってことではないよね』
『ウチは政略結婚とかには縁はないぞ。まあ、それでも誠実にな』
どうしても結婚しなければならないわけではないけど、義理で会うっていうことでもないわけか。
「うん、分かった」
『よし、明日、午後6時から
「明日、午後6時、Reverse Café、お互い一人……ちょっと待て、それじゃ相手が分からないじゃないか」
『何か特徴的なアクセサリーを付けてくるって言ってなかったっけ?』
『バラとリンゴのヘッドのペンダントを付けてくるって言ってたわ』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Reverse Café。
さほど大きくはないが、ジビエやイセエビ、カキ、牛肉など地域の食材を用いた“地産地消”のちょっとおしゃれでいいビストロだ。
『いらっしゃいませ』
「予約してます浦風です」
『はい、ご案内します』
『お待ち合わせの方はいらっしゃってます』
しまった、待たせちゃった……ってまだ約束の15分前だぞ。
「すいません。お待たせしちゃって。
『いえいえ、私が早く来過ぎてしまって。大濱 美乃です』
とってもきれいな笑顔の人だな。
初めて会ったはずなのにこんなに嬉しそうにしてもらえるなんて、ちょっとびっくりするけど……うれしい。
『ご注文を承ります』
『浦風さん。おススメってありますか?』
「はい。なんでも美味しいですけど、一番のおススメは太刀魚のマトロットと大ハマグリのカニクリームリゾットです」
『よくご存じなんですね』
「すいません。実は今朝お店に電話して聞きました」
『フフフ、正直なんですね。でもうれしいです』
…………
美味しそうに食べるね。
一緒に食べててうれしくなってくるよ。
「太刀魚のマトロットどうですか」
『とっても美味しいです』
「それは何よりです」
『浦風さんが頼まれた大ハマグリのカニクリームリゾットはどうですか』
「これも美味しいです」
…………
『ワインも美味しいですね』
「本当ですね。このお店を予約した父母に感謝ですね」
『そうですね』
「ところで大濱さんが父母がやってる海幸に就職した動機は何ですか?」
『私、海が大好きなんです。特に磯や浅海の情景とか海の生き物が。ですから海幸で働けて、毎日海の生き物に触れることができて幸せです』
「そうですか。俺も海の生き物が好きで、今は水産試験場で働いていますが、時が来たら海幸を継ごうと思ってます」
『「ごちそうさま」』
「また、会ってもらえますか?」
『ぜひ、いいですけど……もう一声お願いできませんか?』
「え?」
これは、交際を申し込んでくれってことなのかな。急にドキドキしてきた。
「えーと……大濱 美乃さんはとても笑顔の素敵な方で……その、俺と交際してもらえますか」
『はい!』
え、即答?
「あの、申し込んでおいてなんなんですが、本当に俺なんかでいいんですか?」
『もちろんです。会ってた時間は短いですけど、私は太郎さんに会えてとっても幸せです。でも、“なんか”は蔑視的表現だからなしでお願いします』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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