第10話 モラハラ講座

 相手に言い返せなくて悶々としている人に、モラハラな私がアドバイスします。


 常日頃から腹を立て、なんで腹が立つのかを言語化して溜めておくのです。一度でも言い返すことがうまくできると、その快感が記憶されて隙あらば言ってやろう!という前のめりな姿勢になります。


 言い返し方にも、ストレート、一回転ひねり、二回転ひねりとありますから、相手に合わせて使い分けましょう。高度な言い返しの例としては、中原中也で勉強するのがよろしいかと。


 言い返しにこだわり始めると、言い返してくる相手との距離感も変わってきます。ストレートでは面白くない、一回転捻りでコイツやるな、二回転ひねりで相手を好きになります。


 さらに、言い返しに磨きをかけ、タイミング、言葉の吟味、セリフの長さ、表情、声のトーンに至るまで計算します。そしてその言い返しがどれほど効果的だったか、自分で満足できたかの記録をとります。なんなら、言われた相手と一緒に反省会をして、アブナイ人を演出しましょう。


 最後に、必ず神妙な面持ちで「言い過ぎてしまってごめん。でも君のために言ったんだよ」と言ってください。明確に謝ることで、「こんなに潔く謝っているのを許さない私がいけないのかな?」「それくらい私のことを思ってくれてるんだ」と、思わせることができます。


 個人的には、日本語が巧みで、分析力があって、当意即妙なことが言えるとしても、人が嫌な気持ちになることしか言えないなら意味がなく、力をつけると同時に力の使い方まで考えないと、と思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る