第2話
楠原萌絵。
どこにでもいる、普通の女の子だと思う。
少し茶色に染めたショートカット。いつも元気で明るくて、だけど周りに気を配れる女の子。スカートは長くも短くもなくて、物凄い美少女ってわけでもないけどブスって感じでは絶対にない。
クラスで二番目か三番目ぐらいに可愛いのはあの子だよな、ってどの男子からもだいたい言われる、絶妙な感じの可愛さで……つまりそれはかなりの美少女って意味で……。
そして何より、俺が絶賛片想い中の女の子だ。
きっかけはその笑顔だった。
空手部に所属している俺は、放課後になると体育館で部活に励んでいる。
そこで、バレー部所属の楠原さんと一緒になるのだ。
すると、自然にその活動が目に入る。
ボールを見る真剣な横顔とか。
仲間と声を掛け合う様子とか。
時々見せる、はつらつとして健康的な笑顔とか。
そういうのを全部ひっくるめて、なんだかすごい、彼女だけ際立って魅力的に見えたのだ。
――そんな彼女と、俺はこれから『子作り』をする。
「……本当にいいんだね、楠原さん?」
楠原さんの部屋で、俺は彼女にそう問いかけていた。
今、俺は楠原さんの家へと招かれていた。両親は共働きでまだ帰ってくる時間ではないらしく、つまり楠原さんとは今、二人っきりというわけである。
通された楠原さんの部屋は女の子らしく可愛らしい内装で、空気まで楠原さんの香りがしている。そのことに少し緊張しつつ、俺は床に正座したまま、ベッドの縁に腰掛ける楠原さんを見上げた。
「えー? うん、いいよいいよ。だってほら、みんなやってる罰ゲームだし、私だけ嫌がるのもなんか、ほら。変じゃない?」
「そ、そうなの……かな? どうなんだろ、変じゃない気もするけど……」
「ん-、まあでも美優も歩佳もみんなヤってるしさー。今回は私が罰ゲーム受ける番だったから、こればっかりはねー。そういうルールだし」
そう言って、楠原さんはにこっと笑う。……本当に気にしてるわけではないらしい。
「ってか、梅木くんの方こそ大丈夫だった? 他に好きな女子とかいたりするなら、迷惑だったかなー? とか今にして思ったり」
「だ、大丈夫、だよ! 好きな女子とか、そういうのは別に……いないし」
いるけどあなたです、とか言えるわけもない。
「そ……そっかそっかぁ! なら良かった。安心して私のこと、抱いてよ」
ホッとした様子で息を吐く楠原さん。
……今、心なしか、一瞬嬉しそうな顔したような。まあでも俺の勘違いか。別に普段、接点があるってわけでもないし、自意識過剰になりすぎるのはよくない。
それに俺は人の表情が読めないんだ。他人の声とか、表情とかから、感情を推し量ることなんて俺にはできない。分からないんだ。
そんな風に俺があれこれ考えていると、楠原さんが出し抜けに制服のリボンを外した。
「……く、楠原さん!? なにしてるの……」
「何って、これからエッチするじゃない。汚れるから服も下着も脱ごうかなって」
「脱ごうかなって……」
「だってそうしないとエッチできないし。梅木くんも早く脱ぎなよ~。……あ、てか全然考えてなかったけど、もしかしてシャワー浴びた方が良かったり? 部活のあとだしけっこう私今汗臭いかも」
「べ、別に俺は気にしない、よ! 楠原さんが臭いなんてことあるわけない!」
慌てて俺が否定すると、楠原さんは一瞬目を丸くしたかと思うと、「ぷ、くくく……」と笑い始めた。
「梅木くん、なんか必死すぎ。いやそう言ってくれるのは嬉しいけど」
「あ、あ……なんか、ごめん」
「いや、いーよ。てか全然ありがと。優しいこと言ってくれんだね?」
優しいからとか、そういうんじゃない。ただ楠原さんが好きだから、そう思うだけだ。
だけど当然、そんなことは口にはできない。代わりに黙って、俺は頬を赤らめるだけだ。
「まあでもよかったー。ハジメテあげるんだったらさ、どうせなら優しい人のが良かったし」
「は、ハジメテ……え、そ、そうなの!?」
「そだよ~。罰ゲームも私はこれが初めてだし。だからまあ、色々慣れてなくてもそこは許して……ね?」
「そ、それはもちろん……俺も初めて、だし」
「そうなんだ! よかったぁ……嬉しい」
嬉しい?
嬉しいって、何が?
具体的にそれ深堀りしていところだったりする? どういう風に俺は思えばいいですか?
色々思うところはあったけれども、結局何も俺は言えなくて。
その間に、どんどん楠原さんは話を進めていくのであった。
「それじゃ、シよっか?」
最近女子の間では罰ゲームで子作りするのが流行っているらしい 月野 観空 @makkuxjack
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