最近女子の間では罰ゲームで子作りするのが流行っているらしい

月野 観空

第1話

「ねえ、梅木くん。私のこと……孕ませてくれない?」


 その日の放課後、俺はクラスメイトの楠原くすはら萌絵もえさんに呼び出され、そんな風お願いをされていた。

 普通なら、耳を疑うようなお願いだ。常識的にはあり得ない。


 だけど俺は、なんとなく彼女がそんなお願いをしてくるんだろうなということを想像できていた。


「……うん。俺でいいなら」


 だから、彼女のお願いに対し、疑問を挟むこともなく首を縦に振っていた。


「そっかぁ、良かった!」


 楠原さんが、そう言って微笑む。

 それから、その笑顔のまま、


「断られたら別の男子に『罰ゲーム』のお願いしないといけないところだったから、良かったよ♪」


 と、告げてきた。


 ……


 最近、この学校では、女子の間でとある『罰ゲーム』が流行っているらしいという話はかねてより俺も耳にしていた。


 その罰ゲームの内容が『子作り』だということ。

 そして、別の女子に『罰ゲーム』が引き継がれるまで、罰ゲームを受けることになった女子は選んだ男子と子作りに励まなければいけないということ。


 それがどうやら、女子の間でのらしいのである。


「それじゃ、梅木くん。さっそくだけどこの後時間ある?」

「うん、あるけど……あの、ちょっと聞きたいんだけど」

「ん? なぁに」

「……罰ゲームの相手、なんで俺なのかとかって聞いてもいい?」

「えー?」


 楠原さんは、ちょっと曖昧な笑みを浮かべて、言った。


「……クジで出てきたのがたまたま梅木くんだったってだけだよ?」

「……そう」


 それはつまり、俺じゃなくても良かったというわけで。

 ……密かに楠原さんに好意を寄せていた俺としては、内心で少し、がっかりとした気持ちになってしまった。

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