現代の『縁結び』 ~ 妻 ~

崔 梨遙(再)

1話完結:900字

「お嬢さん、悲しい顔をしていますね」

「あなた、誰ですか?」

「私は『ご縁』を結ぶ男です」

「縁結びですか?」

「はい。もしかして、好きな人とお付き合い出来なくて悩んでいますか?」

「よくわかりますね」

「商売柄、こういうことはよくわかるんですよ」

「片想いの男性(ひと)がいるんです)

「では、その方とのご縁を結びましょう」

「いいんですか? でも、あの、料金は?」

「要りません。ボランティアのようなものです。では、ご縁を結びますね」

「お願いします」

「はい、結ばれました。明日を楽しみにしてください」


 翌日、その女性は片想いだった相手から告白されたのだった。



「ただいま-!」


 夫が帰って来た。私は智代。私も夫に好きな男性との縁を3回結んでもらった。でも、みんな期待外れだった。そこで“あなた(縁を結ぶ男)と結ばれたい”と願い、この『縁結び男』の妻になることが出来た。35歳で結婚。夫は私より少しだけ年下だった。結婚して3年。子宝にも恵まれた。1歳半の女の子だ。


「お帰りなさい、結(むすぶ)さん」

「今日は3組、ご縁を結んだよ」

「お疲れ様。ご飯にする? お風呂にするする? それとも、わ・た・し?」

「わ・た・し」

「もう、絶倫なんだから」


 結は絶倫、私は夜の営みでも満足していた。そう、全てにおいて満足していた。まず、住まいは4LDKの高級マンション。家賃抜きで、生活費を100万くれる。おかげで私のクローゼットにはブランド物が増えた。結はボタンティア団体のようなところに登録していて、完全出来高制で収入を得ているらしい。結がどれだけの金額をもらっているのかは知らない。私は、毎月100万円の生活費で満足していた。


 結はイケメンだ。私はイケメンが好きなのだ。私は結を愛している。浮気なんか考えたことも無い。結も浮気はしていないようだ。私は幸せだ。そろそろ2人目の子供を作ろうかという話になっている。でも、たまに心配になって聞いてみる。


「あなた、浮気なんかしてないでしょうね?」

「そんなことしたら離婚になっちゃうじゃないか」

「離婚になったらマズいの?」



「縁を結ぶ男が離婚しちゃダメだろう」



「そう思って、私はあなたを選んだのよ」







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