フルーツ戦争
@cosmopolit
第1話 オレンジジュース
「おはようございます!今日もフルーツたちは元気いっぱいですね!」
端末の陽気な声が部屋に響く。僕は目をこすりながら画面を見た。そこには、青空の下に広がるバナナ畑が映っている。緑の葉が風にそよぎ、黄色いバナナさんたちが楽しそうに跳ね回っている。その笑顔は無邪気で、見ているだけで心が和む。
「今日はオレンジさんが、あなたの畑に遊びに来ていますよ!」
画面の端に目を向けると、オレンジさんたちがバナナ畑に足を踏み入れている。丸く張りのある体を揺らしながら、ゆっくりと進んでいるオレンジたち。その様子は一見微笑ましい。
だが、足元に目をやると、彼らが通った跡には折れ曲がったバナナの葉が散乱し、泥にまみれて無惨な姿を晒している。進むたびに鮮やかな緑が踏み荒らされ、畑に刻まれた深い傷跡が彼らの侵入をはっきりと物語っていた。
「悪いオレンジめ!僕の畑を荒らすなんて許さないぞ!」思わず叫んだ。
画面には、選択肢が浮かび上がる。
• オレンジをおもてなしする
• オレンジジュースを作る
僕は迷うことなく「オレンジジュースを作る」を選んだ。
画面が虹色に輝き、軽快な音楽が流れる。次の瞬間、彼らの丸い体がぎゅうっと締め付けられ、裂け目から果汁が勢いよく吹き出す。オレンジ色の果汁が画面いっぱいに広がり、血しぶきのように畑を染める。彼らの体は萎び、やがてただの皮の塊となって地面に崩れ落ちた。
「オレンジジュース完成!」という文字が画面に浮かび上がり、僕のバナナ畑が少しだけ広がる。
「やった!これで僕の畑は守られたぞ!」満足感で頬が自然とゆるむ。
そのとき、どこか遠くで鈍い音が聞こえた気がした。けれど、画面の中でバナナさんたちが笑顔で踊っているのを見ていると、そんなことはどうでもよくなった。
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