翌日。元々ノエルのモノだったというベッドの上で目を覚ました。殆ど眠れなかったけれど、少しは休めた。色々と考えてしまって、眠れなかったんだ。いつもなら、眠れない時は考え事をするとすぐに眠れたのに不思議だ。


 家はどうなっているんだろう。心配掛けてしまっているんだろうか。私がこっちに居る間、向こうの時間も進んでるはず。早く帰らないと、洒落にならない。行方不明届けが出されて、大騒ぎになってしまう。

 特にユキにだけは、心配を掛けたくなかった。親友だからってだけじゃない。少しだけあの子は不安定だから、私が居ないとダメなんだ。


「……………………よし」


 起き上がって、リビングへと向かう。既に起きているフレンが私に気付く。


「おはよう。早起きだね」

「何時か解らないけどね」

「まだ陽が昇ってすぐだよ。まずは朝ご飯を食べようか。腹が減っては力が出ない。きちんと頭も働かないだろう」

「頂くね」


 座っていたフレンが立ち上がって台所へと向かう。そこは、なんというか、台所ではあるけど、私が知っているモノとはかなり違っている。そもそも水道が無いし、冷蔵庫の様なモノは見当たらない。

 代わりに、何か石が設置してあって、フレンがそこに手を翳すと水が出ている。あれも魔道具の一種なのだろうか。

 フレンは台所にある籠の蓋を開け、中から果物を取り出す。赤い果物、多分リンゴに近い。皮を剥いて食べやすいサイズにカットすると、それを皿に並べて私の前に運んでくれる。


「好みは……多分ノエルと同じだろう。キミが別人だろうと舌はノエルのモノだ。味の好みはきっとノエルのままのはずだ」

「……そうだね」


 串を果物に刺す。


「いただきます」


 食べやすくカットされた果物を口に運ぶ。


「わ、美味しっ、なにこれ?」

「お気に召したようで何よりだ。一般的なリシアの実だよ。そっちの世界には無いの?」


 リシアの実という言葉は聞いた事が無い。食感や見た目はリンゴに近しいけれど、とても瑞々しくて、味はどちらかというと梨に近い。それに、切っている様子を見るに芯の部分も食べられる。種は、流石に食べないけど。


「無いかも。似たようなのはあるけど……。でも美味しいよ、凄く」

「アースガルドでは良く食べられているモノだからね。嫌いなヒトはあまり居ないだろうと思ったが、ふふ、うん。やっぱりノエルと同じかもね」

「ノエル、も好きだったの?」

「あぁ。大好物だったよ。冒険者になった時、これで好きなだけ自分のお金で食べられる! って騒いでいたくらいには。まぁ消化にも良いし、健康食として好んで食べるのは悪くない事なのだけどね」


 確かにこの味を嫌う人はあまり居ないだろう。


「さて、食べながらで良いから話をしよう。昨日何があったのか詳しく聞かせてくれる? キミも話す事で少しは頭の中で整理がつくかもしれない」

「うん。でも正直どう伝えれば良いか解らない。私とフレンでどんな風に伝わっているのか解らないし」

「それはおいおい擦り合わせて行こう」


 一度きちんと整理するという意味ではかなり助かる。実際自分でも解らない事が沢山ある。もしかしたらフレンに答えを教えてもらえるかもしれないし。


「ここに来た方法は、解らない。ノエルの身体で目を覚ます前の記憶は曖昧なんだ。怪しいと思うけど、でも何も覚えてない。いつの間にか私はノエルの身体で居て、目の前にワイバーンが居た」

「それは、かなりの恐怖だね。見た事の無い巨大なトカゲに睨まれたってあれば僕でも身体は凍り付くかもしれない」

「それで、剣を持った男の人に助けて貰ったんだ。多分、あれは私を助ける為の行動だったんだと思う。状況を把握出来ない私を抱き上げて、ワイバーンから距離を取ってくれた。色々叫んでいた様だけど、私には言葉は理解出来なかった」

「それは仕方ないよ。僕と言葉を通わせられる事も奇跡に近い。これは親子だからって訳じゃないし」

「そうなんだ? てっきり親子だからなのかなって勝手に思ってたよ。それで、もう一人の男の人、斧を持った人が次に私を抱えて、杖の子の元へと届けてくれたんだ。その間、剣を持ってた男の人がワイバーンと戦ってた」


 未だに目に焼き付いている。問題はそこからだ。


「それで……」


 あれを見た。


「空間が歪んだ」

「空間が歪んだ?」

「どう、説明すれば良いか解らないんだ。歪んだっていうのが多分一番近い。伝わってる? これ」

「続けて」

「うん。えと、それでその歪んだ空間が割れて中から黒い手が伸びて……」


 思い出そうとすると、ずずずと寄って来る。あの異様な気配はまだ私を逃がしては居ないのかもしれない。


「空間が割れて、中から黒い無数の手が伸びてきた?」

「そう、多かった。アレを知ってるの?」

「……見た事がある。十六年前、僕が目を覚ました時に現れたきり見ていないが……、ユーツスティアはあれを倒しきれては居なかったのか?」


 目を覚ます? ユーツスティア? ユーツスティアは、何だろう。私が知らない言葉かな。いや、人名?


「それで、その手が這い出ようとした時、私は杖の子と一緒にテレポートした……んだと思う。二人は私達を逃がす為か解らないけど、ワイバーンと戦ってた。あの様子だと、多分黒い手には気付いてない」

「そう、か……厄介な事になったな。厄介どころか災厄か? 歪んだ空間と這い出ようとする手はまさしく空の器の特徴だが……」

「空の器?」


 からのうつわ? あってるのかな。どういう原理で言葉が翻訳されているのか解らない。私の知識を元に翻訳されているのだとしたら、空の器って意味が解らない。あれの名称だとしても、あれがそんな名称になるとは思えない。


「なぁ、キミはアレが原因でこの世界に来たんじゃないか?」

「どういう事?」

「歪んだ空間から這い出てきたように、あれは空間と空間の間に巣食う化け物だ。この世界のあらゆる常識は通じないし、恐らく死の概念すらないだろう。キミはあれが空間に穴を開けた事によってたまたま流れてきてしまったんじゃ……いやそれだとキミは……」

「そうなのかな。解らない。本当に、気付けば私はそこに居たんだ」


 でも私、あれが出てくる前に目を覚ましている。だから、直接的な原因じゃないんじゃないか?


「頭がこんがらがってきた。ねぇ、あれは一体何が目的で出て来たの?」

「あれの考える事なんて解らないよ。そもそも観測自体稀だ。最後に観測されたのは十六年前だし、それ以降姿を見せる事は無かった。だから、てっきりあの時倒されたのだと思ってた」

「十六年前……何かあったんだ」

「あぁ、十六年前、月が一つ消失する大事件が起きた。同時に僕も目を覚まし、今ここで生きている。そして更に、アレが姿を現したんだ」

「月が消失? 目を覚ます? どういう……」

「僕の詳しい話は、また今度。今はキミが見たソレが本当に空の器なのかどうかが重要だ。もし、本当に空の器なら…………大規模な争いになるだろう」


 フレンの話は後回しだとしても月が消失したって話はとても気になる。昨日見上げたから良く解るけれど、月はあった。いや、一つ? もしかしてこの世界には月が二つあったの? 想像出来ない。


「よし、後はあの子に話を聞こう。もしかしたらあの子も見ているかもしれない。丁度食べ終わったようだし、支度してギルドカフェに向かおう」


 立ち上がったフレンに続いて立ち上がり、お皿……と目で訴えると、流しに置いておいて、と返される。帰ったら私が洗おう。


「着替え……は、ノエルの趣味になるけど我慢してくれ」

「うん」


 昨日きちんと鏡を見て絶句した。ノエルという少女の細さと、そのきめ細やかな肌に。絹のような肌に、さらりと流れる白い髪は、それだけで美しいと感嘆してしまう。暗い中でも少しだけ発光しているんじゃないかと見紛う程だ。

 アルビノと呼ばれる先天性の遺伝子疾患の症状に似ているが、果たしてどうだろう。そういう種族なのかもしれないが、少なくとも、見た目だけではフレンとノエルは親子には見えない。フレンが若いからじゃなく、見た目が。

 もし並んで歩いていても仲の良い友達だと思われる事が多かったんじゃないだろうか。少なくとも私は事前情報無しで彼女達が一緒に歩いている所を見れば、そのビジュの良さから、その日は得した気分になると思う。


 フレンの言う、ノエルの趣味はそう奇抜な恰好でも無かった。異世界のファッション事情なんて知らないけれど、多分おとなしめの服に思う。少なくともロリータ系とかドレスじゃない。似合うと思うけどね、フリフリ。もし元の世界にこんな知り合いが居たら買い物が楽しくて仕方ないんじゃないだろうか。

 寧ろ一般的な大衆向けの服は似合わないと思う。


「うん、やっぱり似合ってる」


 フレンは私の着替えを見守って、頷いた。自分の身体じゃない癖にちょっと恥ずかしかったけど、多分私が変な事しないように見張っていたんだと思う。しないよ?


「行こう。また馬に乗るけど……エーテル酔いの方は大丈夫?」

「凄く良くなった。もう気持ち悪くないよ」


 カフェインを摂り過ぎた時のような気持ち悪さがずっと残っていたけれど薬を飲んで一晩寝れば治ってしまった。エーテル酔いはその程度の症状なんだろう。だけど、魔力欠乏はどうなんだろう。あれだけの重症、すぐに治るとは思えないけれど。


 フレンは先に玄関を出て、馬の調子を伺っている。私も彼女に続いて玄関を出ると、それに気付いたフレンが鍵を閉める為に戻る。

 私はその間に馬をじっと見つめる。初めてこんな間近で見た。とても筋肉質な身体をしていて、競走馬の様だ。あれは自然界では生きられないみたいな話を聞いた事があるけど、この馬はどうなのだろう。私が知っている馬より一回りくらい大きい気がするけど……。


「馬が気になるかい?」

「いや、えと、大きいなって思って」

「そうだね。一般的な馬よりは大きいよ。何せこの子は魔物だから」

「魔物? えっと、それは平気なの?」

「魔物にもヒトに忠実なモノは居るよ。動物だって全てがヒトに忠実な訳じゃない。肉食と草食が居て、尚且つ犬の様に従順なモノだって魔物の中には居るさ」

「そうなんだ」

「怖い?」

「知らなかっただけだよ」

「そか」


 魔物と聞けば、大抵は人を襲う物だと思っていた。ライオンや猪、熊だって人を襲うのだから、人を襲わない魔物だって居る。魔物と動物の区別の仕方は解らないけど、少なくともこの馬はとても利口な馬のようだ。

 魔物だから知能が高いとか?


「さ、乗って。すぐに出立だ。あの子が起きていないのなら、僕はキミに魔法を教えなければいけない」

「魔法を?」

「キミを還す方法を探すのならキミも一緒の方が良い。冒険に出る事になるし自分の身は自分で護れるくらいにはなって貰わないとね。帰れるモノも帰れない」

「……………………わかった」


 魔法を私が使うなんて想像出来ない。ゲームのようなモノを想像すれば良いのだろうか。何せ私が見た魔法はテレポートだけだ。火の球出したり一瞬で凍らせたり、そういう事が出来るのだろうか。

 だとしたら少し怖い。少なくとも私は、そういう魔法を使われたら一瞬で死ぬ自信がある。そういうモノを使えるようになるという事は、私も命を奪える程の力を手にするという事だ。


「そう難しくはない。僕は使えないが、キミなら使えるだろう。ノエルの魂が残っているのだから、に感染せずとも魔法を使えるだろう」

「……?」

「ごめん、こっちの話。そういえば、ノエルの杖は持っていなかったね」

「え、あ……っと、杖?」

「うん。ノエルも魔法使いだったから杖を持っていたはずだけど、まぁ、ワイバーンと空の器に同時に襲われては失くしても仕方ないか。だったら新調しなくては」

「魔法使いにとって、杖って何なの?」

「補助……かな。剣士にとっての剣という程でも無い。無くても戦えはするが、威力がかなり落ちる」


 想像通りか。ゲームにおける杖も結局補助を目的としていた節があった。何なら杖さえ使わないキャラも居たけど、この世界ではそういうルールなのだろう。

 ノエルの腕は細すぎる。剣は愚か杖さえも重く感じた。あれを持ち歩くとなると、行先不安だ。

 あの剣の男の人が使っていた光る剣。あれは今思えば魔法の一種だったんだと思う。フレンも剣を使うし、同じような戦術を見られるかもしれない。あんな風に剣を振れる気はしないし、杖を握るのは妥当だ。


 だけど、えー……私が魔法? どんな感覚なんだろう。杖を使うなら、杖を通しての魔法の発現になる……はず。


「えっと、補助ってどんな感じ?」

「そうだなぁ……説明が難しい。例えば、フィアム小さな火球なら、その規模が大きくなる。だからその分、消費する魔力を押さえる事が出来る。結界やテレポートなら、単純に効果時間の延長、又は発動までの短縮かな」

「結構重要そう」


 かなりの効果だ。十分剣士にとっての剣と言える。だけどどうして、フレンは無くても戦えると言った。嘘ではないのだろうけど、事実でも無い気がする。まるで必須ではないみたいな言い方をしたけど、必須でしょ、これ。


「……もしかして杖以外に何かある?」

「あぁ……あるにはある。杖よりは取り回しが良いけど……うーん……、ノエルの身体だと反動に耐えられないかも」

「反動?」

「円筒状の魔道具に宝石を給弾して、高速で発射し、宝石に込められた魔法を発現するモノだ。射出する時に円筒の中でフィアムを爆発させるから、反動が大きいんだ」


 え、何そのロマン銃。私じゃエイムが悪くて当たりそうにない。それにフレンの言う通り、銃の反動はノエルの身体じゃ耐えれない。ガスガンでさえ無理かもしれない。いや、それは言い過ぎか。まぁともかく、ライフルの様なモノなら絶対に耐えられない自信がある。


「そっか……それは確かに無理そう。杖の方がノエルには合ってるね」

「あぁ。最初はノエルもあっちが良いって言ってたんだけど、機能性を考えれば結局杖の方が良いんだ。アレは、サブ武器として持つのが丁度良い。宝石を使うから、お金も掛かるしね」

「なんで宝石なの? 宝石に魔法を籠めるって?」

「宝石は魔力伝導率が高く、触媒としての性能が高い。術式を埋め込やすく、着弾を発現の合図にする事で扱いやすくした。それが魔杖銃だ。魔法そのものを打ち出すモノも最初は作られたらしいが、あまりにも魔力効率が悪く計画は凍結したようだ」


 魔法の仕組みを良く解っていないから、あまり言っている事を理解出来ていないけど、とにかく私が持つべきは杖だという事だけは解った。


「さ、着いたよ。降りて」

「うん」


 いつの間にかギルドカフェに着いていた。今更ながら緊張する。何を言われるのかも分からないけど、表情くらいは解る。何を思っているのかくらい、表情で少しは解ってしまう。だから、あまり顔を見たくないし見せたくない。

 覚悟は、してたと思う。だから、馬車から降りた後、すぐにフレンと共に簡単にギルドカフェの戸を潜れた。


 相変わらず人が多い。昨日見た人達も何人か居る。まだ朝早いというのにご苦労な事だ。早起き出来る人は尊敬出来る。


 フレンは奥の扉を開いて、私を通す。


「……………………」


 中には昨日の女医さん? が居て、ベッドには杖の少女が居る。


「起きたか」

「──────────っ」


 杖の少女と目が合う。それで、嬉しそうな顔をしたのが解った。解ってしまった。だから咄嗟に目を逸らした。

 女医さんは、フレンに目配らせした後、部屋を出て行ってしまった。


『繝弱お繝ォ縺」?√??辟。莠九□縺」縺溘?縺ュ縲∬憶縺九▲縺溘▲?√??繝弱お繝ォ縺セ縺ァ螻?↑縺上↑縺」縺溘i縲∫ァ√?∫ァ√?……っ!』


 弾んだ様な声で、何かを口にしている。私は今から、この子に嫌われる。きっと仲間思いの子だ。私にとっては知らない人でも、ノエルを良く知る人だ。


「…………目覚めたばかりで悪いが、昨日何があったか聞き取りに来た。キミを襲ったワイバーンについて、解る事を教えて欲しい」

『縺遺?ヲ窶ヲ縺」縺ィ縲√≠縺ェ縺溘?縲√ヵ繝ャ繝ウ繝サ繝吶Ν繧シ繧ー繝ュ繝シ繝エ?溘??繝弱お繝ォ縺ョ縲√∴縺ィ螳カ譌上□縺」縺』

「そうだね。家族だ。何が起きたか聞かせてくれる?」

『………………縺ェ繧薙〒繝弱お繝ォ縺ッ蝟九i縺ェ縺??縺九@繧会シ』

「それについてもおいおい答える」

『縺オ繝シ繧薙?√∪縺√?∬ァ」縺」縺溘o縲よ乖譌・縲∫ァ√′隕壹∴縺ヲ縺?k莠九?縲∫ェ∫┯遨コ縺九i繝ッ繧、繝舌?繝ウ縺梧?・隘イ縺励※譚・縺ヲ縲∽ク?逶エ邱壹↓繝弱お繝ォ繧定・イ縺」縺滉コ九h縲らァ√d繝ヲ繝ェ繧「繧ケ縲√け繝ェ繧ェ繧ケ縺ォ繧ら岼繧ゅ¥繧後★縲√◆縺?繝弱お繝ォ繧堤悄縺」蜈医↓迢吶▲縺溘?るュ疲ウ穂スソ縺?□縺九i縲√▲縺ヲ險ウ縺倥c縺ェ縺?→諤昴≧縲よ?・隘イ繧貞女縺代◆繝弱お繝ォ縺御ス輔→縺玖コア縺励◆蜈医〒鬆ュ繧呈遠縺」縺ヲ縲∽ク?迸ャ蜍輔°縺ェ縺上↑縺」縺滓凾縲√Ρ繧、繝舌?繝ウ縺ッ鬟帙?遶九→縺?→縺励※繧ゅ?縲ゅ∪繧九〒遘?#縺ョ莠九↑繧薙※縺ゥ縺?〒繧り憶縺??よ怙蛻昴°繧臥岼縺ォ蜈・縺」縺ヲ縺?↑縺九▲縺溘°縺ョ繧医≧縺ォ』

「ノエルだけを狙っていたという事?」

『遘√↓縺ッ縺昴≧隕九∴縺溘o縲ゅ♀縺九@縺ェ隧ア繧医?縲ゅ≠縺ョ繝ッ繧、繝舌?繝ウ縺御サ翫%縺ョ譎よ悄縺ォ繝偵ヨ繧定・イ縺?コ九b縲√∪繧九〒繝弱お繝ォ縺?縺代?蜻ス繧貞・ェ縺」縺ヲ貅?雜ウ縺励◆縺九?繧医≧縺ェ邏?謖ッ繧翫r隕九○縺溘?繧ゅ?らオ先棡逧?↓繝弱お繝ォ縺ッ荳?迸ャ豌礼オカ縺励◆縺?縺代□縺」縺溘°繧峨?√☆縺舌↓繝ッ繧、繝舌?繝ウ繧よー嶺サ倥>縺ヲ繝弱お繝ォ繧貞眠繧峨♀縺?→蜿」繧帝幕縺?◆縺代l縺ゥ』


 フレンは腕を組んで、物思いに耽る。杖の少女は、私を見つめて、微笑んだ。


『縺昴≧縺?∴縺ー縲∬┻髴?妛繧定オキ縺薙@縺ヲ縺?◆繧医≧縺?縺代←縲∝、ァ荳亥、ォ?』


 私を見つめながら、彼女が何かを発する。声を出す訳にはいかないから、フレンに視線を送る。


「脳震盪は大丈夫。テレポートで軽いエーテル酔いを起こしていたが一晩休めば回復した。だが、えぇっと……」

『險?闡峨r逋コ縺帙↑縺上↑縺」縺溘??』

「そうじゃない、ごめん、考えてきたつもりだったが、いざ本人を前にすると言葉が詰まる。今のノエルの現状を簡単に説明すると、今のノエルは、ノエルじゃない」

『─────────────縺ッ?溘??繝弱お繝ォ縺ッ繝弱お繝ォ縺倥c縺ェ縺?シ溘??縺ゥ縺?>縺?コ九h縲らァ√?逵シ縺ォ縺ッ繝弱お繝ォ縺ォ縺励°窶ヲ窶ヲ窶ヲ窶ヲ縺?∴縲≫?ヲ窶ヲ縺茨シ溘??鬲泌鴨縺ョ豬√l縺悟、峨o縺」縺ヲ窶ヲ窶ヲ縺ェ繧薙〒?』

「今この子は中身が違う。ノエルではなく、異世界から渡来したという魂が乗り移っている状態だ。だからキミの言葉も通じないし、魔法の知識も無い、そして何より、僕やキミ達の事を何も覚えていない」

『菴輔h縺昴l縲ゅ◎繧後′譛ャ蠖薙□縺」縺ヲ險?縺?↑繧峨?……縺ェ繧我ス輔?縺溘a縺ォ莠御ココ縺ッ谿九▲縺溘▲縺ヲ縺?≧縺ョ縲ゆス輔?縺溘a縺ォ繝ッ繧、繝舌?繝ウ縺ィ謌ヲ縺」縺ヲ……ッ!』


 声を荒げて立ち上がろうとする杖の少女は、まだ全快という訳では無かったのだろう、バランスを崩し、またベッドに転がってしまう。


『──────ッ! 濶ッ縺上??。斐r隕九○縺ォ譚・繧峨l縺溘o縺ュ』

「キミの言う二人を僕達は探しに行く。キミの話が本当ならば、ノエルとキミがテレポートした時点でワイバーンはどこかへ飛び去っている可能性もある。もう一つ懸念点があるが、それもキミ達がテレポートを行った地点を調査すれば解る事だ」

『莠御ココ繧呈爾縺励↓?…………遘√b陦後¥縲ら捩縺?※陦後°縺帙※』

「体調は戻っていないんだろう? なら無理だ。キミはまだ戦える状態じゃない」

『縺ァ繧ゅャ?…………っぅ』


 声を再び荒げた彼女が少し苦しそうに呻いた。


「なんだ、キミは死にたいのか?」


 酷く冷たい言い方をするもんだと思った。杖の少女は何を言っているか解らないけれど、フレンが少し怒っている様に見える。


「二人が死ぬ気で繋いだ命を無駄にしたいというのなら止めはしない。キミの気持ちは解るが、今は休め。二人を見つけるか、生きている痕跡を見つけた時、改めてキミを迎えに来る。キミのテレポートは貴重だ。その時は是非協力を願うよ」

『………………隗」縺」縺溘o縲ゅ〒繧ゅ?√ヮ繧ィ繝ォ縺ョ莠九?遘√?隱阪a縺ェ縺??ゅ←縺薙?隱ー縺?縺九?遏・繧峨↑縺?¢繧後←縲∫ァ√?邨カ蟇セ縺ォ險ア縺輔↑縺??よ腐諢上□繧阪≧縺ィ辟。縺九m縺?→縲∫ァ√?縺ゅs縺溘r諱ィ繧?繧』


 強く睨まれた。何を言ったのかは解らない。だけどその言葉の強さで、怒っているかくらいは解る。


「ごめん」


 震える声で返した。謝って済む事じゃないし、別に私は悪くないって自信があるけど、でも口にしておきたかった。


『…………縺サ繧薙→縺ォ縲∫衍繧峨↑縺?ヲ繝医↑縺ョ縺ュ縲り憶縺?o縲∬ェソ譟サ繧偵?√♀鬘倥>縲ゅ?繝ォ繧シ繧ー繝ュ繝シ繝エ縺ェ繧峨?∝ョ牙ソ?□繧上?らァ√b縺吶$縺ォ蝗槫セゥ縺励※蜷域オ√☆繧九?らオカ蟇セ繧』

「あぁ。任された。必ず二人を探した後、ノエルの事も助けると誓うよ」


 ………………ノエルを助ける。そうだ、それが最終目標だ。フレンにとっては私を帰す事よりも優先される。唯一、ノエルを助ける事よりも帰る事を優先しているのは私だけだ。

 仕方ないよ。知らない人を優先して助ける程、どの世界の人も優しくはない。身内が危険に晒されているのなら何よりも優先するはずだ。

 その過程で私を帰せるのなら、やぶさかでも無いと、そういう事だ。


 解ってる。


 誰も味方なんて居ない。そんなのは解ってる。だから、誰に何を言われるまでもなく、私は強くならないといけない。

 この世界の命の価値観はとても低い。あの二人を見て私は理解した。魔物という存在と、それを狩る冒険者、騎士、傭兵の存在、そして奴隷の存在さえもが命の価値を物語っている。


 落ち着け、解っている。悲しくなるな。


 私は何としてでも家に帰るんだ。誰かに嫌われようと、知るモノか。

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