死体は雪に隠せ
雛形 絢尊
第1話
前年にも増して、秩父市では
記録的な大雪に見舞われた。
交通状況も多く乱れ、
停滞するような時間が流れていく。
笹山オートの跡取りであり、
今日も雪かきに専念している。
雪は止んでいた。
積雪量はひざ丈を越している。
こんな日に車を欲しがるものもいないし、
故障したところでこんな辺鄙な場所に
わざわざ出向かない。
手袋に雪が浸透したころ合いに、
店内にあるストーブに手を当てる。
芯があったまるようにその心地よさは
他ならない、寒さをしのぐために必要だ。
車輪付きの椅子に座る父が
こちらに呼びかける。
「なあ、この雪で田畑家のなんつったっけ」
「ああ、茂か」幼馴染だ。
「そう、帰ってきてねえみたいだ」
「茂が?珍しい」
テレビのワイドショーは変わらずに
流れ続ける。
「変な事件に巻き込まれてなきゃいいけどな」
彼は私と同様、実家の家業を継いでいる。
真面目な性格で、
家を空けること何考えられない。
「どのくらい帰っていないんだ?」
父は何かを取りに行くため立ち上がる。
「二日、いや今日で三日か?」
彼の実家は商店を営んでいる。
この雪ではかなりの影響があるだろう。
そんな中で自らいなくなるのは考えられない。
父が言い忘れたように言う。
「裏のあそこは無理して
やんなくてもいいからな」
おそらく廃車置き場の方だ。
そんな会話の後、再び雪かきを始める。
どれほど時間が経っていたのか、
正午を超えたころ、足元の悪い中、
訪問者が訪れた。
警察だ。
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