雪、大丈夫かな?

矢斗刃

雪が降るのか降らないのかどっちなんだい?

今日までが年末の仕事で、志気野忠成は少し心配そうに外の様子を確認する。

深々と雨が降っている。いやこれはミゾレかもしれない。いつ雪に変わるのかわからないままの天気を心配そうに見ている。

なぜかは今日の夜勤が終わったら電車で帰ろうか新幹線で帰ろうか悩んでおり、さらに雪の影響なんかがあったりすると遅延が発生してしまうのではないかと思っている。

「はぁー。」とため息を付きながら仕事をする。

「もう帰った方がいいのでは?」と同僚に心配されたが夜勤代を稼がないと、ただでさえ年末年始の休みが多いのにやっていけないじゃないかと文句を言ってやった。

しつこく言ってくるので今度ご飯でもおごらせようと心に固く決意する。


そして仕事が終わって一旦家に帰るのだが、遠くの山の木々に雪が積もっており、帰れるかどうか不安に思ってしまう。

完全防寒の身支度を整えて駅に向かう。

途中のコンビニに寄って、温かいペットボトルのコーヒー買う。

それを手にもって温めながら歩いている。

駅の在来線の改札口に差し掛かると普段よりも沢山の帰省客の人たちがおり、人酔いしてしまいそうになって、くらくらする。

電光掲示板を見れば未だ遅延は発生していないようだ。

「ほぉー。」と安心しながらもくらくら酔っている自分を何とか気合ヱお入れてどうにかこうにか切符を買い、電車を待つことになる。


少し行列から距離をとって、並んでいるとホームに電車がやってきてプシューとドアが開くとアナウンスが流れてくる。

それを聞きながら乗ろうとするのだが、止まる位置を間違ってしまって慌ててその電車に駆け込んだがやはりもう座るところがなかった。


電車の中で窮屈な思いをしながらも、どうにかこうにか乗り換えの大きな駅にたどり着きそこで降りて実家へのお土産を買う。

フグのおせんべいかな。

「毒は入ってないよな?」とどこかズレたことを言ってしまうのは自分だけだろうか?フグだからね。


それから鈍行に揺られながら景色を楽しむ余裕はない、どうにかスマホを少しいじって未だ実家の方では雪が降っていないようだった。

でも山間部は降っているみたいなことを言っていたので大丈夫かな?

途中ガタンゴトンと身体を大きく揺らしながら吊り輪に手をかけてなかった自分わるのだが他の客にぶつかって平謝りをして今度はちゃんと持っていようと決める。

しかし、また同じように揺れるのでバランスの悪い自分ではその揺れに対応できなかったりもしていた。

「オーマイゴッド!」とかっこよく言ったセリフで周りにいた子供に指を指されて!

「この人中二病の人だぁー。」

「こら!すみません!」と叱って恥ずかしい思いをしていた。

違う車両の方に向かったのは仕方ないだろう。


それから雪の情報を収集しながらもその都市一番の駅に向かってどんどんと人が増えていく。

気付けば僕はつぶされていたりする。

早く着いてくれ!と願いながらも!中々つかないのは鈍行で帰ったからだろうか?こんなことなら新幹線で帰ればよかったかもしれない。


どうにか大きな駅について皆が皆、降りていく僕は最後に降りようとして乗って来ようとした人の群れに押されて瞬く間に押し戻されてしまった。

どうにかこうにか間を縫ってぎりぎりに降りることに成功したが、そのすぐ後にドアが閉まって駅員さんから睨まれたような気がした。まぁ営業スマイルだったかもしれないが・・・そんな気がしただけだ。


「ふぅー。」と冷めてしまったコーヒーを飲みながら一息つく。

並びながらも美味しい立ち食いのうどんを食べて、次の電車を確認しようと思ったらもう1分前に出ていたりしていてガクッとした。


「オーマイゴッド!」

「発音違いますねー!オーマイガー!リピートアフタミー!」とか言われて変な外国人から英語のレクチャーを受けていたりする。

最後には

「ブラザー!」と言って感涙にむせび泣き抱きついて別れを惜しんでいたが、内心ではセクハラで訴えてやろうかと思っていた。

外国人の感性がわからなくなってしまった。


どうにか次の電車には乗れたが、どうやら実家の山間部では雪が降り出したようだ。

「無事帰れるだろうか?」下手をしたら引き返さないといけない。心配になりながらも電車に揺られる。段々と人は減っていき何とか座ることができた。

山向こうを見れば雪が深々と降っているような雲をしている。

「これはヤバいのではないか?」と心配したがどうやら杞憂だったようでどうにか実家に着くことができた。

そして今日の夜は楽しみにしていた実家の友達と飲みに行く約束があった。

飲食店に向かって行くと誰も来ていない。

「あれ?」と思って連絡を取ってみると。

「すまん雪で中止、無理!」と言われてしまう。

そして今ここにも雪が降り始める。

「これはもしかしたら、仕事に戻るとき帰れるのかな?」と思わず心配になるほどの雪が深々と降り出していたのだった。

「ハックション!」とくしゃみをしてとりあえずは忘れて一人で飲もうと決めるのだった。

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