第2章 : 新しい友情
翌週、キャンパスは春の風が吹き抜ける季節になり、リクは再びカフェテリアで友達と昼食を取っていた。最近、彼は以前にも増して孤独を感じていたが、ハナと関わるようになってから、少しだけその孤独が和らいでいることに気づき始めていた。
「なあ、リク、最近ハナとよく一緒にいるよな。」タクヤが冗談めかして言った。
リクは少し驚いて顔を上げた。「え、そんなことないよ。ただ、たまたま展示会の準備を手伝っただけだってば。」
アヤが笑いながら言った。「あー、でもさ、ハナは少し冷たい印象だったけど、リクといるとなんだか楽しそうだよね。」
リクは少し顔を赤くしながら、「あの、そんなことないって。俺はただ、展示会の準備を手伝っただけだから。」と言い訳した。
友達たちはその言葉をあまり真剣に受け取らなかったが、リクは何となくその話題を避けたかった。確かに、最近ハナと話す機会が増えていたが、それ以上に彼女との関係がどうなっていくのかが分からなかったからだ。
その日の午後、リクはまたハナと会うことになった。展示会が近づいており、準備が忙しくなってきていた。リクは自分にできることを手伝うために、また彼女の元に向かうことにした。
キャンパスの一角にあるアートスタジオに到着すると、ハナはすでに絵画を並べているところだった。リクは少し緊張しながらも、「こんにちは!」と元気よく声をかけた。
ハナは振り向いてにっこりと笑った。「あ、滝川くん。来てくれたんだ。今日は少し手伝ってくれる?」
リクはその笑顔を見て、少し安心した。「もちろん、何でも手伝うよ。」
「じゃあ、この絵をこっちに運んでくれる?」ハナはリクに指示を出し、彼が絵を持って移動できるように手伝わせた。
二人は黙々と作業を進めていった。リクは次第にハナとの距離が縮まっていることを感じ、心の中で少し嬉しくなった。普段、リクは冗談ばかり言って、深い会話を避けていた。しかし、ハナと一緒にいると、自然に会話が流れ、リクは少しずつ自分を開放していくことができた。
「滝川くん、どうしてこんなにジョークを言うの?」ハナがふと聞いた。
リクは少し考えてから答えた。「うーん、なんだろうね。笑ってると、周りの人も自分も楽しくなるし、何よりも、寂しさを感じなくて済むからかな。」
ハナはその言葉を静かに聞きながら、「でも、いつも笑っているわけじゃないんじゃない?」と呟いた。
リクはその言葉に少し驚きながらも、「え、どういう意味?」と尋ねた。
「滝川くんがいつも冗談を言っているとき、心の中で何かを隠しているような気がする。笑っているけど、その笑顔の裏に寂しさがあるんじゃないかな。」ハナは少し真剣な表情で言った。
リクはその言葉に少し動揺したが、すぐに笑ってごまかした。「いや、そんなことないよ。俺はただ、みんなが笑ってくれたらそれでいいんだよ。」
ハナは黙ってリクを見つめ、そしてやがて小さく頷いた。「わかった。でも、もし何かあったら、私に話してもいいんだよ。」
その言葉に、リクは心の中で少しだけ温かさを感じた。今まで、誰かに自分の気持ちをこんな風に言ってもらったことはなかったからだ。リクは照れながらも、「ありがとう。」と小さくつぶやいた。
その後も二人は順調に準備を進め、展示会の準備はほぼ完了した。リクは何度もハナと目が合い、少し照れくさい気持ちが込み上げてきた。
「滝川くん、今日はありがとうね。」作業が終わった後、ハナが感謝の言葉をかけてくれた。
「いや、こっちこそ。手伝えてよかったよ。」リクは照れくさい笑顔を見せた。
その後、二人は少しだけキャンパス内を歩くことになった。春の風が心地よく、空は青く晴れ渡っていた。リクは自然にハナと並んで歩きながら、次第にリラックスしていった。
「そういえば、滝川くんって、どうしてアートに興味がないの?」ハナがふと尋ねた。
リクは少し考えてから答えた。「うーん、あんまり絵とかに興味を持ったことがなかったんだよね。でも、今日みたいに、こうして一緒に作業するのは楽しいなって思うよ。」
ハナは微笑みながら、「私も、滝川くんと一緒にいると、すごく楽しい。」と答えた。
その言葉を聞いて、リクは胸が少し高鳴るのを感じた。普段、彼は自分の気持ちを押し込めて生きてきたが、ハナと過ごす時間は、少しずつ自分を解放するような気がしていた。
「ねえ、滝川くん、次の週末、私のアート展示会に来てくれる?」ハナが突然提案した。
リクは少し驚きながらも、嬉しそうに答えた。「もちろん!絶対に行くよ。」
ハナはにっこりと笑い、「楽しみにしてるね。」と言って、そのままリクに手を振った。
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