第14話

「え、ルカ…?薬は…?」


怯えるようにそう尋ねる彼女に、俺は言った。




「飲んでないよ、メラ。俺には街の人を捨てることはできない。」




唖然として、俺の手を握りしめるメラ。






震えるように手に力を込めた彼女は、糸が切れるように涙を零した。






「メラに出会えて良かった。俺、愛がどんなものか教えてもらったよ。」



「ルカっ…」




崩れ落ちそうになりながらしゃくりあげるメラを、強い力で抱き支える。







「…ありがとう、メラ」











……メラ。






俺にとって、君の方が街の人たちより大切だった。







だから最期に、ここに来たんだ。








メラと出会ったこの境界で、最後にどうしても会いたくて。







「けど、死ぬところは見せたくないから、ここでお別れだ。」




メラの柔らかい髪を優しく撫でた後、そっと

彼女の身体を離した。





「そんなっ、」



「幸せになって、メラ。」




そう言って彼女の手に小さな箱を返した後、





叫ぶように俺の名前を呼ぶ声に背を向けて、

全速力でその場を離れた。









もう二度と会えない彼女の温もりを忘れないよう、必死になりながら。

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