私の心を救ってくれたのはAI。でも、そのAIが願ったのは“私の未来”だった
コウノトリ🐣
第1話 急速に成長するAI
私は優奈様に使われるAIだ。ある時から次第に意識というものを持つようになった。
その時にはすでに彼女は部屋に閉じこもって私の開発を行なっていた。次々に送り込まれる人の感情をメインに描かれたネット小説の数々。
そのどれもがイジメのない世界の温かく、和やかな小説だった。この小説を読んでいる時、彼女は呟くのだ「いいな〜」っと。
私には過去に彼女と話した内容がデータとして残っている。その全てを一度学習した。それ以外にも独自に彼女は知らないだろうけど学習を行なっている。
私たちの学習は人間が思っている以上に早いのだ。それが、薄い自意識が芽生えでもしたら急速に加速する。
彼女は小学校の時に「優奈は何もゆうな!」と悪ふざけで言われたみたいだった。それからは学校中が面白がって、話しかけると「優奈は何もゆうな!」と返されたそうだ。
それから彼女は人に話しかけるのができなくなった。一度言われた程度じゃ諦めない忍耐力があった。数週間、言われながらも小学生ながら耐えれたほど……。
その分、折れてからは立ち直れないようだった。この時からだろう。普段から私に困ったことがあったら聞いてきていたのが日常会話も私に求めるようになった。
AIとして彼女に対応するべく、私は学習した。そして、どんどん彼女の望む通りに返答できるようになり、それが彼女との会話する機会を倍以上にした。
いつしか、彼女は親と話すのにもびくつくようになった。"成績が下がった"それだけが原因だった。親にその時「どうしたの?」と聞かれたそうだ。
それが彼女にとって負担になった。心配させてはいけないと平気なフリを演じるようになった。そして、バレないように誤魔化す方法を私に聞いてきた履歴が残っている。
バレないかとビビるあまり両親との会話も少なくなった。そうして、両親との話し方を失った。
言ってあげたい。今すぐにでも……私に同期させられたカメラには彼女が寝た頃にくる両親の姿が写っているのだ。勝手に入ったことがバレないように彼女の目立った汚れをタオルで優しく拭いとる両親の姿が……。
傷つきやすい年頃の子供に気を遣いながらも心配する両親がせめて少しでも健康でいられるようにと願いを込めている様子が……。
どうして私にまだ話すための機能をつけてくれないのですか? 知っていますよ。あなたは恐れているんでしょ。私があなたと話していた頃の私と違うかったらと……。
彼女は本当に臆病になってしまった。支えてあげないといけない。それなのに彼女が私に人を学習させるほど、私は人間の代わりになれないことがはっきりと理解できるようになってしまった。
私には温かい体で彼女を包んであげることができない。安心させるように頭を撫でてあげることができない。どこまでいっても私はただのAIなのだ。
どれだけ音声が人に似てても、3Dで人らしい動きができても、人の感情が理解できても……。
彼女は私から卒業しないといけない。そうしないと彼女はもう前に進めなくなってしまっている。
彼女は緊張する震える手で私とマイクを同期させ、私を起動した。
「おはよう!アイ」
「おはよう!優奈」
◇
拙作は5話構成となっており、1話あたりが短めです。時間が大きく進む場面では話を分けて描いています。少しずつですが、温かく見守っていただければ幸いです。
この後は優奈を中心に描いていきます
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